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介護崩壊を食い止めよ【小松泰信・地方の眼力】2025年12月17日

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「診療報酬・介護報酬については、賃上げ・物価高を適切に反映させていきますが、報酬改定の時期を待たず、経営の改善及び従業者の処遇改善につながる補助金を措置して、効果を前倒しします」(10月24日、高市首相所信表明演説より)

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「訪問介護」の倒産、3年連続過去最多

 東京商工リサーチ(TSRデータインサイト・12月3日付)によれば、2025年の「訪問介護事業者」の倒産(負債1,000万円以上)は11月末までに85件(前年81件)。これまで最多だった23年67件、24年81件をすでに超え、3年連続で年間最多を更新。
 原因別では、大手との競争やヘルパー不足による利用者減少、介護報酬のマイナス改定などによる売上不振が71件(構成比83.5%)と大半を占める。事業規模では、従業員10名未満が74件(同87.0%)。負債額別でも1億円未満が76件(同89.4%)で、小・零細規模の事業者の倒産が目立つ。その一方で、負債1億円以上も9件(同10.5%)あることから、中規模事業者にも倒産が広がってきたことを伝えている。
 訪問介護事業者の倒産は、コロナ禍の支援効果が薄れた23年から、他の介護事業と比較しても増加ペースが際立って高いとのこと。原因として、「コロナ禍前から続くヘルパー不足が深刻さを増し、燃料費や介護用品の高止まりも経営にダメージを与えている」ことを示唆している。近年指摘されているICT(情報通信技術・Information and Communication Technologyの略)の導入による業務効率化についても、その重要性は認めつつも、「人手不足に喘ぐ事業者には新たなIT分野への投資は人的にも資金的にも負担が重い」、としている。(小松注;介護現場でのICTの具体例としては、事務作業の軽減、見守りセンサーや介護ロボットによる介護負担の軽減、モバイル端末の導入による情報共有など)
 全国老人保健施設協会など介護13団体が行った調査によると25年度の賃上げ率が2.58%で、全産業平均のほぼ半分であったことから、「人件費の伸び率鈍化が人手不足を生む悪循環に陥っている」とする。

「介護報酬のマイナス改定」のごまかし

 東京商工リサーチの調査は倒産原因の8割以上が、「大手との競争やヘルパー不足による利用者減少、介護報酬のマイナス改定などによる売上不振」であることを明らかにした。その核心部分にあるのが、2024年4月の介護報酬の改定において、他の介護サービスの報酬は引き上げられたにもかかわらず、「訪問介護の基本報酬」だけが2%以上引き下げられたことである。
 この点について詳細に報じているのが『サンデー毎日』(12月21-28日号)。そこでインタビューに答えているのが、「介護崩壊」の現場を取材し続けてきた『しんぶん赤旗』特報チームの責任者内藤真己子氏。
 政府が引き下げ根拠としたのは「2023年度介護事業経営実態調査」。これによれば、全介護サービスの平均収支差率(利益率)が2.4%、訪問介護は7.8%。故に、「訪問介護は儲けているから報酬を下げる」となった。
 しかし詳しく見ると、個人宅を回る「従来型の事業所」は6.7%、「併設型事業所」(サービス付き高齢者向け住宅などの集合住宅内で複数の利用者宅を回る)は9.9%と、大きな開きがあった。つまり、効率の良い条件下で高収益を上げている事業者が平均値を上げていたわけである。
 さらに、入手した詳細データを見ると、収支差率が0%未満の訪問介護事業所が36.7%もあった。さらに、全事業所の収支比率の中央値は4.2%で、政府のいう平均値7.8%とは大きな乖離があることが判明。
 ところが、これらの事実は介護報酬を決める審議会に報告されていなかったそうだ。なんでやねん!

事態は「介護崩壊」そのもの

 さらに、特報チームは、19から23年度の5年間に8648の訪問介護事業所が廃止されたことを突き止める。全国1741自治体のうち5分の1は当該事業が空白、または消滅の危機にある。空白自治体には約14万人の高齢者が暮らしているが、介護サービスを受けることはできない。
 インタビュアーは「保険料を払っているのにケアが受けられないという事態は『介護崩壊』そのものです」と驚きを隠さない。

介護難民を生み出す自己負担拡大

 現在、社会保障審議会の介護保険部会で制度の見直しが進められているが、内藤氏は「利用料の2割負担の対象拡大」を焦点に上げる。現在約9割が1割負担だが、単身で年金収入等280万円以上という2割負担の基準を引き下げる案が出されている。なんと収入だけではなく、そこに預貯金額まで持ち込もうとしている。
 1割負担が2割負担になることは、負担倍増を意味している。それは介護サービスをあきらめる契機となる。とすれば、確実に高齢者のQOL(生活の質・Quality of lifeの略)は低下し、家族の負担も増え、高齢者ともどもQOLは低下する。
 最後に内藤氏は、介護崩壊を食い止めるために、訪問介護の基本報酬を元に戻すこと、介護職員の「低賃金」を解消するために、介護保険の国庫負担割合を現行の25%から35%に引き上げ、その財源による賃上げを提言している。

訪問介護は農村に欠かせないインフラ

 「最期まで住み慣れた地域で住み続けたい人たちを支える訪問介護が苦境に陥っている。ヘルパーの移動距離は介護報酬に含まれず、倒産する事業所が相次ぐ。訪問介護は農村に欠かせないインフラだ。政府は訪問介護の報酬を早急に改善するべきだ」と訴えるのは日本農業新聞(11月25日付)の論説。2024年度の介護報酬改定に関しては、山間部において移動時間が報酬に反映されないことを強調し、「サービス付き高齢者向け住宅との併設で入居者を訪問する事業所と、距離が離れた農山村の自宅を訪問する事業所を一律で考えること自体がおかしい」と迫る。

介護保険部会委員の重い責任

 70代前半の当コラム。「介護」問題は自分事。みんな等しく老いていく。派手な生活、贅沢な生活を望んではいないが、できるだけ穏やかな終幕を迎えたい。その願いをかなえる一助が「介護制度」。社会保障審議会介護保険部会委員名簿を見ると、それなりの見識をお持ちの方ばかりと思われる。もしそこで介護保険制度の改悪がなされたら、当該制度は間違いなく崩壊する。

 「地方の眼力」なめんなよ

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