米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日
農水省の需給見込み違いが端緒となったともいわれる「令和の米騒動」。一刻も早い日本人の主食の安定化が求められる。この現状をどう見るかJA全中元専務の冨士重夫氏に「米政策の温故知新」として寄稿してもらった。
JA全中元専務 冨士重夫氏
安保踏まえ戦略的な生産必須
令和7(2025)年の米騒動は、まだ続いているが、今後の米政策再構築にあたっては、これまでの米政策を振り返り、現在の状況や未来を考えて検討する必要がある。
米の品薄感、不足感が広がり今回のような事態が起こるということは、食の多様化、少子高齢化によって需要の減少が続いているものの、米が我が国の家庭において、やはり「主食」であると実感させられた。インバウンドの増大で米の需要が拡大してきている中で、来日した多くの外国人が日本のお米は、本当においしいと感嘆する。
まさに日本の米は何千年と日本人によって受け継がれて来た。狭隘(きょうあい)な国土の中でダムのような治山治水の役割を果たし、食料の持続的生産装置として、連作障害を起こさない「水田」という基盤を作り上げてきた。土壌改良や品種改良を重ね、熱帯性植物である「稲」を北東北や北海道まで、おいしい米が作れるように取り組んできた先人たちのたゆまぬ努力の上にできたものであり、多くの国の人々から精緻で美しいものづくりや、他者への配慮・リスペクトで賞賛される日本人共有の大切な財産である。
激動する世界情勢の今、米政策を①国境措置②減反政策・生産調整③生産コスト・所得補償④流通規制――の四つの側面から温故知新することとする。
① 国境措置
米の国境は、食管時代、非自由化の国家貿易品目として管理されていたが、ガットウルグアイ・ラウンド交渉の結果、1994年、非自由化品も含め、全ての品目が関税化され、6年間で平均36%、最低でも15%、関税を削減していくこととされた。そして非自由化品目であった米にはミニマム・アクセス(MA)という無税(マークアップは徴収できる)の義務輸入として年間約77万tが課され、このうち10万tが主食用として流通することとなった。また、この枠外の関税は1キロ341円とされた。
この後も関税のさらなる削減交渉はWTO体制下で行われたが2006年ジュネーブで、米国、EUなどの先進国と中国、インドなどの途上国との対立で決裂した。これ以降WTOは機能不全となり、多国間を枠組みとした世界統一ルール作りは困難となり、2カ国間やTPPなどの複数国間での経済連携協定が主流となり今日に至っている。
そして、今、米国のトランプ大統領による関税自主権を復活させた、自国ファーストの相互関税や追加関税が世界を席巻している。このことは、共産主義的非民主的独裁国家である中国やロシアなどが、国家の先導により自国企業を育成し、貿易自由体制を利用して、米国の需要を略奪する事態がより深化してきたことへの大きな危機感から生じている。
そして、ドラえもんやシャインマスカット、コシヒカリなどの知的財産権を平気で侵害する国家が、自国の鉱物資源や自国の大きな需要量を脅しの材料にするといった状況や、共産主義的非民主国家が市場原理主義や自由貿易体制を堅持すべきだと声高に訴えるという皮肉な状況となっている。
今、世界の情勢は、戦争、紛争・クーデターや貧困、貧富の格差の拡大などが広がり、不確実性が深まり、トランプ関税により、関税はゼロが善ではなくなっている。資源や食料、医療、防衛などを含めた国境措置を、どの国とどのような内容で対応していくのか、新たな国家安全保障政策が問われている。
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