「買取販売」押し付け、卸叩き 鈴木農相が「小泉劇場」の後始末2025年11月27日
米の買取販売の押し付け、米卸叩き......。「小泉劇場」の負の遺産の後始末に鈴木憲和農相が追われている。国会審議では、米卸にお詫びする一幕もあった。鈴木農相は、「悪者」を仕立て世論を煽る手法を否定し伝統的農政への回帰を鮮明にするが、前大臣時代からのツケはまだ残っている。
小泉前大臣の「後始末」に追われる鈴木憲和農相(11月25日、衆議院予算委員会)
「営業利益は500%」と卸を非難
「私は後始末という観点から聞きたい。米価高騰に対し小泉(進次郎)前大臣が米の卸業者に対して『米の流通は複雑怪奇、ブラックボックス』と当委員会で言った。その後『卸大手の営業利益は前年比500%だ。よくお考えいただきたい』と発言した。私の地元の卸業者も怒っている。卸の方々を悪者視したことは(農水省は)謝っていない」
11月25日、衆議院農水委員会。立憲民主党の近藤和也議員が質問に立ち、小泉前農相の「米卸叩き」を取り上げた。
当時、米不足から価格が上がっていた。だが、農水省は需給状況を見誤って「米は足りている。価格が上がるのは流通が目詰まりしているからだ」との認識に固執し、小泉前農相は「卸叩き」にまで踏み込んだ。だが米卸は薄利多売で知られ、営業利益が前年の5倍になったのは米価高騰に伴う一時的事象。5倍になった後も、売上高営業利益率は5%にとどまっていた。
前農相に代わって卸に謝罪
米卸への謝罪を引き出した近藤和也衆議院議員(立憲民主党)
近藤議員の質問に鈴木農相は「小泉前大臣答弁に私からコメントすることは控えたい。私個人のスタンスとしては、個々の事業者のみなさんのビジネスが合法的に適正に行われている範囲で、私から何かコメントすることはまずない」と答え、特定企業叩きをしない見識を示した。
近藤議員が「前大臣は特定の業界、事業者をこの委員会の場で名指しに近い形で否定された。それを、前任者のことはコメントを控えるというのは無責任だ」と問いを重ねると、鈴木農相は「(前大臣答弁で)大変不愉快な思いをされたということであれば、私の方からもお詫びを申し上げたい」と米卸に謝罪した。前大臣の国会答弁について大臣が謝罪するのは異例だ。
「米買取」押し付け問題も俎上
JAへの米買取販売押し付けを追及する小山展弘衆議院議員(立憲民主党)
小泉前農相がJAに「米の買取販売」を押し付けようとしたことを追及したのは小山展弘議員(立憲)だ。米には、農家から米を預かり1年かかって売っていく委託販売(概算金+清算)と、出来秋に買い取る買取販売(買取時に一括払い)があり、それぞれメリット、デメリットがある。だが、小泉前農相は「農協がリスクを取るべき」とし買取販売を迫っていた。
小山議員は「農協も全農も民間出資100%で、政府から経営判断に介入されるいわれはない。前大臣発言は『営業の自由』を保障する憲法や協同組合振興の国会決議に反する恐れがある」とし、鈴木農相の見解を質した。
鈴木農相は「前大臣発言は、農協が農業者のニーズをよく汲み取って買取という選択肢を提供し、農業者から選ばれる農協になることが重要という趣旨だった」と庇った上で、「時期ごとに上下する価格や経費をプールする共同計算を行い収益を農業者間で公平に分配している事例」という言い方で、多くのJA、全農が採用してきた委託販売(概算金)の意義に言及した。
「今度は大臣だ」
小山議員は、JA青年部の代表らが参議院選挙直前に訪問した際、小泉大臣(当時)が「今度は自民党農水部会長じゃない。大臣だ。(自身がめざす施策を)必ずやってやる」と述べたとし、それを聞いた側は「強要と受け取ったと思う」と指摘。「このような姿勢はとらず、規制改革会議とは一線も二線も画して、現場の声を聴く大臣であってほしい」と求めた。関係者によると6月17日、JA全青協の役員らが農水省大臣室で小泉農相(当時)と意見交換。頭撮りをしたマスコミが退席した後、小山議員が紹介した趣旨のやりとりがあったとされる。
米が高いと介入→暴落は「市場任せ」?
小泉劇場のクライマックスは「需給をじゃぶじゃぶにする」と公言して行われた、政府備蓄米の随意契約での28万t売り渡しだった。放出備蓄米に急増した輸入米、2025年産米の増産が重なって、米の需給は実際、大きく緩んだ。量販店の米売り場では価格はなお高止まりしているが、取引の上流では米価下落が始まった。
米が高い時は備蓄米放出で政府が露骨に介入し、下がる局面では「価格は市場で」と手の平を返すのは、産地からすると納得が難しい。このままでは、政府が暴落の引き金を引く形になるからだ。「後始末」の仕上げとして、米価暴落を止め、再生産可能な水準での価格安定に導く課題が「はえぬき大臣」の前にある。
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