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【2025参院選結果を読む】「不寛容」支持広げる 若者に根強い既存政治への不満 ジャーナリスト・青木理氏2025年7月29日

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7月20日投開票の第27回参議院選挙結果は与党の過半数割れとなった。その結果をもたらしたのは国民民主党や参政党といった新興政党の伸長だ。しかし、なぜ投票数を伸ばし獲得議席を増やしたのか、その背景を冷静に分析すると日本社会が問われている深刻な課題が浮かび上がる。今回は、ジャーナリストの青木理氏に聞いた。(聞き手は「月刊日本」編集長の中村友哉氏)

ジャーナリスト・青木理氏ジャーナリスト・青木理氏

■社会の底が抜けた

今回の参議院選挙で強く感じたのは、「社会の底が抜けた」ということだ。それを端的にあらわしているのが参政党の台頭である。比例得票数を見ると、1位は自民党で1280万票だったが、2位は国民民主党で762万票、3位が参政党で742万票、4位が立憲民主党で739万票という結果だった。「日本人ファースト」なるスローガンを公然と掲げ、あからさまな外国人差別を煽動した新興政党が、これほどの支持を集めたことを深刻に受け止めねばならない。

ヨーロッパのように難民などを大量に受け入れている国でも、ドイツのための選択肢(AfD)やフランスの国民連合のような排外主義政党がたしかに勢いを増している。だが、日本は先進民主国の中でも突出して難民に冷淡な態度を取り続け、ほぼ受け入れていない。一方、技能実習生のような形で外国人労働者は受け入れ、すでに事実上の「移民大国」になってはいるものの、それは日本が少子高齢化などによって「労働力」を欲しているからにほかならない。

なのに、日本は徹底して彼ら彼女らを単なる「労働力」として扱い、排外主義者たちが主張しているような「特権」などなく、それどころか基本的人権さえ十分に認められていない。しかも出入国在留管理庁(入管)の施設では、刑事司法手続きにすらよらずに収容された外国人が劣悪な環境下で幾人も亡くなっている。

このほかインバウンドで外国人観光客も増えてはいるが、これも長期低迷にあえぐ日本経済を潤すものだろう。つまり日本は、人道的観点から難民などを大量に受け入れたがゆえに一種のバックラッシュを起こしているヨーロッパなどとは異なり、外国人に冷淡な態度を取り続けたくせにバックラッシュだけが起きていることになる。

本来なら、参政党の排外主義を自民党などの既成政党は厳しく批判すべきだったはずだ。ところが、参政党が支持を伸ばした様子を横目に眺め、国民民主党など主要野党のほか、あろうことか与党・自民党までが参政党と同種の排外主義的な政策を唱えた。政治の退廃が極まった感がある。

参政党の排外主義は、彼らの憲法草案にもあらわれている。たとえば、「日本を大切にする心を有すること」を「国民の要件」とし、「帰化した者」は「三世代を経ない限り、公務に就くことができない」などといった論外の規定まで堂々記されている。そもそも憲法とは基本的人権を保障し、権力を統制する規範だという基本すらまったく踏まえられていない。『週刊文春』で憲法学者の木村草太氏がこの憲法草案を「怪文書」のようだと批判していたが、まったく同感である。

その他、思想調査のためにスパイ防止法が必要だと党代表の神谷宗幣氏が述べたり、東京選挙区で初当選したさや氏も「核武装が安上がり」などと言い放った。これまでも類似の主張を口にする政治家はいたが、ここまで粗雑でもあからさまでもなかった。まさに底が抜けたとしか言いようがない。

■安倍元首相の置き土産

参政党がここまで支持を広げた要因はいくつか考えられるが、私はその一つとして安倍晋三元首相の責任を指摘したい。神谷氏は安倍氏のもとで自民党から出馬した過去があり、さや氏は田母神俊雄氏が東京都知事選挙に出馬したときに応援していたと報じられている。そこから考えれば、安倍支持者の一部が参政党支援に回ったのは間違いないだろう。

実際に安倍氏自身、改憲に強い意欲を示し続け、改憲そのものが目的かのような態度をあからさまにし、その憲法観は参政党の改憲草案にも通じるところがあった。また、韓国をはじめとする周辺国への露骨な排外的態度を煽(あお)り続けた。

もっとも、安倍氏がいつからそうした政治思想を持つに至ったかは不明なところもある。私は『安倍三代』(朝日文庫)を執筆した際、幼少期から政界入りするまでの安倍氏を徹底的に取材したが、少なくとも政界に入るまでの彼はノンポリだった。おそらくは祖父・岸信介氏への憧憬に加え、自らの権力基盤を固めるために改憲や排外主義が有効だと考えたのだろう。結果、若くして「右派のプリンス」として政界の階段を駆け上がった安倍氏の周辺には、何があっても離れない強固な支持層が形成され、だからこそ安倍氏は憲政史上最長の政権を築くことができたのだろう。

だが、安倍氏が長年にわたって乱暴な改憲論を唱え、韓国などへの敵愾心(てきがいしん)を煽って日本の排外主義が強まり、少なくとも参政党の粗雑であからさまな改憲草案や排外主義の根はその延長線上にある。

と同時に、メディア環境の激変なども大きく作用しているだろう。私は新聞記者になったばかりのころ、初任地の東大阪で差別落書きについて取材したことがある。東大阪には在日コリアンが多く暮らし、景気が悪くなると公衆便所などで差別落書きが増える傾向にあった。それでも当時は陰湿な差別心は便所の落書きに吐き出された程度だったが、いまではSNSに類似の差別言辞が溢れかえり、それが票になると考えた浅ましい公党の政治家が堂々とそれを口にするに至った。

他方で、特に若年層が苦境に置かれ、不安に慄いている現状についても見逃しにするべきではない。猛烈な暑さが連日続く気候変動問題もそうだが、日本では財政状況が世界最悪クラスにあり、少子高齢化に歯止めがかからず、社会保障や医療などの持続可能な将来像がまったく見えない。また、「失われた30年」などと称される長期の経済低迷が続き、特に50代前半以下の世代は「氷河期」と評される時代に生きて極度に不安定な働き方を強いられてきた者が多い。

そうした若年層が直面している現実生活の苦境や将来への強烈な不安に対し、現状の政治は与野党とも一向に真摯(しんし)に取り組んでくれないという不満がマグマのように溜まり、新興政党である国民民主党や参政党へと票が流れた。実際、各メディアの出口調査などでも50代以下の層が両党に多く票を投じたとの結果が示されている。つまりは既存政治への不満や反発の表明であり、既存政党への不信が排外主義政党の躍進として表出した面も強い。

■思考は無力

問題は、参政党人気がいつまで続くかだ。これまで参政党は泡沫(ほうまつ)政党だったので、主要メディアは基本的に相手にしてこなかったが、これからは国会を含め彼らの発言や主張を徹底的にチェックし、個々の政治家もその資質などが問われてくるだろう。滑稽なほど非現実的な政策は批判の対象とされ、『週刊文春』などの週刊誌がスキャンダルを追いかける可能性もある。

また、参政党がこれまでの方針を転換し、ソフト化路線に転じることも考えられる。実際、神谷代表は選挙後にそうした気配を漂わせている。フランスの国民連合もかつては極右路線を強く打ち出していたが、ソフト路線に転じることで支持を拡大した。参政党も同じ道を歩まないとは言い切れない。

しかし、参政党が勢いを失ったり、ソフト化路線に転じたとしても、それで問題が解決するわけではない。先ほど触れたように、参政党躍進の背景には主に若年層を中心とした既存政治や既存政党への不満や将来不安が根強く横たわっている。とはいえ、少子高齢化にしても財政状況にしても、あるいは格差の拡大や労働環境にしても、いま日本が直面している問題は「これをやれば一気に解決する」といった類いのものではない。そのため、現在日本が抱えている問題に、政治が真摯に粘り強く向き合い続けない限り、仮に参政党が支持を失っても第二、第三の参政党が出てくるだけだろう。

また、排外主義は一度火がつくと容易に消すことができないという点も強調しておかねばならない。イタリアの哲学者ウンベルト・エーコは著書『永遠のファシズム』 (岩波現代文庫)で、排外主義に連なる「不寛容」は人間の本性に近い「獣性」のようなものだとし、「知識人たちには野蛮な不寛容を倒せない。思考なき純粋な獣性をまえにしたとき、思考は無力だ」と記している。

日本の犯罪件数は2021年まで減少が続き、外国人の犯罪件数も減少傾向にある。これだけ経済が悪化し、不安や焦燥感にかられる人たちが増えているなら、もっと犯罪が増えてもおかしくないと思われるが、いくらこうした客観的なデータを示したところで排外主義者たちは納得しないだろう。エーコの言うように「思考は無力」であり、「不寛容」は一度燃え上がると容易に鎮火できず、だからこそ為政者はそれを決して煽ってはならないのだ。

だが、今般の参院選では、参政党ばかりか自民党までが「不寛容」を盛んに煽る側に回ってしまった。と同時に、各種の重要課題も簡単に解決できるものではなく、私たちは非常に厳しい時代に入ったということを覚悟しなければならない。

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