農薬:サステナ防除のすすめ2025
【サステナ防除のすすめ2025】果菜類(施設)編 太陽熱で死滅狙う(1)2025年8月13日
梅雨らしい梅雨がなく、ただひたすら暑い夏が続いている。過日、北海道の帯広で40度を超えるなど、従来あまり暑さを感じなかった地域まで猛暑に見舞われている。こう暑いと、米の白未熟粒の発生が増え、特に高温耐性ではない品種で収量を大きく減らしてしまうことになりはしないか心配である。令和の米騒動で備蓄米が大幅に減っているさなか、米の収量不足は今後の食料事情に直結していくだけに高温対策をしっかりととってもらいたいものである。
一方で病害虫の発生は、高温少雨傾向により病害の発生は少ないようだが、害虫は発生時期が早まって発生量も増え前倒しの防除対策が必要な地域も増えている。
秋に向け対策考え
盛夏という季節は、防除作業するにも暑くてかなりの重労働であるしと農業にとっては過酷な季節でもあるが病害虫の発生も多く、サステナ的にも秋に向けた対策をとっておきたい季節でもある。今回は、この時期に防除が必要な病害虫の特徴とその防除法について整理しつつ、盛夏だからこそ実施できる太陽熱を使った防除法について紹介する。
1.果菜類に発生するウイルス病
果菜類を冒すウイルス病は、一度発生すると治療効果を示す農薬はないため、感染罹病株を抜き取りほ場外に運び出して処分するしか対策がない。このため、対策病原ウイルスに感染させないようにするかが重要だが、多くのウイルス病が害虫によって媒介されるので、その媒介虫を作物に寄せ付けないようにすることが最も重要である。その他汁液でも感染するので、芽かき誘引等の作業の際には手指や道具の消毒をしっかりと行うことも重要だ。
果菜類の主なウイルス病
ウイルス病の伝染方法
2.果菜類に発生する主なアブラムシ
果菜類には多くのアブラムシ類が発生する。ワタアブラムシやモモアカアブラムシなどの発生が多く、ワタアブラムシは6~8月が発生のピークとなり、年に十数回も発生する厄介な害虫である。アブラムシは、どの種も多くの野菜を加害し、単為生殖(メスが交尾をせずに子供を産み続ける)を行うため、何度も発生する(世代を繰り返す)。このため、一度増殖が開始されると短い期間に数が一気に増加するのが特徴である。
果菜類を加害する主なアブラムシ類
3.果菜類に発生する主なアザミウマ類
果菜類には多くのアザミウマ類が発生し、果実にかすれ状の傷を引き起こしたりして果菜類への被害が大きい害虫である。増殖が速く世代を何代も繰り返す厄介な害虫である。多くのウイルス病を媒介し、その中には壊滅的な被害を及ぼす病害もあるので、感染させないためにもしっかりとした防除が必要である。
果菜類を加害する主なアザミウマ類
4.果菜類に発生する主なコナジラミ類
コナジラミ類は、カメムシ目コナジラミ科に属する害虫で、体長が1mm程度の極微細な害虫である。キュウリなどの栽培中に作物に近づくと小さな粉状のものが飛び回ることがあるが、あれがコナジラミである。野菜に発生するコナジラミは、オンシツコナジラミとタバココナジラミの2種である。成虫のはねの納め方や幼虫や卵の形状で見分けがつくものの、微細なので肉眼で見分けることは難しい。オンシツコナジラミは、暑さに弱く夏場には数が減り、薬剤がよく効く。
これに対しタバココナジラミは、暑さに強くて夏場でも旺盛に増殖し、薬剤が効きにくい性質がある。このため、細かい形態を観察できない場合でも、そういった点で区別がつく。
また、タバココナジラミには、形態が一緒だが遺伝子が異なる40ものバイオタイプが存在し、主なものはバイオタイプBやQと呼ばれるものがあり、薬剤の効き具合も異なるので注意が必要だ。
コナジラミ類もウイルス病を媒介する。オンシツコナジラミは、キュウリ黄化病やメロン黄化病、トマト黄化病ウイルスを、タバココナジラミはトマトの黄化葉巻病やキュウリ・メロン退緑黄化病ウイルスを媒介するので、特に、ウイルス病が発生している地帯ではより徹底した防除が必要である。
果菜類を加害する主なコナジラミ類
5.果菜類を加害する微小害虫の防除法
上記で紹介した果菜類を加害する微小害虫(アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ類) の防除法は共通する点が多いので、共通点を中心に整理してみた。
(1)物理的防除法
害虫を手で捕まえて殺したり、防虫ネット(不織布等)で作物を覆ったり、ハウスの側窓をメッシュの細かい網で覆ったりして害虫を作物に物理的に近づけないといった方法で害虫を防除する方法である。
①捕殺
文字通り、害虫を捕まえて殺すことである。アブラムシやコナジラミの場合はなんとか捕まえることができるかもしれないがアザミウマ類はかなり困難である。アブラムシであれば、絵筆等で払い落したり、強い水流で洗い流したり、指で押しつぶすなどの方法がある。いずれも手間がかかるが、安全・確実な方法ではあるものの、害虫の数が多かったり、広いほ場で満遍なく防除するには効率が悪すぎるので現実には利用できる方法ではない。
②防虫ネット
ハウスの側窓や天窓をメッシュの細かい網(0.4mm以下の効果が大きい)で覆い、害虫が侵入しないようにする方法である。ただし、メッシュを細かくしすぎた結果、ハウス内温度が高くなり過ぎて農作物の収量低下、品質低下を招いてしまう恐れがあるので注意する。
③光・色の利用
害虫は特定の光(波長)や色に対して反応することが多い。アブラムシは、銀色の光を嫌がる性質があるため、マルチをシルバーマルチにすることで、作物にアブラムシが寄り付きにくくなる。また、黄色にアブラムシが、青色にアザミウマ類が好んで集まることを利用し、黄色や青色に着色した粘着板や粘着シート(ハエ取り紙みたいなもの)で害虫をおびき寄せ、捕殺する資材もある。ただし、いくら集まってくるとはいっても粘着板・シートだけでは防除しきれないので、他の方法と組み合わせて行う必要がある。
④気門封鎖剤の利用
水あめなどでアブラムシの気門を物理的にふさいで窒息させる方法である。使用する農薬は、気門封鎖剤と呼ばれるものであるが、天然成分で物理的にアブラムシを駆除するため、使用回数に制限がないことから、ここでは耕種的防除の一種に加えている。
⑤紫外線除去フィルムの使用
アザミウマ類は、紫外線除去フィルム下では発生密度が低下することが知られているので活用すると良い。ただし、ナスでは同フィルムの使用により着色不良を起こすので注意が必要である。
⑥雑草防除
微小害虫は施設周辺の雑草を経由して施設内に侵入してくることが多い。このため、施設回りの除草を徹底しておくと微小害虫の施設内への侵入阻止効果が高い。
薬剤散布定期的に
(2)薬剤防除
微小害虫に効果のある農薬は多数あるが、微小害虫は増殖が速い上、薬剤抵抗性の発達も早く、既に多くの害虫に抵抗性の発達事例があるので、残効期間に注意しながら系統の異なる薬剤をローテーションで使用するなど注意が必要である。
微小害虫は増殖が速いので、一旦発生すると急速に被害が大きくなる。このため、発生初期での徹底防除が重要であり、できれば、耕種的防除と組み合わせ、発生前からの定期的薬剤散布を行うようにする。
薬剤は、育苗期後半に苗箱かん注処理剤を使用して本ぽへの持ち込みを防ぐとともに、定植前か定植時の株元粒剤散布によって生育期前半の防除を確実に行い、密度を徹底して低下させると良い。
6.微小害虫・ウイルス病に効果のある施設内蒸し込み処理
夏場にしかできず、微小害虫やウイルス病に効果のある防除法に施設内蒸し込み処理がある。この技術の原理は簡単で、施設を密閉することによりハウス内の温度を病害虫の死滅温度以上に高温にして、中にいる病害虫を一網打尽にする方法である。
病害虫の死滅温度とその必要な継続時間は、アザミウマ類やハモグリバエ類が45度以上で1時間以上、コナジラミ類が40度以上で5日間以上、大概の病害や雑草の種が60度以上で30分~40分以上といわれており、この温度以上に施設内や被害残さの温度を上昇させて、必要な時間を継続できれば病害虫を防除できることになる。
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