ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
JA帯広かわにしやNEC、ヤンマーアグリ、帯広畜産大学などが参画する帯広かわにしコンソーシアムは、総務省「デジタル基盤活用事業」により、ドローン映像解析とロボットトラクタの複数台同時制御での実証実験を行った。労力や時間、コストを必要としてきた作業工程のスマート化を目指す取り組みで、労働時間の大幅削減や判定精度の向上を確認した一方、通信環境などの課題も浮き彫りとなった。
JA帯広かわにし管内では、この10年余りで農業を取り巻く環境が大きく変化している。2013年時点で418戸あった農家戸数は、2025年には344戸にまで減少した。一方で経営規模は拡大傾向にあり、1戸当たりの平均作付面積は2013年の約30ヘクタールから、2025年には37ヘクタールへと増加。かつては規模拡大によって所得増加が期待できる時代もあったが、現在では若い世代を中心に「これ以上の拡大は望まず、現状維持を重視したい」という声が多い。農家戸数が減少する一方で、経営面積が拡大していくという二つの動きが同時に進む中、今後の地域農業の持続性や営農形態のあり方が大きな課題として浮かび上がっている。
JA帯広かわにしでは、この課題解決に向け、令和6年度に総務省「デジタル基盤活用事業」を実施した。NECやヤンマーアグリ、帯広畜産大学などとともに結成した「帯広かわにしコンソーシアム」が主体となり、ドローンを使用した映像解析やロボットトラクタの複数台同時制御に取り組んだ。
◎ドローン映像解析で労働時間削減と病害判定の均一化
実証では、ドローン映像を活用して長いも羅病株捜索や小麦の登熟度・倒状確認作業の自動化を目指し、ローカル5Gを使用した映像転送、AIによるリアルタイム判定、判定結果の通知を検証した。
長いもでは、生産者がほ場を歩きながら羅病株を判定する従来作業を置き換え、4Kカメラによる撮影映像をAIで判定。これにより判定結果の均一化が期待される。小麦についても従来の水分量調査をドローン撮影により自動化し、登熟度や倒状確認作業の効率化を図った。
長いものほ場は広大なだけではなく、畝の長いところでは500mを超えることも。
結果として、長いもで205時間、小麦で80時間の労働時間を削減。判定精度は長いも羅病株検査で70%(白飛び画像を含めると60%)、小麦登熟度81%、倒状80%と、いずれも当初目標を上回った。ただし、JA帯広かわにしの担当者は「撮影条件により判定率が低下する場合がある」「気象条件による位置情報のズレが発生する場合がある」と指摘し、今後は「ローカル5G以外の通信活用方法を検証していく必要がある」とした。
◎ロボットトラクタ複数台同時制御
複数台ロボットトラクタによる作業の様子。
また、大規模ほ場における作業効率化を目指し、Wi-Fi HaLoWを利用した馬鈴薯の複数台同時無人作業を実証。1,000m以内での制御通信に成功し、春作業では4台、収穫作業では3台の同時運行を実現した。ただし、通信距離が400mを超えると映像遅延や途切れが発生する課題も確認された。「ドローン映像解析と同様、様々な通信規格の活用を検討したい」と担当者は述べた。今回の実証により、スマート農業技術による省力化と効率化の可能性が確認された一方で、環境条件や通信技術に関する課題も示された。
複数台ロボットトラクタによる作業の様子。
冒頭でも触れた通り、今回実証実験を行ったJA帯広かわにし管内でも将来的な担い手不足が懸念されている。JA帯広かわにしの山根参事は「十勝地域ではこれから15年ぐらいで3分の1ぐらいの農家戸数が減るんじゃないかという予測もでている。そうなった時に必然的に1戸あたりの遊休地を作らないためにも、経営面積が平均で50ヘクタール、大きいと100ヘクタール近くまでなることが考えられる。そうなったら家族だけでは作業しきれない。そのためにはこのスマート農業の取り組みというのは絶対欠かせない。」と話す。JA帯広かわにしは社会実装を目指しスピードをあげてスマート農業への取り組みを加速させて行く予定だ。
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