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コラム:農協の現場から

【高山拓郎 JA松本ハイランド代表理事専務】

2017.03.14 
私たちに権力はない、あるのは「助け合い」一覧へ

 「農業」の二文字ほど家族そして地域を思い起こす単語は見当たらないのではなかろうか。そこには地域づくりをしなければとかいった「づくり論」は存在しない。何気ないつながりがこれまでの農村社会を営々と繋いできたと思っている。

高山拓郎 JA松本ハイランド代表理事専務 21世紀にかけて急速に進んだ「情報革命」が私たちの暮らす農村を劇的に変えた。すべてがビジネスという「勝った負けた」論に終始し、小さなおせっかいや何気ないつながりで生きてきた人々の暮らしを大きく変えたとも言える。組織もそうだ。これまでは一定の枠組みの下でゆっくりと小さな改善をしながら仕事をしていれば組織は安泰であった。ルールやマニュアルからはみ出ようとするメンバーがいないか注意しながら「エイエイオー」とチームを鼓舞する軍隊の隊長のようなリーダーシップが求められていた。

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 昨今、JAの金融事業の在り方を巡って様々な情報が行き交っている。そもそもは規制改革推進会議農業ワーキンググループの実態をあえて無視した乱暴な要求が大きな引き金になっているのではあるが、公認会計士監査の義務化を二年後に控えあたかも代理店を選択せざるを得ないという状況にJAが追い込まれつつあるという論に対し、全中や農林中央金庫はどのように応えるのであろうか。

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 JAが経営体としてなすべき優先事項は公認会計士監査に対応できる態勢の整備であることは自明のことであるが、現場にはいまだ戸惑いがあるのではないか。特に内部統制に関しては、業務フロー、業務記述書、リスクマトリックスといった3点セットの整備は必須のものとして様々な情報が発信されており、現実に整備も進んではいる。しかし、運用はどうなるのだろうという漠たる不安が消えることはない。木を見て森を見ないことがあってはならないと思うのだが。公認会計士監査が求めるものは何であるのか手段と目的が入れ替わっていてはならない。

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 同時に、すべてに最優先すべきは総合農協としての価値を組合員の認知レベルを高めることではないか。それは、JAがきちんと組合員に向き合うことでしか解決しない。「これからも自分たちのくらしと農業になくてはならぬ存在である」としっかり声を上げてもらわなければ、わけのわからない勢力に簡単に飲み込まれてしまう予感がする。だが、いつの間にか組合員をお客様扱いして来た活動や事業の実態から声をあげてくれるだろうかとの懸念が消えない。お客様は自分にとって都合が良いか悪いかだけ判断するからだ。心配でならない。

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 農協法改正の折に私は、法を改正してある勢力の意を汲んで自分たちがしたい方向に様々な仕組みを変えていくことのできる「権力」というものに、一抹の恐ろしさを覚えた。

 ではどうすべきなのか。

 私達には権力はない。私たちにあるのは互いに助け合い地域で生きていこうとする「想い」である。想いはことばを通じてしか伝わらないもの。ことばはJAという組織の背骨でもあり、より正確により深く、クリアに通じなければならない。このコラムにも書いたが、JAの会議文化が今のままでは、組合員は「自分の組合」として声を上げることは決て無いだろう。誰が主役なのか、当たり前のことが当たり前にできていなかったことを認識した上で、すぐにでも変えていく必要がある。

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 地域にあって総合農協としてのプレゼンスを高める取り組みは待ったなしである。これまでの取り組みが不十分であった点をきちっと認識すれば、やるべきことは見えてくる。その際必要なことはあらゆる事象を数値化することだ。数字にしないと何も見える化しない。

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 急いですぐやる課題が多すぎて身動きできない状況を脱却して、もう一歩先を見つめながら、JAグループが相互に支え合って一丸となって打開していくべきである。自分の組織さえ生き残ればという発想があるとするならばそれは自滅の道であろう。
 
 「農業の元気づくり」はJAの一丁目一番地。家族あっての農業、家族あっての地域である。
 耕す、植える、肥料をやる、水をやる、見守る、話し合う、感謝する毎日でありたい。長い時間をかけて営々と築かれて来た農村を強者の論理で覆い尽くさせてはならない。

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