【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】農業の犠牲の上に利益を得た産業が社員食を国産米からカリフォルニア米に切り替え?!2025年11月27日
日本農業弱体化の大きな要因はアメリカの占領政策だ。戦後、アメリカは余剰農産物の最終処分場に日本を位置付けた。麦や大豆やトウモロコシなどの関税が実質的に撤廃されて、一気にアメリカの農産物が押し寄せ、国内生産は大打撃を受けた。
そして「回し者」の学者が「コメを食うとバカになる」という本を書き、日本人にアメリカ産小麦を食べさせるために「食生活改善」を名目に洗脳政策が行われた。これによって、日本のコメ消費が減少していく流れがつくられ、減反政策につながり、今回のコメ騒動につながった。
日本側もアメリカの要求をうまく活用した。経産省中心に、自動車産業などの利益のために食料・農業を差し出す「生贄」政策で農産物の関税を撤廃・削減し続けた。「食料は金を出せばいつでも安く買えるのだ。それが食料安全保障だ」という流れができ、そのおかげで日本経済が発展できた側面がある。農業を犠牲にして自動車がどれだけ利益を得たかは、表の筆者らの試算が如実に物語る。

畳みかける自由化は、まさに「自動車1人勝ちで農業1人負け」で、自動車のために食と農が生贄にされてきた歴史がここに示されている。大きな自由貿易協定が決まるたびに自動車は3兆円の利益を増やし、一方で農業が大きな打撃を被る。これが繰り返されてきたのだ。
(しかも、同じモデルによる政府試算では、関税を撤廃されても農業生産性が向上するから農業生産量は変わらないという驚きの仮定計算をして農業に影響はないと言い張ってきたのだから信じがたい。)
この「農業を犠牲にして自動車を守る」流れが、今回のトランプ関税交渉で最終局面を迎えた。日本側は、これまで農産物を差し出し続け、生贄リストに残っている目玉はついにコメと乳製品しかなくなっていた。そこに、自動車の25%関税で脅され、コメさえももっと輸入しろと迫られ、ついに、日本人の命の要で譲れないはずの最後のカードのコメさえ差し出すから許して下さいという「盗人に追い銭」交渉をやってしまった。
これでは交渉にもならない。日本はすべてを失った。コメは、日本一の新潟県のコメ生産量をも上回る60万トンのコメをアメリカ1国から毎年輸入することを約束させられた。自動車も守れなかった(25%関税を15%にしてもらったのではなく、現行の2.5%を0%にする約束も反故にされて15%に引き上げられたのだ)。
さらに、味を占めたトランプ大統領は「脅せば日本からはもっと取れるぞ」とばかりに自動車関税の再引き上げをちらつかせている。こうした中で、自動車産業最大手の企業が、何日か前に、「社員食堂のコメを国産米からカリフォルニア米に切り替える」と発表したというのだ。
農業の犠牲の上に巨額の利益を得てきた企業が、日本農業のために貢献するのではなく、さらにアメリカにおもねるために、日本農業を追い込むようなことを始めるのは、いかにも残念でならない。
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