農薬:サステナ防除のすすめ2025
【サステナ防除のすすめ2025】秋冬野菜の病害虫防除 異常気象こそ先手対応を2025年8月14日
ここのところ、毎年病害虫の発生様相が異なっており、もはや「平年並み」という言葉は死語になったのではないかと思っている。それほど、毎年変化に頭を悩ますことが続いている。不測の事態に備えるためには、発生の可能性のある病害虫をリストアップした上で、それらに対する予防的な備えを万全に行うことが重要である。そうすると、発生しなかった場合はせっかくの防除が無駄になるではないかと叱られそうだが、「備えあれば憂いなし」で無駄ではなく、万が一のための保険的なものだと理解した方がよいであろう。
事前察知で被害少なく
とはいえ、資材費高騰の折できるだけ無駄は省きたいのが当然の心情であるので、サステナ的には、一つの防除法で広範囲な病害虫を防除できる防除法を選択するのが重要だと考えている。
予防的な備えとは、発生する可能性のある病害虫とそれらの発生に適した気候条件を把握し、発生の条件がそろうと予想される場合に必要な予防措置を施しておくことだ。例えば、台風や豪雨などは事前に察知できるので、雨媒伝染する病害の発生を予測し、保護殺菌剤を雨が降る前に予防散布しておくと被害を最小限に抑えることができる。また、これからの季節は、オオタバコガやハスモンヨトウなどの大型チョウ目害虫が活発に活動する時期であるので、その前に防除対策をしっかりと行っておくことが重要である。
ついては、表に示した代表的な秋冬野菜と発生しやすい病害虫を参考に、発生しそうな病害虫に対する早めの対策の実施をお勧めするので、ぜひとも検討願いたい。
なお、文中などで適用薬剤を紹介しているが、紙面の関係上、一部の病害虫に限られていることをご容赦願いたい。
早期発見による早期対処
農薬一般に言えることであるが、農薬は、病害虫の発生量が少なく、発病前や産卵前、あるいは害虫が小さな幼虫のタイミングで確実に防除することでその効果が高く安定する。
このような農薬の効果を最大化する時期のことを"防除適期"という。例えば小さい害虫にしか効かない農薬があったとすると、害虫が小さい時がその農薬の"防除適期"であり、予防効果主体の農薬であれば病害の発生前が"防除適期"である。逆にいうと、どんなに優れた農薬であっても、適期を過ぎると十分な防除効果は期待できず、せっかく散布しても無駄になるだけであることをよく理解してほしい。
防除適期に防除を行うには、ほ場をよく観察して病害虫の発生状況を確認するのが基本であるが、防除暦が用意されている作物であれば、防除暦に示された散布時期が正に防除適期なので、そこを逃さず確実に防除するようにすると良い。
また、病害虫防除所の発生予察情報を参考にするなどして、病害虫の発生状況に目を光らせ、発生前の予防散布を確実に実行できるよう心がけてほしい。なぜなら、予防散布より優る防除法は無いからだ。
秋冬野菜の主要病害虫と防除対策
◆オオタバコガ
オオタバコガは、盛夏から初秋にかけて被害が大きくなり、ナス科やウリ科、アブラナ科、レタスその他多くの野菜を食い荒らすやっかいな大型チョウ目害虫である。
オオタバコガは、発生期間を通じて次から次へと発生してくるので、とにかく発生の初期を見逃さずに確実に防除することが重要で、発生が始まったら発生期間を通じた定期的薬剤散布が必要だ。
特に果菜類では、幼虫が果実に食い入る前に確実に防除できるよう、発生初期からの定期防除が不可欠だ。
効果のある薬剤としては、グレーシア乳剤やフェニックス顆粒水和剤、アファーム乳剤、スピノエース顆粒水和剤、トルネードフロアブル、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤、ヨーバルフロアブルの評判がよい。
オオタバコガの発生初期から確実に防除したい場合は、セル苗かん注処理法が効果的だ。この方法は、育苗期に薬液をかん注処理するだけで、本ぽに移植後の初期被害や苗による持ち込みを防ぐことができる。効果の持続期間は1か月程度と長く、キャベツやレタスなどでの初期の被害を回避することができる。先に紹介した薬剤のうち、ジアミド系薬剤はセル苗移植時のかん注処理で長期間の防除が可能な薬剤なので一度試してみると良い。
◆ハスモンヨトウ
ハスモンヨトウは、年に5~6回も繰り返して施設内なら冬でも発生することもある年がら年中被害を起こす可能性のある害虫で、加えて多食性でありとあらゆる作物を食い荒らす大変厄介な大型チョウ目害虫である。時期的には、8~10月の被害が特に大きいので、これからの季節は最重点で防除に取り組んでほしい。
この害虫の厄介なところは、幼虫が脱皮ごどに薬剤が効きにくくなることである。特に最終の6齢幼虫だと農薬が効きにくく、加えて図体がデカいことから食害量も多くなって被害も大きくなる。このため、防除は幼虫が小さい時期にしっかりと行い、できれば産卵される前に予防的散布がなされていることが理想である。
残効考慮し定期防除も
また、発生回数が多いので、常に「幼虫が小さい時期」の防除を徹底するためには、発生期間を通じた定期的な防除が必要となってくる。その際には、殺虫剤ごとの残効期間を考慮して、残効が切れる前に、薬剤系統が異なる殺虫剤をローテーションで散布するように心がけてほしい。
指導機関などの資料で防除薬剤としての評価が高いのは、フェニックス顆粒水和剤、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤、グレーシア乳剤、ヨーバルフロアブルなどであり、古くからの薬剤では、アファーム乳剤、オルトラン水和剤、コテツフロアブル、ジェイエース水溶剤、ロムダンフロアブルなども高評価である。
フェロモン利用も一手
散布剤の他に、コンフューザーVやヨトウコンHといった交信攪乱タイプのフェロモン剤があるので、産地全体などできるだけ大きな面積で使用すると発生を減らすことができる。それに伴い農薬の散布回数も減らすことができるので、可能ならば活用してほしい。
◆べと病
べと病は、秋~冬の多湿時に発生が多くなる病害で、葉に、黄色~淡褐色(ハクサイ)や淡黄緑色(キャベツ)、淡黄褐色(ブロッコリー)の葉脈に囲まれた不整形病斑をつくるのが特徴だ。
病原菌はべん毛菌類と呼ばれる湿度を好むカビで、感染から発病までの期間が短く、気付いた時には既にかなりの範囲でほ場内に病気が拡大していることが多い。そのため、ジメジメした気候など多発生が予想される時期には、できるだけ予防的に散布し、もし病斑が見つかったら速やかに治療剤による防除を実施するようにしてほしい。
どの病害もそうだが、病斑を見つけてから防除するよりも、病害が発生する前の予防的散布が最も効果が安定するので、毎年発生するようなほ場では、発生前から定期的な予防散布を行う方が効率的である。
散布の際には、葉の裏にもしっかりと薬剤が届くよう丁寧に散布し、特に降雨など湿度が増す恐れがある場合などは、早め早めに薬剤散布を行うことを心がける。また、耐性菌の発生リスクが高い病原菌でもあるので、薬剤系統の異なる殺菌剤のローテーション散布を確実に実行してほしい。
薬剤防除は、予防効果に優れ残効も長い保護殺菌剤(ジマンダイセン、ダコニール、ペンコゼブなど)をローテーション散布の基本として、少しでも病勢が進むようなら速やかに治療効果が期待できる薬剤(プロポーズ顆粒水和剤やレーバスフロアブル、アミスターオプティフロアブルやリドミルゴールドMZなど)を使用して、病勢を止めるようにするとよい。
ただし、治療効果が期待できる薬剤は、耐性菌発生のリスクが特に高いので、指導機関などに問い合わせて、もし耐性菌が発生している有効成分があれば、その耐性菌が発生している有効成分を含む薬剤は使用を控えた方がよい。
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