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米5kg3000円台がズラリ 特売スーパーが語る「米価引き下げのカギ」は2025年12月19日

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米価を引き下げる動きが、取引の上流から下流へ広がろうとしている。大手スーパーに先駆けて「米特売」を仕掛ける埼玉県のスーパー「マルサン」の担当者が取材に応じ、「特売の秘密」と今後の見通しを語った。

特売の銘柄米(いずれも新米)売り場に立つスーパー・マルサンの小澤清さん(埼玉県久喜市)特売の銘柄米(いずれも新米)売り場に立つスーパー・マルサンの小澤清さん(埼玉県久喜市)

入口に積まれた「特売の銘柄米」

取材に応じたのはスーパー「マルサン」久喜店(埼玉県久喜市)の小澤清さんだ。

小澤さんは店内奥の米コーナーで、宮城県産「ひとめぼれ」を台車から下ろし売り場に積み上げていた。特売品で5kg3990円(税込4310円)だった。銘柄米の平均価格は5kg4469円(税込、12月1~7日、POSデータにもとづき農水省まとめ)なので、平均より160円ほど安い。

同店では、茨城県産「にじのきらめき」が3790円、同「コシヒカリ」3890円、栃木県産「とちぎの星」3890円、新潟県産「こしいぶき」3890円など、本体価格で3000円台の銘柄米の新米が、クリスマスの飾りで彩られた入口を入ってすぐの特設スペースにズラリと積まれている。

10月末から11月始めに

「3000円台で並ぶようになったのは10月末から11月始めですね」と小澤さんは話し始めた。
「もともと予定になかった政府備蓄米が売り渡されたので、順次売っていくはずだった2024年産米が余ってしまったのです。25年産の新米が出てくると24年産は『古米』になってしまうので、価格を下げて売る動きが出て安く仕入れました」。売り場に多くの米が並んでいると、「売れているなとわかり、お客さんも安心して買う」のだという。

当初は、猛暑や渇水が収量や品質に影響するとの見方もあった。だが10月に入ると新米の収量もほぼ見え「24年産の在庫を抱える卸さんは少しでも売らないと、ということで安くしてきている」と小澤さん。

小ロットの出物、まめに仕入れ

昭和の時代から米取引に携わってきたマルサンの小澤清さんは「取引先もわれわれもお客様も喜ぶ売り方」をめざす昭和の時代から米取引に携わってきたマルサンの小澤清さんは「取引先もわれわれもお客様も喜ぶ売り方」をめざす

マルサンは1983年設立で埼玉県内に5店を展開する中小スーパーで従業員は社員・パートを併せ439人。企業理念に「常に挑むは『薄利多売』」と掲げるように、のり弁をはじめ、ハンバーグ弁当、アジフライ弁当も250円など、格安商品が所せましと並び、平日も開店から賑わっていた。

3000円台で売っても利益を出せる価格で米を仕入れることが、マルサンはどうしてできるのか。同社の仕入れ先は、複数の中小卸と茨城県の農業法人だ。
「大手スーパーなどはロットが大きい仕入れをしていますが、そうなると、どうしても『ロットは少ないけど処分したい』という余った米が出てきます。精米したのに20~30袋残ったから引き取って、と連絡が来ることもあります。そうした小ロットの米を大手をかいくぐって仕入れているのです」と小澤さんは説明した。

融資返済迫り損切拡大か

酒でも「売れ残りを処分したい」と連絡がくることがあるが、そうした場合の安売りは「ブランド力を落としたくないからチラシはNG」という。米の集荷業者が受ける銀行の融資は「たぶん半年(以下の)短期融資」なので、「返済が迫ると現物を現金化しないとどうしようもなくなり、安くても売る動きが広がる」と見通す。「たとえば正月用の豆では、10月に借りて翌年3月に返すそうです」。その場合には、3月の返済までに返済資金を用意しておく必要がある。

実際、25年産米を25万俵集めた青森県の商系集荷業者も、20万俵は集荷価格より高く売れて3億円稼いだが、5万俵は集荷価格よりかなり安く売らざるを得ず3億円の損失が出て、トータルではほぼ利益がないと明かした。年末や3月末、資金繰りの必要から、赤字が出ても在庫を処分する損切が広がるとみられる。

「これまで米を扱ってこなかった業者も参入し、流通が複雑になった」と小澤さんは感じている。マルサンはそうした流通事情もうまく使って、安く仕入れ「薄利多売」しているように見える。

昭和から続く猫の目農政、米農家の苦境に思い

政府による備蓄米放出で2024年産米が余り、さらに25年産米は前年より67万t増で需給が緩み暴落が懸念される現状を招いた。「食を守る米屋が困るような放出の仕方」には問題があったと小澤さんは考える。昭和の時代から米取引に携わり、農政の変遷も見てきた小澤さんの目に昨今の動きは危うく映る。石破政権が打ち出した「米増産」方針は、高市政権に代わると3ヵ月足らずで「需要に応じた生産」に戻った。
「あれじゃ不安で(米を)作れないよね。農政はもっと長期で考えないと」

マルサンの特売は、小ロットの玉(米)を機動的に買い入れた賜物で、大スーパーがすぐに追随できるわけではない。だが、年末から年度末にかけて「損切」の動きが加速すれば、スーパー店頭価格も下落はさらに広がる可能性がある。
「最終的には大手卸と大手スーパー、特に後者の判断でしょう。どこかの大手が粗利を削ってでも安売りに舵を切れば、他のスーパーも追随すると思います」

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