子実トウモロコシ収穫本格化 3年4作へチャレンジ JA古川・JA全農2024年9月10日
JA全農は9月10日、宮城県のJA古川で100haの大規模実証を行っている子実トウモロコシの収穫実演会を開催した。地元の生産者やJAグループ、行政関係者など約130人が集まった。
子実トウモロコシの実証試験は3年目を迎え、今年は29経営体が参加し約106haで栽培している。100ha規模の実証は府県では初めて。
初年度は播種不足や、風水害、鳥獣害などで単収は303kgにとどまったが、2年目の昨年は、排水対策の徹底、十分な播種と苗立ちの確保、殺虫剤の適用拡大などで前年比74%増の平均512kg、最高で900kg超える収量を確保した。
殺虫剤のドローン散布によって配合飼料に必要とされるフモニシン濃度の管理基準を下回る品質を達成し、610tのトウモロコシが管内の肉牛農家の配合飼料としてすでに供給されている。
今年の収穫は9月9日からスタート。実証試験に関わってきた農研機構の担当者は実演会で「10a当たり680kgから940kgと昨年より収量が多い見込み。適期刈取りを」と集まった生産者に説明した。
大豆・麦生産組織連絡協議会の鈴木正人会長は今年は雑草(帰化アサガオ)対策が課題だったと話し、除草剤散布など「小まめに作業をしながら栽培をしていくことが大事だと改めて思った」と話し、前日の刈取りから「1t近くの収量もあるのでは」と手応えを話した。
収穫作業と収穫されたトウモロコシ
この実証試験では実演会や研修会、圃場巡回、さらに成績検討会などに生産者が参加することによって栽培技術の標準化を図ってきた。
同時に新しい水田輪作体系づくりをめざしている。今回実演会を行った圃場では秋には小麦を播種する。小麦の収量と品質向上に役立つとされるのが、収穫後に圃場で裁断したトウモロコシの残渣をリバーシブル・プラウで土にすき込むこと。天地返しを行う機械のため「真下に有機肥料をすき込むことになる」(JA古川)という。
プラウによるすき込み作業(画面左側がすき込みが行われた圃場)
実演会ではすき込みまで行われたが、参加した農家も熱心に見学していた。今後、バーチカルハローで圃場を均平にしてグレンドリルで小麦を播種する。そうした作業によって切り返しをした圃場でも播種への影響はないという。
麦の収穫は来年6月下旬ごろの予定で、その後は大豆を播種する。大豆の後作は乾田直播による水稲を栽培するという3年4作にチャレンジすることにしてしている。
子実トウモロコシの導入をきっかけに新しい水田輪作の体系づくりをめざしており、JA古川では150ha規模にまで拡大していく考えだ。
同JAの佐々木浩治組合長は「非常に大きな成果が出て全国に発信できるものとなった」と話すとともに、地域で転作にしっかり取り組んだことが「米価にも反映された。来年以降も転作にしっかり取り組むことが、米の価格の安定と農家経営の安定につながる。トウモロコシ、大豆、麦の輪作で地域の農業を守っていきたい」と話すとともに、生産が本格化する子実トウモロコシに対する交付金のあり方や農業共済の必要性など政策支援も必要とされていると強調している。
子実トウモロコシの収穫作業
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