【物流2024年問題】「中継輸送」「モーダルシフト」、「共同配送」を軸に物流効率化 全農グループ2024年4月9日
4月から適用された改正労働基準法ではトラック運転手の残業時間、拘束時間、運転時間などの基準が定められ、トラック運転手の仕事が制限されるようになった。こうした環境変化に対応しなければ全産業平均で輸送力は14%不足し、なかでも農産・水産品では30%超も不足するとの試算もあり(NX総合研究所2022年11月)、農産物を「運べなくなるリスク」が高まってくる。JA全農は物流問題を「2024年の最重要課題の一つ」と位置づけている。今回は改めて全農グループの物流効率化の取り組みをまとめた。
農畜産物の物流はトラック輸送が97%とほとんどを占めるほか、手荷役による荷卸し作業や消費地から遠い産地は長距離輸送が必要となるなどの特徴がある。
物流2024年問題に対応するため60以上の関係団体が自主行動計画を策定、全農も「荷主」として昨年12月に作成、公表している。
そのなかで示している基本的な考え方は、運転手の長時間拘束の原因となる手荷役の多い輸送の効率化への重点的な取り組みだ。
具体的には青果物・花きなど品目別のガイドラインに従って、手荷役を削減するための標準パレットの活用を推進することとともに、▽中継輸送、▽モーダルシフト、▽共同配送の取り組みに力を入れている。
青果物の中継輸送の取り組みでは産地と消費地にストックポイントを配置してJAなど関係産地の活用を推進している。
具体的には県域を越えた広域中継物流拠点である北九州ストックポイント(SP)の事業がある。九州各産地の青果物をこのSPに集積し、出荷先別に荷物を仕分け、トラックに合積みする。これによってトラック便を集約し、積載効率を向上させて本州市場や実需者に効率的な輸送を図る。また、昨年11月に北九州青果が新設した低温物流拠点を利用し、同社の卸売業務利用時間外(12~22時)で中継輸送を実施する。このSPには「端境期の小ロット品目を県域を越えて集約できる」(全農)メリットも期待されている。
大分では県域配送拠点を整備するため2019年6月に大分青果センターを設置し、大分県産青果物の一元配送を始めた。
センターが設置される前は、京阪神市場では産地出荷後2日目に販売していたが、センター設置で夜間に予冷し出荷するため3日目販売へとリードタイムを延長した。ただ、予冷によって品質クレームは激減したといい、市場到着の遅れも解消される効果も出ているという。
同センターでは取り扱い量が増えているため拡張工事を実施、5月17日に竣工式を迎える。
また、RORO船(貨物を積んだトラックやトレーラーが、そのまま自走して乗り込み運搬できる貨物用船舶)のターミナルがあるため、現在、週2便はRORO船を利用して中京・関東へ輸送している。さらに9月稼働予定の新ターミナルと隣接しているという立地を活かし、近隣県域での活用も視野に物流機能を発揮する考えだ。
ストックポイントの整備では、(株)ファーマインドと連携した消費地での共同配送拠点づくりにも取り組み、同社が所有する江東区の青海センターを活用した青果物輸送を推進している。
同センターは大田市場から約9km、豊洲市場から約5kmという立地で複数の市場に出荷している産地であれば、まずは青海センターにまとめて出荷し、そこから各市場へ出荷することができる。
同社はバナナなど輸入青果物の量販店向け配送を担う拠点として熟成加工、リパックなどの機能を持っていることから、これらの機能を活用して国産青果物のコールドチェーン流通の実現を図る。
納品時間は原則20時、乗務員による配送先別仕分けなどが利用条件。ホクレン、あいち県経済連、宮崎県経済連、JAさがが利用している。また、秋田、山形、長野、福岡の全農県本部が利用を検討している。そのほか、市場ではなく実需者向けの配送にも活用されている。
長距離輸送への対応ではJR貨物と連携して米穀を運ぶ「全農号」が運行を開始している。昨年11月から週末のダイヤを利用し東北・新潟・北陸地方の日本海側を走り米を積載、東海・西日本の消費地へ輸送する。月2便の運行だが、週1便の運行も検討している。
共同配送の取り組みは日清食品と連携した取り組みが始まっている。岩手-茨城間の取り組みは、茨城の日清製品工場から即席食品を岩手に運搬、岩手からは全農・JAの倉庫から米穀を積み込み、関東地方の精米工場へ運送する。
福岡-山口間の取り組みは、福岡県から原料用の米を運送、山口県内の日清製品工場で卸し、同一の場所で即席食品を積み込んで福岡県内の日清の倉庫に運搬するというラウンド輸送に取り組んでいる。これによってトラック1台当たりの実車率(走行距離のうち実際に貨物を積載して走行した距離の比率)が約12%高まる見込みだ。
青果物の流通は産地のJAや部会が直接市場に届けている割合が7割前後といわれる。その意味でも物流2024年問題への対応は産地のJAにとって避け通れない課題となる。そのなかで全農は「物流の効率化に向け選択肢を示していきたい」としている。
同時に国に対して物流効率化に向けた「農業施設」「輸送機器」の整備支援と物流コスト上昇などにともなう農畜産物の適正な価格実現も求めていく。
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