東京23区の住民 過去1年間に森林を訪れたのは3人に1人 森林総研2025年8月15日
森林研究・整備機構森林総合研究所の研究グループは、東京23区の20歳以上の住民5000人を対象とした大規模調査を実施。都市住民の森林への関心度合いと訪問頻度とその背景にある要因を明らかにした。
アンケートは、回答者がどのような自然を森林だと認識しているかを確かめる質問も含む。例えば、新宿御苑や小石川植物園など街なかの広い公園・庭園を森林と判断する人は23.5%、高尾山や筑波山など登山道のある山を森林と判断する人は79.9%と、この研究でいう森林への関心や訪問には、回答者によっては都内の大規模公園や植物園などへの関心、訪問も含まれる。
アンケートの結果、まず、森林に関心があると答えた人は半数以上(51.9%)。しかし、過去1年間に森林を訪問した人は、35.6%にとどまった。これは、全国を対象とした森林と生活に関する世論調査(令和5年10月)の結果(48.1%)と比べて低い値。また、関心があっても訪問しなかった人は24.4%で、東京23区では、森林に行きたい気持ちはあっても、実際には行かない、行けない人が多いという大きなギャップがあった。
図1:森林への訪問に結びつく要因と、その因果関係
こうしたギャップの「なぜ?」を探るため、森林訪問に結びつく要因を分析(図1)した。森林への訪問頻度に特に大きな影響を与えている要因は「旅先で景色の良いところを散策する頻度」。さらに、幼少期の自然体験の豊かさや、自宅近くで良い景色を見ながらの散歩の習慣が、非日常である旅先での行動に影響を与えていることが判明。過去の自然体験と現在の習慣、日常と非日常の行動が、森林への関心、訪問に繋がっていることが明らかになった。
逆に森林への訪問を妨げる要因としては、自家用車がないことが挙げられた。東京23区は自家用車の保有率が全国的に見ても低い地域で、大都市特有の大きな障壁になっていると言える。また、類似の調査では年齢を重ねると自然への訪問頻度が増加する傾向があったが、東京23区の住民を対象にした今回の調査では、年齢を重ねることが訪問頻度にマイナスの影響を与えていた。
これには東京23区住民の自家用車の所有率と、加齢による体力や身体機能の低下を考えると、公共交通機関による森林への移動負担が関係していると推定される。こうしたことから、大都市住民の森林への訪問を促すには、アクセスの改善が非常に重要であることがわかった。
適切な森林管理の基盤となる山村地域の活性化のためには、まず人々と森林との接点を増やすことが重要だが、東京23区の住民の24.4%は、森林に関心があるものの訪問はしていない。約1000万人の東京23区住民の森林への関心を高め、訪問に繋げることができれば、山村地域と多様な形で関わる関係人口の拡大が期待できる。また、大都市住民にとっても、心身の健康維持やウェルビーイングの向上といったメリットが期待できる。
同研究はまず大都市から調査を始め、現在は地方都市のデータも取得して分析を進めている。森林総研では今後、都市ごとの特徴を比較してより詳細に要因を探り、幅広い範囲での森林行政に貢献できる成果に繋げていく。
同研究成果は、2024年4月23日に『Forests』誌でオンライン公開された。
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