【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日
スマート農業というと大規模経営を効率的に行うためのアイテムと思われているが、効率化は大規模農家だけが必要としているわけではない。小・中規模の農家でも、高齢化や世代交代を考えれば効率化のためのスマート農業の導入が必要だ。今回は、家族経営の農家がスマート農業(全農の進める営農管理システムZ-GIS・栽培管理支援システムザルビオ)を導入して、次世代を見据えた効率化と経営改善をおこなった事例を紹介する。

静岡県西部で農業を営むA農園は、広大な田園地帯の中にある。水稲のみの栽培で20haをA氏と奥様でおこなう家族経営だ。独自ブランドの特別栽培米や、地域ブランド米を中心に、数種類を水稲栽培している。JAへの販売に加え独自販路も確保するなど、経営維持のためいろいろな工夫をしている。
さらにA氏は、スマート農業を活用した省力化を目指している。いままでと同じ方法で農業を進めるには体力的に厳しいことや、経営面積が増えて労働力が不足しているなど、かねてから改革の必要を感じていた
改革はJAの営農センターと協同でおこなっている。Z-GISやザルビオについても、営農指導の一環としてJAから情報提供を受けている。
JAの営農アドバイザー(技術指導)はこう言う。「当JA管内では、A農園のように先進的な技術を導入している農家は少ないと言える。ただ、スマート農業を導入したいと考える農家の数は多い。そんな現状から、A農園のような先進技術を導入している農家を応援していこうと考えている。また、管内の生産者に向けたスマート農業の第一歩として、操作研修会の開催やさまざまな情報提供の場をつくっていきたい」
A農園では、2017年に省力化を目指し、一部の栽培を田植えによる移植栽培から、直はに切り替えた。これにより苗生産の省力化が図れた。当初は、多目的田植え機による湛水直はだったが、2020年からはドローンによる湛水直はも開始した。現在直はは全体の20%ほどだ。今後も直はの面積拡大を検討しており、多目的田植え機とドローンによる湛水直はを組み合わせて進めていく予定だ。
ドローンについては地元企業のY社と共同開発をおこなっており、仕様の決定、作業の精度、満足度などについて、ヒアリングを重ねながら進めている。
A農園では2020年にZ-GISを導入し、ほ場のデータを作成した。年度ごとに作成したワークシートで、作業日や仕様資材、センシング日などを管理している。
また2020年は国際興業(株)の「天晴れ」を使用して、栽培判断に活用した。人工衛星のリモートセンシングによりほ場の生育状況を把握し、生育ムラなどを把握する。
2021年には、IHIアグリテックの可変施肥ブロードキャスター「GPSナビキャスター」を試験導入し、省力化と生産米の品質向上(食味)、収量増を目指している。当時は、天晴れのセンシングデータをもとに、Z-GISで作成した可変施肥マップを、USBメモリでブロキャスに移し可変施肥をおこなった。
現在は2021年に導入したザルビオフィールドマネーシャーで、水稲の生育状態を把握しながら、取得したバイオマスマップのデータを翌年の可変施肥に使用している。導入したブロキャスの可変施肥マップも自動生成され、USBのデータも簡単にできる。
また2021年は、生育調査用のドローンも導入しドローンセンシングも併用していた。「天晴れ」などの人工衛星センシングは天候に左右されやすく、また、結果が出るまで時間が必要だ。現在は、曇天でも調査がおこなえ結果が早くわかるドローンセンシングと、ほぼ毎日更新されるザルビオの情報とを組み合わせてほ場状態を把握し、高品質の生産につなげている。
家族経営の改革においても、スマート農業は有効だ。さまざまな技術が存在する中、JAの営農指導員と2人3脚で、新しい技術を検討するのが今回紹介したA農園のやり方です。それにより、ひとりの農家が導入した先進的な技術が、地域全体に普及しやすくなると考えている。JAと農家が協力することで、地域にあったスマート農業が創られている。
全くの余談だが、Aさんにドローンについて聞いてみた。ちなみにドローンの操作は、Aさん、奥様、娘さんの3人が全員出来るよう資格を取得している。「ドローンによる湛水直はを導入することで苗づくりの手間やコストが確実に減っている。スマート農業も見回りやいままでの経験から導き出していた栽培方針をデータで示してくれる。これらが次の世代に無理なく引き継ぐ準備になればと考えている」とAさんは答えた。これは、ドローンやスマート農業を使った新しい事業承継と言えるのでないか。
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