花がよく売れるお盆・彼岸から見えてくる花産業の問題点【花づくりの現場から 宇田明】第66回2025年8月14日
葬儀が簡素化・小型化し、家族葬・1日葬・直葬の割合が葬儀全体の70%にまで増えているそうです(鎌倉新書 2024年)。
また、仏壇がない家庭や墓じまいも増えています。
こうした状況から、お盆やお彼岸の伝統行事が廃れてきていると思われがちです。
しかし、花産業では、お盆・彼岸の墓花やお供えの花の重要性が、年々高まっています。
花産業では、花が特によく売れる日を「物日(ものび)」とよぶことは、当コラムで何度も紹介しました。それは、春の彼岸、お盆、秋の彼岸、正月の年4回です。
いずれも仏教行事、伝統行事で、お墓や仏壇に供える花、正月の飾りなどに多くに花が使われます。
日本人は宗教心が薄いといわれますが、こうした行事における花の消費を見ると、宗教や伝統行事が根強く残っていることがわかります。

図は、総務省の家計調査(2人以上世帯)における切り花の年間購入額のうち、3月(春彼岸)、8月(お盆)、9月(秋彼岸)の合計購入額の割合を示しています。
図からは、この三つの月の購入額の割合が年々高まっていることがわかります。
これは、お盆・彼岸に花が以前より売れるようになったからではありません。
年間切り花購入額は、年々減りつづけて、それに伴い、お盆・彼岸の購入額も減っています。
しかし、減り方がほかの月よりは少ないので、相対的にお盆・彼岸の月の割合が高まっているのです。
物価高騰に賃金が追いつかない現役世代や、年金暮らしのシニア世代は、「花より団子」で花への出費を抑えています。
それでも、普段の生活では花の購入を控えても、お盆やお彼岸には、お墓や仏壇、あるいは遺影に花をお供えして故人をしのびたいと考える人が多いことが、図から読みとれます。
日本の伝統行事は希薄になったとはいえ、しっかりと生活に深く根を張っているのです。
図は同時に、物日以外の平日(ひらび)における花の売れ行きが悪くなっていることをも物語っています。
長年にわたり、物日に依存し、日常的な家庭での利用(ホームユース)を軽視してきたことが、
現在の花産業の苦境を招いた大きな原因です。
物日にはさばききれないほどの花が市場に入荷し、業界全体が多忙を極めます。
しかし、平日には取扱量が激減し、閑古鳥がなくような状況になります。
このような「山が高く谷が深い」消費構造を解消しなければ、花産業の持続的な発展はありません。
そのためには、物日に依存しすぎる体質から脱却し、家庭で日常的に花を飾る習慣や、誕生日や記念日などに花を贈る文化を広めていく活動が不可欠です。
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