ギンナン・銀杏・公孫樹【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第366回2025年11月27日

私にとって、栗、クルミと並んでなじみの深い木の実はギンナンである。
それでギンナンについて書こうと思うのだが、そのさいギンナンを漢字「銀杏」で書いた方がいいのか、カタカナがいいのか、迷ってしまった。
いろいろ考えているうち、ふとこんなことが頭に浮かんだ。
「銀杏は銀杏の実である」、この「銀杏」に振り仮名をつけろと言われたら、「ギンナンはイチョウの実である」と答えるのが正しいことは言うまでもない。しかしその逆に「イチョウはギンナンの実である」と答えたら、漢字の読みはそれぞれ正しくとも、文意として見れば誤りということになる。
それでは「ギンナンはギンナンの木に生(な)る」、と答えたらどうか。これも完全な誤りではないが、「イチョウはイチョウの木に生(な)る」、これは間違いである。
これらの答えに対して教師はどう点数をつけるのだろうか。こんな問題を出す教師などいないだろうからこんなことで悩むことはないだろうに、何でこんなつまらないことを考えてしまったのか、我ながらおかしくなってしまった。
いずれにせよ漢字の読み方で混乱させたりしないようにしなければならない。となると木としての「銀杏」を「公孫樹」と書くことも考えられる(公孫樹はギンナンと読まないからだ)が、もっとも簡単にギンナン、イチョウともにカタカナで書くことにする方が間違いがないかもしれない。そこでここではそう言わせてもらうことにする。
さて、私の生家にはイチョウの樹はなかった。近所にも庭や屋敷裏の畑に植えている家はなく、寺や神社の境内にあるだけだった。だから、食事係の祖母が買ったあるいはもらったギンナンを食べたのだろうと思うのだが、私たち子どもにとってはうれしいおやつだった。
冬の寒い夜、祖母のくれたギンナンの固い殻を口に入れて奥歯ではさむ。そして殻の表面をぐるっと一回りしている円形(ハート形)の突起を思いっきり奥歯で噛み、そこに割れ目を入れる。それを口から取り出して火箸でつまみ、燃えている木の下で熱くなっている囲炉裏の灰の中に、あるいは火鉢の炭火の下かまわりの灰の中に、突っ込む(前に述べた栗と同様に)。
このように熱を加える前に殻に割れ目を入れるのは、熱でギンナンが破裂して殻や果肉の破片が飛び散り、さらには火花が飛び散ってけがをしたり、火事になったりする危険を避けるためである。
問題は、灰の中から取り出す時期だ。焼きすぎたりすると真っ黒になって食べられなくなる。逆に早く取り出し過ぎると半焼けで中の果肉は白いまま、苦くてまずくて食べられない。その加減が難しい。何しろ焼けているかどうか灰の中で見えないからだ。その加減を見ながら焼くのが大変だが、うまく焼けたときがうれしい。
もっと簡単なやり方がある。フライパンで煎ると、大量に一斉にやれるし、焼き加減もわかる。だから量が多いときは母か祖母がそれでやってくれるが、私たちにとっては灰に入れて焼くのが楽しみだった。
こうやって熱を加えると固い殻が簡単に外せる。それで殻の中から実(=銀茶色の薄皮に包まれた果肉)を取り出す。その果肉を覆う薄い皮、それも熱を加えたためにはがれやすくなっている。その薄皮をむくと、鮮やかなつやつやとした緑色の果肉が現れる。焼く前は白いのだが、熱で変化するのである。その熱々の果肉、つまりギンナンを口に入れる。
うまい。クリやクルミとは違って柔らかく、プリプリした歯ごたえがある。味は他の果実とはまったく質が異なり、うまく言葉で表現できないのが残念だが、独特のほろ苦さのなかにうま味があり、また油分もあるようで、栄養分たっぷりの感じがする。
これを食べると風邪をひかないと言われて冬によく食べさせられたものだったが、私は大好きだった。
このギンナンの話、次回もさせていただこう。
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