物流問題、環境対応を重視 JA全農24年度事業計画2024年3月15日
JA全農は3月14日、2024年度事業計画を明らかにした。4月の改正労働基準法の適用による物流問題への対応や環境に配慮した農業生産、さらに農畜産物の価値向上や販路拡大などに力を入れる。26日の臨時総代会で正式に決める。
24年度は中期事業計画の最終年度となり、これまで生産振興や食農バリューチェーン、海外事業など6つの全体戦略に取り組んできた。
新年度は食料安保の確立や環境に配慮した農業への転換などを柱とした食料・農業・農村基本法が改正される見通しだが、依然として高水準の生産コストにより農業経営がが厳しいなか、生産コスト低減に向けた取り組みがさらに求められる一方、コストを考慮した価格形成も求められている。また、物流の適正化、効率化に向けた取り組みを迅速に進める必要がある。さらに環境に配慮した農業の実現も課題となる。
こうした情勢のもと「生産振興」の具体策では、コスト低減に資する肥料の取り扱い拡大や生産性を向上させるデジタル技術の普及、輸入依存度の高い穀物の生産支援を進める。また、多収品種のなどの種子の確保、畜舎賃貸事業の拡大をはかる。多収品種による米の契約栽培は7万t(23年度見込み6.8万t)、国内肥料資源活用銘柄は15万t(同11.4万t)の普及を目標とする。
モーダルシフトの実践
「食農バリューチェーンの構築」では、物流体制とインフラの整備に取り組み、鉄道・船舶を活用したモーダルシフトの実践、中継物流によるドライバーの輸送時間短縮、消費地物流拠点の設置による供給体制の強化をはかる。米輸送での全農統一フレコンは60万枚(同45万枚)の流通を目標とする。
「海外事業展開」では国際情勢の変化に対応した海外原料サプラーチェーンの強化と、中長期の視点に立った最適な海外事業体制の構築を図る。輸出では海外実需者ニーズや輸入国の規制などに対応した輸出産地づくりを支援する。米の輸出は1万9300t(同1万5800t)、和牛の輸出は1100t(同950t)を目標とする。
「地域共生・地域活性化」では、農畜産物直売所を併設したファーマーズ型Aコープ店舗を通じて地産地消を推進し、新規に4店舗開設を目標に累計49店舗とする。自家消費型太陽光発電などによる再生可能エネルギーの普及拡大を図り、新規に20件を目標に累計で46件とする。「JAでんき」は取り扱い拡大を図るとともに、蓄電池を活用した余剰電力を組合員間で相互融通する仕組みも導入する。
グリーンメニューの普及
「環境問題など社会的課題への対応」では生産現場の実態に基づいたグリーンメニューの実践、回収りんなど国内肥料資源の活用など環境にやさしい農業の実現をめざす。具体的な行動としては生分解性マルチを10万本(同9万本)の普及を目標とする。水田での秋耕などメタンガス低減技術の普及や、環境に配慮した米の認証制度構築に向けた検討も始める。
「JAグループ・全農グループの最適な事業体制の構築」ではJAと連携した集荷・販売の取り組み強化、DX戦略の実践を通じた事業効率化などでJAを支援する。
消費者への「価値」発信
適正な価格形成が課題となるなか、全農は全国的な需給調整機能を発揮して価格維持を図るとともに、農畜産物の価値について消費者に情報発信することにも力を入れる。また、全農グループ直営飲食店舗における規格外農産物の食材の積極的な活用によって生産者の所得向上につなげる。
取扱高は前年計画比102%の4兆9200億円を計画。肥料原料価格の低下や、適正施肥の推進などの要因で耕種生産事業の取扱高は前年比92%と見込むが、他の事業は同103%~106%を計画する。
事業収益は2兆4354億円、事業総利益は935億円、事業利益は5億円と前年並み、経常利益は同121%の111億円を計画する。
現在の3か年計画について全農の安田忠孝専務は「スタート時から肥料、飼料原料が上昇したことで海外事業は、当初計画の想定とは異なる状況となった」としつつも他の分野では「22年度、23年度と芽出しをしてきたものが実績として積み上がってくる段階に来た」と次年度事業への手応えを語る。
収支計画のうち、事業利益については当初、10億円を目標としていたが5億円の計画にとどまる。安田専務は「計画を超える実績となるよう努力していきたい」と話している。
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