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【クローズアップ 2024年問題とは】現場の疲弊こそ核心 社会構造を見直す機に ジャーナリスト・北健一氏2024年4月10日

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問いを正しく立てる。言い換えれば課題を適切に設定することが課題解決の一歩である。その理は物流の2024年問題にもあてはまる。

クローズアップ 2024年問題とは

物流の2024年問題とは何か。一般には「運転手の長時間労働を防ぐためのルールが始まることで起きるさまざまな問題のこと」(朝日新聞4月2日付)とされる。他業界ではすでに始まっていた働き方改革の一環、労働時間規制がこの4月からトラックなど物流業界にも適用されたため、運転手が長時間運転できなくなり、運転手不足から物がこれまで通りには運べなくなることが危惧されているのである。

改正労働基準法等の適用で時間外労働(残業)の上限が年960時間になるほか、国土交通省の改正基準告示というルールで運転手の年間拘束時間の上限は3300時間になる。後者の影響についてNX総合研究所は、何も手を打たなければ今年14・2%、2030年には34・1%の輸送能力不足が起こるとし、「農産・水産品」への影響が大きいと予測する。

青森県内の運送業者が、朝8時に会社を出て、午前中荷主を3ヵ所周ってリンゴを積み込み、東北自動車道を通って東京へ急ぐ。荷下ろしを終えるのは午前0時で、拘束時間は16時間になる。だが4月から、1日の拘束時間も最大「16時間」から「15時間」に縮められた。

青森県の宮下宗一郎知事はこうした試算にもとづき、国に特例措置を要望した。規制を遵守したらリンゴが東京まで運べなくなる、青森にとって「死活問題」だというのである(『日経ビジネス』3月11日号)。

物流の現状からすれば、宮下知事の危惧は無理もない。

他方、長距離バスを利用する読者は、中間地点のサービスエリアなどで運転手が交代するのを見たことがあるだろう。出発地から到着地まで、1人が運転したらルールにふれても、途中で交代すれば大丈夫。物流でも、時には荷主企業同士が連携して中継拠点を設け、運転手の長時間労働解消に成功した例もある。大ロットなら、鉄道や海運の活用も考えられ、政府も、昨年6月に打ち出した「物流革新に向けた政策パッケージ」で、そうした改善を推奨している。

クローズアップ 2024年問題とは_02_北健一ジャーナリスト・
北健一氏

ではなぜ、「働き方改革に特例を」という声があがるのか。それは、運送業者の過当競争で運賃が買いたたかれ、物流革新のコストが捻出し難いからである。

運賃の不適切な安さは、トラック運転手の長時間労働、低賃金の元凶にもなっている。全産業平均と比べてトラック運転手は、年間賃金が5~10%低く労働時間は約2割も長い。基本給が低いので、長時間ハンドルを握って埋め合わせしている格好だ。

運転手はかつて、「きついけど稼げる」職業だった。それが「きついのに稼げない」となれば、離職者が増え採用が伸びないのは当然だろう。

過労を原因とする事故が増え過労死も高止まりするなか、労働時間規制は待ったなしだった。年間960時間の残業上限は「過労死ライン」であり、厳しいどころか最低限に過ぎない。

このように見てくれば、「運転手の長時間労働を防ぐためのルールが始まることで起きるさまざまな問題のこと」という2024年問題の定義は書き換える必要があるだろう。「運賃が低過ぎるため労働条件が悪化して人が離れ、物流革新も進まない問題」と。

2021年5月、ドイツのメルケル首相(当時)はこう語った。

「コロナのパンデミックは、社会全体がいつも通り機能するためには、一人一人の仕事がいかに大切であるかをあらためて私たちの前に示しました。もしもスーパーマーケットで働く人がいなければ、トラックのハンドルを握る人がいなければ、私たちはいつもの慣れた形で食べるものを手に入れることさえできなかったでしょう」

メルケル氏があげたエッセンシャルワーカー(社会に必須の現場で働く人)にはもちろん農業者も含まれるが、一面的な規制緩和政策の失敗もあって、その労働条件が下がり過ぎ、現場が疲弊したり人が足りなくなったりしている点こそ核心なのである。感染症は収まったが、大切な仕事の担い手をすりつぶす買いたたきはまだ止まらない。

物流2024年問題は、農業にとってコストアップ要因ではある。だが、現場で汗する者がまっとうに報われるよう価格を適正化するという課題は、農業者も共有しているのではないか。

この30年、日本は、賃金抑制とデフレの悪循環にもがいてきたが、むやみに価格をたたいて現場を苦しめた「コストカット経済」への反省が、政権からもようやく聞かれるようになった。

経済構造を好循環に反転させるため、物流2024年問題への対応は、24春闘での賃上げと並ぶ試金石だ。リンゴ農家も、それを運ぶトラック運転手も、スーパーで売る人も、食べる人も、笑顔になれる解は現場にある。

(あわせて読みたい記事) ・【物流2024年問題】「中継輸送」「モーダルシフト」、「共同配送」を軸に物流効率化 全農グループ (24.4.10)

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