WTO原則を首脳レベルで発信すべき 日米交渉の構造に警鐘 元外務次官の藪中三十二氏2025年7月28日
JA全中は7月24日、「2025オンラインJAアカデミー」を開催し、元外務次官で大阪大学特任教授の藪中三十二氏が「激動する世界とその見方、学び方」をテーマに講演した。この中で藪中氏は、日米関税交渉に触れ、日本から「WTO(世界貿易機関)の原理原則が大事だと明確なメッセージを出す」必要性を訴えるとともに、制度的な対抗措置を含めた通商戦略の見直しを提起した。
オンラインJAアカデミーで講演する藪中氏
藪中氏は、日米関税交渉での米を含む合意について、「関税率については15%でも、よくわからないことがいっぱい合意されたらしい」と述べ、交渉内容の不透明さに懸念を示した。とりわけ米国産米のミニマムアクセス拡大については、「農業そのものへの悪影響はないというのが日本政府の理解、主張」と紹介しながらも、「後はよくわからない」と精査の必要性を強調した。
また、日本企業による総額5500億ドル(約80兆円)に上る対米投資についても触れ、「全部政府保証をつけ、利潤は9割をアメリカが持っていく」という、日米間の経済取引構造の不均衡も指摘した。
藪中氏は自身が「『食料安全保障』という言葉を国際的に書いた責任者の1人」と語り、1987年のOECD閣僚理事会で食料安全保障を国際議題に押し上げた経緯を紹介。農業は単なる経済活動にとどまらず、「地域と密接に関わる社会の基盤」であり、「農業保護論者であるというのが私の誇り」と述べ、日本が一貫して重視してきた立場を強調した。
戦後のアメリカについては、自由貿易体制の構築や国際協調の推進を評価しながらも、近年の通商政策の変質に懸念を示し、「完全にWTOを無視している」と批判。制度や国際法よりも一国の利害を優先する姿勢に対して、「多角的自由貿易体制の形骸化」を憂慮した。
そのうえで、「日本はWTOの原理原則を一番真面目に守ってきた国の一つ」としたうえで、今後は一方的な関税措置に対し「法的な整備を含めた対抗措置の議論が必要」と主張。「首相もWTOの場で、原理原則が大事だと明確なメッセージを出すべきではないか」と述べ、日本によるイニシアティブに期待を示した。
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