農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っており、そのことを実現するのにはIPM防除の活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探りたいと考えている。
IPM防除では、みどり戦略対策に限らず化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせ、必要な場面では化学的防除を使用して防除効果の最大化を狙うのが基本だ。その際、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できればみどり戦略対策にもなるので、本稿では現在、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理し、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道がないかを探っている。そのため、登録農薬の有効成分ごとに、その作用機構を分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
35.イソチアゾール
(1)作用機構:[P]宿主植物の抵抗性誘導
(2)作用点: サリチル酸シグナル伝達
(3)グループ名:イソチアゾール/FRACコード[P8]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低
(5)耐性菌の発生状況:実被害のある事例報告無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
このグループには現在のところ1つの化学グループおよび有効成分名、農薬名がある。
[1]イソチアゾリルメチルエーテル/ジクロベンチアゾクス(ブーン)
(7)グループの特性:
ジクロベンチアゾクスが植物体内に取り込まれた後、植物の免疫システムに関わるサリチル酸シグナル伝達経路を活性化し、植物全体に防御反応(全身獲得抵抗性:SAR)を誘導する。その結果、作物自身が病原菌の侵入や増殖を抑制することで病害の発生を防ぐ。
病源菌が糸状菌(子のう菌類)であるイネいもち病や病原菌が細菌であるイネもみ枯細菌病、内頴褐変病、白葉枯病、苗立枯細菌病に対して効果を発揮する。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属するジクロベンチアゾクスは、基準年に登録認可されたため削減目標自体は無いが、ADI値によるリスク換算係数は0.316と中リスクの部類であることと、販売分野には競合剤が既に多く普及していることからリスク換算量総量に与える影響度は大きくないと考えられる。加えて、期待されている新規イネいもち病防除剤である上、薬剤耐性菌発生のリスクがほとんど無い抵抗性誘導剤であることから、削減を考えることなく普及を継続する方が得策と考えられる。
(9)ジクロベンチアゾクスの農薬登録がある主要病原菌一覧
ジクロベンチアゾクスの農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。実際の使用前には必ず農薬ラベルにて登録内容(適用作物・使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。
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