農協の店舗廃合と廃校からの集落再生【JCA週報】2020年7月15日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 本田英一 日本生協連代表理事会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「農協の店舗統合と廃校からの集落再生」です。
協同組合研究誌「にじ」2020年夏号に寄稿いただいた山下秀雄氏の報告の一部を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2020年夏号
農協の店舗廃合と廃校からの集落再生
-高知県土佐町石原地区における地域運営組織の取り組み-
山下 秀雄 いしはらの里集落活動センター元集落支援員1. 地域の概況
太平洋に面した四国の南半分が高知県、その四国山地の尾根をたどって流れる、四国三大河川の一つ吉野川の源流域、四国の水がめ早明浦(さめうら)ダムがあり、四国のど真ん中、高知市の北部に土佐町があります。町の東西を国道439号線が走りその西側に私達の住む石原地域があり吾川郡伊野町に隣接しています。(略) 土佐町の世帯数は1931戸 人口3851人 高齢化率44.12% 小中学校生235 名、石原地域の世帯数162戸 人口323人 高齢化率50.46% 小中学校生18名(2019年4月1日現在)となっています。
3. 集落活動センター事業
高知県では全国に先駆けて過疎化や高齢化が進み、2010年(平成22年)の国勢調査でも人口減少率と高齢化率は全国3位と高く、特に中山間地域では厳しい状況にあり2011年(平成23年)高知県集落調査が実施されました。結果、色んな課題がある中、中山間地域で生活する地域住民の思いは、地域への誇りや愛着があり、集落どうしで助け合いながら住み続けたいと言う思いが強かったと言う事です。中山間地域で一定の収入を得ながら安心して暮らしていける仕組みづくり、集落活動センターによる集落の維持・再生支援事業がスタートしました。(略)
4.いしはらの里集落活動センター~いしはらの里協議会
(略)2011年(平成23年)11月15日集落活動を支える拠点づくり「集落活動センター」事業への取り組みについて、各集落3名以上の参加要請を行い、役場産業振興課長、県地域支援企画員より事業説明を受ける。今後さらに参加者を広げ、いしはらの将来について話し合いをする事とする。(略)
5.休止となった石原店ガソリンスタンドの営業再開
一方農協石原店では、2012年(平成24年)4月1日よりガソリンスタンド(GS)が休止となり地域のお年寄りにとっては冬場の暖房、風呂の燃料に大きな不安を抱いていました。GSを何とか再開できないものか、いしはらの里協議会内にGS運営委員会の専門部会を設け研究・検討を重ねました。8月、経済産業省のモデル事業(燃料供給不安定地域対策事業 SS過疎対策事業)に提案、採択となり1850万円の実証事業ができる事になりました。使用期限切れとなった旧農協の給油施設の改修を行い、厳寒期の2013年(平成25年)2月2日GSをオープンさせる事ができました。(略)
6. 合同会社の立上げ
2013年(平成25年)3月27日いしはらの里協議会臨時総会において、法人化設立に向けた取り組みを協議、組織形態が株式会社、合同会社、NPO法人など種々ある中議決権が出資比率による株式会社と違って社員平等で社員の合意で運営されるLLC合同会社で法人化する方向が承認される。(略)
8. いしはらの里協議会~ 未来へ
(略)継続とは力なり、たいしたモノだと思います。集落活動センター事業に取り組んでいなかったなら今のいしはらの元気はなかったと思います。平成30年秋の知事選挙で勇退された尾﨑県政、課題先進県として果敢に諸課題に挑戦、県庁職員を地域に出向させるなど、県庁が、知事が身近に応援してくれる時代でした。土佐町でも役場職員と地域が情報を共有する事で、相互の理解と連携をはかる地域担当職員制度が始まりました。また、集落活動センター事業、地域の小さな拠点づくり事業は、地域づくりを課題とする各大学の先生方にも関心をもってもらい、よく視察研修に訪れてくれる事になりその事が地域にとっては励みとなりました。合わせて学生の皆さんが訪れてくれ地域と交流する中で、地域の皆さんのともすれば閉鎖的な頭をまるくして包容力が生まれ地域の良さすばらしさに気づかされる様になったと思います。高知大学地域協働学部の学生とは4年間のお付き合いとなります。平成29年度生、令和1年度生との交流と学習活動を行っています。
(略)いしはらの里の活動に関心をもちアドバイザーとして長く関わってくれている、地方自治にくわしい奈良県立大学鶴谷将彦准教授いわく、これまで立ち上げに関わってきた私達70歳代を創業者グループ、それを引き継いでいこうとする40~50歳代の若手後継者グループが生まれてきている。集落活動センター話し合いによるこの機能がうまく発展すれば、住民にとってより身近な地方自治が生まれ、役場の仕事や、議員さんの仕事のあり方も変わってくるのではないかとも、地域で元気に過ごしていくためには、やっていく目標と、やっていく居場所がもっとも大事、70歳代にはまだまだ頑張ってほしい、次の世代を引き継ごうとする若者が育ち次の時代を見据えられる事はなおありがたい事です。
9. 終りに
1人ではできない事が、地域皆でやる事によって行政の何らかの支援を得る、自分達で計画を立て実践する、行政が何もやってくれないと言う不満は言えません。頑張る事、そこには喜びがあり、苦しみもあります。
組合員が減り、経営の効率化を求めれば農協の合併や、施設の統廃合もいたしかたないのかもしれません。合併して、農協が撤退し組合の資産は整理されますが、組合員はそこに住み続け、農畜林業で頑張ろうと思えばなおの事であります。整理される資産もその地域にとって見れば大切な資産、組合員の歴史の財産であります、それを有効に使っていくのも地域の知恵なのでは。土佐町でも相川店では女性部による居酒屋が、地蔵寺店では集落営農の事務所に活用されようとしています。
最後になりましたが、協同組合研究誌「にじ」へ寄稿の依頼を頂き、私達の取り組みの一端を紹介する機会を得ました事に感謝申し上げます。
協同組合研究誌「にじ」 2020夏号より
https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
※ 報告そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
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