新品種名を商品名にするパックご飯メーカー【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月29日
先週、大手食品メーカーテーブルマーク(株)が羽田の食品開発センターで今年秋の新商品発表会を開催した。この中でパックご飯販売30周年を記念して、パックご飯に適した新品種を使った新商品「デーブルスター」を開発、市場に投入すると発表した。この新品種は農研機構が育種開発したもので、伊藤忠食糧(株)とテーブルマークが共同研究して商品化したもので、最大の特徴はコメの粒が大粒で食味が良いこと。この新品種は品種登録出願中で品種名が決まったわけではないが、品種登録される前から自社の専用品種として使用することを前提に商品化を進めている。新品種を自社の商品の専用品種として使用することを計画しているのはテーブルマーク以外のパックご飯メーカーの中にもいる。

テーブルマークが新たに市場投入する専用品種を使った新商品を紹介する前に、令和のコメ騒動ではパックご飯業界にも大きな影響があったので、まず、そのことについて触れたい。
パックご飯の生産量は、令和元年に21万0271tと20万tを超え、その後も毎年伸び続け令和6年には前年より5%ほど増え、26万2,804tに達している。ちょうど1年前の8月に南海トラフ地震警戒情報が出されたこともあって、この月にパックご飯の仮需が発生、前年同月に比べ一気に5割ほど販売量が増えた。あまりにも急激に販売量が増えたことにより、必要とする原料米が足りなくなった。テーブルマークも同様で、コシヒカリの10食パックの製造を中止、産地銘柄を問わない10食パックに切り替えた。同時に原料米高を吸収するために2度にわたり商品の値上げを実施、値上げ幅の大きいものは一気に36%も値上げした。同社が公表した販売データによると令和6年6月の販売量を100とすると8月には229%にもなっており、いかに南海トラフ地震警戒情報の影響が大きかったかわかる。商品の値上げは第二回目が今週8月1日出荷分からで、売れ筋の3食パックの希望小売価格は990円に値上げされることになっており、これではいかにも高い。ネット上には「パックご飯のコスパが悪い」と言う情報が流れており、同社でも販売量の落ち込みは避けられないと見ている。
ただ、こうした外部要因から新商品を投入するわけではなく、新品種を使った商品開発は8年前から着手しており、7年産では秋田県横手市で100tの生産が見込まれるまでになっている。新商品開発の責任者によると、最大のコンセプトは「もっと美味しいパックご飯を作りたかった」とのこと。同社の調査によると、消費者がパックご飯を購入する際に重視する要因の上位3点は、1位、味・おいしさ69・1%、2位、1食当たりの量21.9%、3位、パックご飯特有の臭いがしないこと16・8%になっており、ダントツに美味しさのウエイトが高い。
新商品に使用される「テーブルスター」の特徴は「粒が大きく華やかな見栄え」、「口に入れた時の存在感」、「噛み締めることでうま味をより感じやすくなる」ことをあげている。粒の大きさはコシヒカリより10%大きく、千粒重は24.8gある。この大きさが「しっかり噛み締められてコメの味わいを感じられる」要因だと言う。
まだ品種登録されていないコメを原料米にした新商品を開発しようとしているところはテーブルマークだけではない。別のパックご飯メーカーでは、多収品種に焦点を絞り、これを原料米にした新商品を投入しようとしている。その会社によるとこの品種の収量は10a当たり15俵穫れるとしており、既存の品種に比べ圧倒的に収量性が高い。収量性とともに重視しているのが作りやすさで、特に直播に適しているか否かを重視している。すでに大規模稲作生産者に種子を配布、契約栽培に乗り出している。さらには別のパックご飯メーカーでは、なんと契約栽培に応じてくれれば種子を無料で提供するというところまで現れた。このメーカーは来年、福島県に新しいパックご飯工場を建設する計画で、工場が稼働する前から原料米確保に乗り出しており、そのために契約栽培に応じる生産者に7年産米から種子を無料で提供した。
使用する原料米の品種を特定して商品がヒットした例として、冷凍おにぎりでゆめぴりかを使用した商品が知られているが、パックご飯は精米商品の売れ筋になっている産地銘柄を踏襲した商品が多い。コメ卸等から委託を受けたパックご飯の中には、地元のマイナーな品種で製造したものもあり、これを精米商品の売り棚で販売しているが、全国的な売れ筋にまではなっていない。本当にパックご飯に適した新品種が出来ればメジャー商品になれるかも知れない。テーブルマークの担当責任者はこの新商品でも「満足していない」と言っていた。
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