米価下落の予兆【森島 賢・正義派の農政論】2025年12月2日
●先物米価が下がった
米価下落の兆しが現れてきた。先物市場では、すでに下落が現実のものになっている。先物米価を見ると、10月23日の高値の3万6、200円(玄米60kgあたり、以下同じ)が、11月19日には2万9、930円にまで下がった。わずか1か月たらずの間に、17%も大幅に下がった。その後やや回復したが、昨日はまた下がって3万0530円だった。
これは、何を意味するか。
これが続けば、離農がますます加速されるだろう。
高値をつけたのは、10月23日である。一方、鈴木憲和農相が就任したのは10月21日である。だから、鈴木氏が農相に就任したことが原因で、その結果として米価が下がった、ということになる。
●消費者米価は上がった
一方、消費者米価はどうか。
新農相が就任した直後に、「おこめ券」を言い出した。それを農政の看板政策にした。そして、高市早苗内閣の物価対策の柱に格上げした。
だが、物価対策というのだから、米価が下がるのかと思ったが、それ以後、米価は下がるどころか、僅かではあるが、上がっている。
上がるのは、当然である。需要を刺激すれば、価格が上がることは、市場原理主義である。農相は、「価格に政治は関与しない」といって、市場原理主義の念仏を唱えているが、これは、当然の結果である。
このままでは、消費者のコメ離れは、ますます加速されるだろう。
●消費者米価が上がった原因は市場原理主義農政

上の図は、最先の先物米価をみたものである。それに現物の消費者米価を下に加えた。
この2つの図の縦軸は、同じ対数目盛にしたので、上下への同じ巾の移動は、同じ率の価格変動率になる。
これをみると、先物米価は先月末の高値から僅か1か月たらずの間に、17%も下がった。一方、消費者米価は、物価対策という名前のもとで、おこめ券を配って下げるというのだが、下がらないどころか、かえって上がっている。
これは、市場原理主義の論理的帰結である。おこめ券で需要を刺激すれば、需要量が増えて米価は上がる。この論理を、市場原理主義者の農相は理解できないようだ。そういう農政が罷り通っている。
●思考を停止した市場原理主義
さて、鈴木憲和農相によれば、米価は需要と供給で決まるものだ、という。需要量が多くなれば、米価は上がるし、供給量が多くなれば、米価は下がる、と言いたいのだろう。そうだろうか。
市場のセリ場で見ているだけでは、その通りだろう。だが、それでは需要量はどう決まるのか。供給量はどう決まるのか。そこまで考えが進まない。そこで思考を停止してしまっている。農政に責任を負っている農相が、それでいいのか。
看板政策のおこめ券の場合はどうか。おこめ券を配れば、そのぶん需要量が増えるから、米価が上がる筈だ。それが、農相の信奉する市場原理である。だが、先物市場では、逆に下がっている。これは、いったいどうしたことか。農相にとって不都合なことだが、思考を停止しているから、目をつむっているしかない。
●先物市場は現物市場の先行きを読んでいる
前の図へ戻ろう。
先物市場での米価の値動きだが、実際の米価が先行き下がると予想する人が多ければ、先物米価は下がるし、逆に、実際の米価が先行き上がると予想する人が多ければ、先物米価は上がる。現時点での需給とは、ほとんど関係ない。
図は最近の先物米価は下がっている。だから、米価は先行き下がる、と予想している業者が多いことを示している。
だが、現物市場では、図で示したように下がっていない。何故か。
●現物市場では売り惜しみが出来ない
現物市場でも同じである。実際の米価が先行き下がると予想する人が多ければ、売り急ぐ。その結果、実際の米価も下がる。逆に、実際の米価が先行き上がると予想する人が多ければ、売り惜しむ。つまり、先物市場と同じ値動きをする筈である。
だがしかし、現物の小売市場では、売り手が、米価の先行き上がると予想しても、思う存分に売り惜しむわけにはいかない。毎日売らなければ、顧客が逃げてしまう。
●コメは保管できる
蛇足だが、これがコメと野菜などとの違いである。野菜は、3日後には萎れて商品にならない。だから、4日後には品薄になって価格が上がると予想しても、いま売らねばならない。だから、いまの価格は安くなる。つまり価格は、いまの需給で決まる。
だがコメは、最近の保管技術では、1年後でも品質は、ほとんど劣化しない。古々々米になって、ようやく劣化する。だから、1年後に品薄になって米価が上がると予想できれば、いまは売らない。だから、いまの米価は上がる。つまり、米価は、将来の需給で決まる。それが、先物価格である。
●先物米価は政策で決まる
では、いったい先物米価はどう決まるのか。それは、政策で決まるのである。
政治は、いまの米価を、どう評価しているか。消費者の米離れを防げないほどに高い、という評価なら、下げねばならぬ。しかし、下げれば離農が加速される、という評価なら、上げねばならぬ。
政治は、コメ離れを防ぎ、かつ、離農を止めねばならぬ。この二兎は、追及しなければならぬ。それは、政治の責任である。
そのためには、消費者米価と生産者米価の間の差額を、政治の責任で補填すればいいのだ。それしかない。
(2025.12.02)
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