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【現地レポート・JAの水田農業戦略】新たな輪作で活路(2)子実コーンの「先駆者」 JA古川2024年3月29日

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主食用米の国内需要が継続して減少していくなか、地域の水田を維持し農業を持続させるため生産から販売までのJAの戦略が期待されている。今回は乾田直播(ちょくは)水稲や子実トウモロコシ栽培を導入し、新たな輪作体系の確立による水田フル活用と持続可能な農業の実現に挑戦する宮城県のJAいしのまきとJA古川を取材した。

23年度はドローンによる殺虫剤散布も実施23年度はドローンによる殺虫剤散布も実施

"循環型輪作"めざす 飼料輸入改善へ3年3作基本に

JA古川はJA全農と連携し2022年度から子実トウモロコシの試験栽培に取り組んでいる。

国際的な穀物価格の高騰によって飼料や食品用穀物の国内増産を求める声が高まっており、子実用トウモロコシの生産は、輸入に依存している飼料を国産に切り替えることで自給率向上につなげる取り組みでもある。

また、トウモロコシの作付けによって、ほ場の排水性の向上や茎葉をすき込むことで地力の改善につながるほか、有用微生物も増えると言われ、輪作を組む大豆の増収も見込まれる。さらにたい肥を活用することで、地域の家畜ふん尿の受け皿ともなり循環型農業の実現につながる。

JA全農のまとめによると、22年度は大豆生産組合を中心に91・4ha、223のほ場で31経営体が作付けした。

ただ、22年度は7月に大きな風水害を受けたことや、播種不足などで平均収量は10a当たり330kgにとどまった。それでも被害がなかったほ場の平均は同512kg、最高収量は同739kgとなった。

トウモロコシは分けつしないため、23年度は播種をしっかり実施することや排水対策を実施したほか、アワノメイガの食害を防ぐため適用拡大された殺虫剤の散布も行った。

30経営体が約106haで作付けし、鳥獣被害の大きかったほ場を除き平均収量は同675kg、最高は同909kgだった。

土づくりの原点に

こうした試験栽培を経てJA古川では「子実トウモロコシ+大豆+水稲の乾田直播」という3年3作を基本とした輪作体系の確立をめざしている。

作業面積100haを営農する農業生産法人アグリ高倉では、先行的にこの輪作体系の確立に取り組み、23年産では子実トウモロコシ10ha、大豆15ha、そして農研機構との試験栽培として行っている乾田直播による飼料用米を3ha作付けした。

大豆は子実トウモロコシの後作として栽培、多収品種でもあったが、10a当たり330kgを収穫した。飼料用米は同700kgと高収量となった。米の転作が迫られるなかJA管内では麦、大豆での転作を行ってきたが、連作障害や難防除雑草が課題となってきた。

佐藤英樹組合長佐藤英樹組合長

JA理事でもある佐藤英樹組合長は「土づくりという原点に戻ることが大切。たい肥をしっかり投入して子実トウモロコシを作り、それによって大豆、水稲の増量をめざすという取り組みに手応えを実感しています」と話す。

子実トウモロコシの作業時間はJAの試算では10a当たり2・2時間ほど。20時間を超える主食用米はもちろん、大豆の半分以下の時間で「その分、大豆と水稲に手がかけられる」と佐藤組合長は話す。

また、雑草防除にも効果的な体系だという。トウモロコシの除草剤が次に作付けする大豆の雑草対策となり、そして大豆の除草剤が水稲の雑草対策となる。つまり、子実トウモロコシを核とした輪作体系とは、栽培面積の拡大に対応した作業時間の少ない品目の導入というだけでなく、土づくりの原点に戻り、さらに効果的な防除体系にもなっているといえる。

「こうした体系の確立によって土が豊かになれば、麦や多彩な野菜も作れるようになる。後継者がこの地域の農業に展望を持てるような土づくりでもあると考えています」と佐藤組合長は話している。

将来の担い手像描き 集落の枠を超え 農の垣根は低く

次世代の生産組織へ

新たな輪作体系の実現に向け、一方でJAは新たな生産組織づくりも提唱している。

大崎市のアンケート調査などで後継者がいないとの回答が6~7割になるという現実があり、少人数で農地をいかに維持し、そのなかで新たな輪作体系を実現するかが課題となる。

水田古川03.jpg佐藤貴寿営農企画課長

同JAの佐藤貴寿営農企画課長は行政が母体となっている農業振興協議会のもとにJAはもちろん大崎市も加わり、その他関係機関の協力の下、次世代型農用地利用協議会(仮称)を地域ごと(小学校区単位)で設置して、作付け計画の調整や、利用権の再構築など担う構想を提起している。

来年3月までに「地域計画」を策定することになっているが、そこに協議会での協議結果を反映させ、将来の担い手像と作目などの計画を描こうというのが狙いだ。

現在、地域では個別農家を基礎に、個別農家が作業委託や利用権を任せている集落営農組織、農事組合法人などがある。

新たな構想は、その上にさらに集落横断的に作業を担うオペレーター組織を作ろうというものだ。オペレーター組織は子実トウモロコシ+大豆+水稲乾田直播の輪作体系を担う作業班として位置づけ、集落営農組織などから意欲ある生産者がオペレーターとなる。いずれはオペレーター組織は集約し法人化して雇用を受け入れるような担い手となることも視野に入れる。必要となる機械はJAが購入し組織に貸し出すかたちを検討する。

一方、既存の集落営農組織や農事組合は転作作物を基本とし、組織の集約による規模拡大をめざす。

個別農家は個人で水稲作付けを行うほか、集落営農組織などに委託した農地については草刈りや雑草管理などを行い、作業代を協議会を通じて受け取るという仕組みを検討している。

佐藤課長は「集落の枠を超えたオペ組織は必要だが、一方で草刈りなどの管理作業は集落で下支えすることが必要だと考えている」と話す。

新たな組織づくりが進めば、地域内に住みながら会社勤務などで農業経験のない人にも農業に挑戦してもらえる場となるのではないかと考えている。また、新たな輪作体系づくりを「地域計画」に落とし込むことによって、野菜など他の品目栽培も計画的に行い、女性など多様な人の農業への参加も見込む。

全農宮城県本部が主催し、東北農研機構と宮城県が指導する水稲の乾田直播は今年宮城県内の5JAで取り組む。用途は主食用、飼料用、WCSなど地域のニーズに合わせて作付けすることになる見込みだが、技術情報などで「JA間連携や交流につなげ宮城県農業の底上げを図り、今後の日本農業の姿を考えていきたい」と佐藤課長は話している。

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【現地レポート】JAの水田農業戦略 「東川米」の国際ブランド化めざす JAひがしかわ(1)(24.3.19)

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