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コラム:食は医力

【浅野純次 / 石橋湛山記念財団理事】

2016.03.16 
【コラム・食は医力】第82回(最終回)PPKへ向けて一覧へ

 7年前、この連載をスタートしたときの編集部の前書きに「食のあり方について1年間、連載してもらうことに」云々とあります。
 ところがなんとその7倍もの間、駄弁を弄し続けてしまいました。そろそろ店仕舞いの頃かと思い、今回は人生の最後をどう迎えるかについて考えて閉店とさせていただくことにします。

◆理想は老衰で天寿を全う

 理想的な人生の終わり方は人によってさまざまでしょうが、やはり長寿村のスタイルが一番だと私には思えます。
 長寿村といえば山梨県の棡原(ゆずりはら)が有名ですが、かつてここの老人は畑でひと仕事した後、木によりかかってひと休みしているうちに眠るように亡くなることが多かったそうです。
 特段の持病に悩まされることもなく、格別、子に面倒をかけるでもなく、老衰で天寿を全うする。理想的ですね。
 昨今の言葉でいうと、PPKです。ピンピンコロリの略だそうですが、ポックリあの世へ、と言ってもいいでしょう。
 長寿村の研究をしてきた近藤正二、古守豊甫両博士の研究を昔、精読した記憶をたどると、そこには共通した生活スタイルと食のあり方があったように思います。


◆洋風化で「逆さ仏」に

 記憶に残っているのは、規則正しい日常生活、傾斜地での耕作など厳しめの労働、現代の感覚からいうと粗末で少なめの食事、でした。
 食事の内容としては、緑黄色野菜、大豆、海藻、小魚を常食している村が多かったということだったはずです。
 けれど時代の変化とともに、長寿村にも肉類、油脂食品、インスタント食品が入り込み、食の洋風化が進みます。
 特に若者の食生活がそれらにシフトしていったために、親世代より子の寿命が短くなる「逆さ仏」と呼ばれる現象が各地で見られるようになったという報告がされていたのが印象に残っています。
 こうした傾向は、沖縄で伝統食から洋風化が進む中で、長寿県だった沖縄の地位が大きく後退したという事実ともかかわっているのでしょう。
 「貧しい粗食」はいけませんが、カロリー、脂肪、蛋白質の過多は現代病を招き、PPKは望むべくもなくなります。これまでに何度も書いてきたように、緑黄色野菜、根菜、大豆製品、海藻、乳製品、小魚、果物などを多めに取るように心がけたいものです。


◆ポックリ名人をめざそう

 いい生き方、いいリタイア、いい死に方が理想だという帯津良一博士には『達者でポックリ』『ポックリ名人』という面白い本があります。
 その中で、元気よくあの世へロケットで飛び出していくための秘訣が展開されていますが、エッセンスである「帯津式12カ条」を紹介しましょう。
 (1)できるだけ歩く、(2)気功を身につける、(3)旬のもの、地場のものを食べる、(4)好きなものを少し食べる、(5)酒をたしなむ、(6)早寝早起き、(7)いつも希望とときめきを、(8)生きるかなしみ(旅情)をかみ締める、(9)この世は品性を磨くための道場と心得る、(10)折にふれ死を想う、(11)わが弱点をサプリメントで補う、(12)いい場に身を置く 
 どれもPPKにはぴったりですね(特に(5)はすばらしい)。私も片方の本に登場するので、よければお読みいただいてポックリ名人を目ざしてください。
 歳をとってきたら、食べすぎないことは特に大事です。といって貧しい食事、手抜きの安易な食事に陥らないよう心掛ける必要があります。
 いちばんいいのはバラエティに富んだ副菜を少しずついただくこと、これはちょっとぜいたくなテーマですけれども、工夫次第ではできないことはありません。終わり良ければすべて良しを目ざしてがんばってまいりましょう。

  ×  ×  ×

 これでお別れです。永い間、お付き合いいただきありがとうございました。来月から別の形でまたお目にかかれるのを楽しみにしています。

※「食は医力」は食品流通のシリーズから、コラムへ変更となりました。第79回までの掲載については【シリーズ:食は医力】より御覧いただけます。

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