25年の米「民間輸入」95倍 米価高騰で9.6万t浸食 「主食の自給」揺らぐ不安 2026年2月2日
2025年に民間輸入された米は約9.79万tにのぼり、前年の95倍だった。ミニマムアクセス(MA)制度で国家輸入する米のうち主食用に回る上限10万tと合わせると国内需要の約2.8%にのぼる。輸入米は、農水省が食糧部会で示す主食用米の需給見通しの「供給」に含まれていないが、これほどの量となると、需給を緩め国産米のシェアを下げる恐れがある。
2025年の輸入量は過去最多の9万6834t
2025年の米の民間輸入数量は、財務省が1月29日に公表した貿易統計でわかった。年9万6834tもの民間輸入は2000年以降で最多で、近年でも突出する(グラフ1参照)。

グラフ1 米の年間民間輸入量(t)の推移
出所:財務省貿易統計から編集部作成
日本の輸入先を国別にみると、2025年は米国が急伸し8割近くをしめた。次いでジャポニカ米を生産する台湾、もともとは長粒種が主だが近年、ジャポニカ米の生産、輸出にも力を入れるベトナム、さらにタイ、インドの順となった(表1参照)。

国産米高騰で「関税341円載せても割安」
貿易統計から輸入額を輸入数量で割って輸入米の1kg当たりの価格を試算すると、米国産米は精米1kg当たり125円となる(米国産米はほぼ全量、精米で輸入されている)。民間輸入に課される関税341円を載せると精米1kg当たり466円だ。
466円に対応する生産者手取りを試算するため、466円から、農水省が2023年の取引で調べた卸と集荷のコストを引くと約401円となる(ただし日本に着いた時点で精米されているため、卸コストから精米工程分を差し引いて控除した)。精米1kg当たり401円は、玄米60kg(=精米54kg)当たりに換算すると2万1654円となる。生産者手取りがこの額を顕著に超えると、民間輸入された米国産米が高い価格競争力を持つことになる。
民間輸入の急増について、大量の輸入を手がけた商社の兼松は「実需のニーズに応えて輸入を行った。仕向け先は外食、中食、小売、卸と幅広かった」と振り返る。米卸大手の神明は「国産米価格の高騰が最も大きな要因と考えている。2025年産米の価格が前年産をさらに上回ったことで、外食向けを中心に、低価格帯の選択肢として外米のニーズが高まった」と説明する。
米国産がベトナム産より安い不可解
米国からの輸入米が精米1kg125円で、台湾の183円はもとよりベトナムの129円よりも安いのは、生産コストから考えると不可解だ。新潟大学の伊藤亮司助教によると、米国産米の生産価格は玄米1kg87.2円、精米1kg96.9円とされる(JAcom2025年4月30日付)。米国の米産業は大規模なため日本より集荷、国内流通コストが低いとしても、米国で精米し船に積んで日本に届けるコストも含め1kg当たり28円で済むとも考え難い(農水省資料によれば、日本の集荷コストは精米1kg当たり48.9円、卸売コストは31.6円)。米国からの日本向け輸入米の低価格は、何らかの補助金的なものかコスト割れ販売を示唆しているようにみえる。
神明「低価格帯補完はいったん様子見」、兼松「今年は減る」
2025年の民間輸入を月別にみると、1月から増加の一途をたどり7月にピークに達したが、8月以降は急減した(グラフ2参照)。それでも24年までと比べると9~12月も高水準ではあるが、備蓄米放出や25年産の豊作で需給が緩んだのを背景に、足元では輸入増にブレーキがかかりつつある。

グラフ2 米の民間輸入の月別推移(2025年)
出所:財務省貿易統計から編集部作成
8月以降の輸入減について神明は、「国内の新米収穫が本格化し市場の供給量が増加し過度な需給懸念が解消されたこと、市場価格が下がり始めたことで低価格帯を補完する目的での外米ニーズはいったん様子見となった」と説明する。2026年の民間輸入の見通しについて兼松は「米の相場次第にはなるが、今年の輸入量は昨年より減少する見込みだ」としている。
宇都宮大学農学部・松平尚也助教の話
「昨年は米不足を背景に、スーパーでは輸入米や国産米とのブレンドが売られ、中食、外食でも使われた。その後需給が大きく緩んで、昨年と状況は変わったが、中・外食の商慣行に輸入米がマッチしてしまった面がある。需給を安定させる水田政策が待たれるが総選挙に入ってしまい、対策の遅れが心配だ」
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