子実トウモロコシ+大豆+乾田直播 3輪作を実証 JA古川・JA全農2024年7月3日
JA全農は7月2日、子実トウモロコシの大規模栽培実証試験を委託している宮城県のJA古川管内でドローンによる防除実演を行うとともに、大崎市内でこれまでの実証内容や今後の課題などをテーマに研究会を開いた。各地から約160人が参加した。
子実トウモロコシ(前作:乾田直播)
実証試験は今年度が最終年度。29経営体が参加し約106ヘクタールで子実トウモロコシを栽培している。
23年度は30経営体が参加し約108ヘクタールで栽培した。湿害を避けるため額縁明渠の設置や、サブソイラによる土壌の破砕など、排水対策を徹底し、目標7000本/10aの苗立ちに対して6800本とほぼ目標を達成した。
大豆(前作:トウモロコシ)
全体の収量は10a575.5kgと初年度の平均収量同330kgを大きく上回った。最高収量は同909kgで集荷量は約610t。5月から配合飼料原料としてJA管内の肉牛農家に供給されている。
初年度はアワノメイガの食害によるカビ毒(フモニシン)が課題となったが、昨年はプレバソンフロアブル5が適用拡大されたため雄穂抽出期前後にドローン散布したことでフモニシンは飼料安全法の目安である4ppm以下に低減した。ただ、雄穂抽出後に散布したほ場のトウモロコシからは高い数値が検出されたことから、今年度は雄穂抽出期前に散布した。
全農はプレバソンフロアブル5について、浸透移行性と残効性に優れ早めの散布が効果的で草丈が2メートルを超える子実トウモロコシの適期防除にはドローンによる散布が可能なこの剤は非常に有効だとしている。
乾田直播(前作:大豆)
作業時間は10a 2.2時間
研究会では収支試算も示された。
大豆は地域の平均反収10a180kgで試算すると総収支は同1万3000円程度となった。一方、トウモロコシ後の大豆では反収が240kgと増収したため、同2万3000円と上昇した。
一方、子実トウモロコシは全体平均反収(10a575kg)で試算すると総収支は同1万1900円程度となり、獣害を受けなかったほ場の平均反収(同675kg)で試算すると同1万4600円程度となった。
いずれも水田活用の交付金等を加えた試算で10a当たり試算では大豆のほうが収支は上回る。
ただし、作業時間は大豆の同7.0時間に比べて、トウモロコシは同2.2時間(空散防除の時間は含まず)と3分の1以下となった。作業時間は実証に参加した生産者の作業時間から試算したもので、収穫運搬に要する時間が同34分、次いで除草剤散布2回で同22分などとなった。
そのため1時間当たりの収支では大豆の3365円に対してトウモロコシは6677円となった。トウモロコシは労働生産性が高いことが実証され、研究会では「耕作放棄地の防止にもつながる」と期待する声も聞かれた。
収支試算では数量払い制度がある大豆作に比べてトウモロコシはメリットがないことが示されたが、研究会では、トウモロコシ後作大豆が収量を増やしたことや、や低コスト、労力減につながる乾田直播による水稲との輪作など経営全体の効率化やつながることが指摘された。
JA古川では子実用トウモロコシの実証試験をきっかけに子実トウモロコシ+大豆+乾田直播による水稲という輪作を次世代につなげる農業の姿として体系づくりに取り組んでいる。乾田直播は今年昨年の6倍の60ヘクタールを作付けた。
今回は乾田直播後のトウモロコシ、トウモロコシ後の大豆、大豆後の乾田直播それぞれのほ場の視察も行われた。視察ほ場で乾田直播を実施している農業生産法人アグリ高倉の佐藤英樹組合長は「昨年初めて乾田直播に取り組み、びっくりするような収量だった。次世代に残す農業としてがんばっていきたい」と話した。
研究会ではパネルディスカッションも行われた
一方で子実トウモロコシは地域産の飼料として畜産農家に供給されている。JA古川の大友學専務は「地域農業のバリューチェーンを集約していく取り組みになっている」として飼料生産から畜産物の供給まで地域内循環を重視する。
実証試験は最終年度。佐々木浩治組合長は「水田の半分を転作しなければならない。来年からいかに継続していくか。全国に発信していくことがわれわれのミッション。関係機関の協力なくしては継続しかねる」と話し支援を求めた。
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