野党は統一農業政策を作れ2017年4月3日
国有地の超廉価払下げ問題を、マスコミが連日のように書き立てている。
大阪のド真ん中の国有地を、坪わずか5万円で払下げた、という問題である。政府は、これが妥当な価格だ、と言い張っている。だが、誰もが納得しない。
一説によれば、実質的な売価は坪840円だったという。全国平均の農地価格(畑)は坪3000円だから、それと比べても遥かに安い。
払下げ先は森友学園で、この学園では幼稚園児に教育勅語を暗唱させている。「…一旦緩急アレハ義勇公に奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ…」という天皇独裁を賛美する反民主主義的な教育勅語を、である。安倍晋三首相と同じ考えのようだ。首相夫人の昭恵氏は名誉校長をしていた。
同じような事件が、明治初期にあった。北海道での開拓使官有物払下げ事件である。世論の反発を受けて中止したが、開拓使は辞任に追い込まれた。それだけでなく、この事件を契機にして、1881年の政変が起きた。それほどの大事件だった。
ここで言いたいことは、森友学園事件の詳細ではない。野党がバラバラで政府を追求していることへの批判である。情報が共有されていない。
このことは、農政問題の追及でも目立っている。
農政問題で、各野党が切磋琢磨し、それぞれが独自性を発揮して政府を追及するのはいい。だが、他の野党を出し抜いて功名争そいをするのは見苦しい。それでは、攻撃力を充分に発揮できない。
そうではなく、各野党が情報を共有しあって協議を重ね、一点に攻撃を集中すれば、攻撃力は格段に強くなるだろう。
こうした協議を多方面で積み重ねた上で、野党の統一政策を作り上げ、次の総選挙で選挙協力をすれば、野党が再び政権を奪還することは、充分に可能だろう。
選挙が間近かになってから、急いで政策協定を始めるのでは間に合わない。選挙のための互助会だ、という批判も免れない。
◇
農政分野で考えれば、野党の統一農業政策を作ることである。そのための協議を、今すぐにでも始め、早急に完成することである。
政治の世界は、一寸先は闇だという。いつ衆議院が解散されるかもしれない。その時に備え、日常的な政治活動のなかで、現場で、現場の農業者も交えた協議を、今すぐに始めることである。
野党が、そうした動きを見せるだけで、与党に激震が走るだろう。それだけで、理不尽な農業・農協攻撃を止めざるを得なくなるだろう。そうした実績を積み重ねた上で総選挙になだれ込めば、農村部での勝利は、間違いないだろう。
◇
野党の統一農業政策の根幹には、食糧安保を据えることになるだろう。これは、農業者の身勝手な主張ではない。食糧安保には、食糧の国内生産による安定供給と、食糧の安全性の確保という2つの側面がある。ともに全国民の重大な関心事であり、強い要求である。
これを根幹にした野党の統一農政は、与党の農政とは真っ向から対立する鮮明な旗印になる。与党の市場原理主義農政は、食糧安保を犠牲にして目先の効率だけを追求している。これを全面的に否定する農政になる。対立点は明確である。だから国民は選択しやすくなる。
◇
この農政は、ガットの場で、当時の日本政府が主張した「主要食糧の国内自給」という要求に合致している。また、いまのWTOで主張している「各国農業の多様性の尊重」という要求にも合致している。
隣りの韓国では農業者や消費者の団体が、食糧安保直接支払制度を要求し、大統領選挙の争点にしている。日本の野党も韓国から学んではどうか。
◇
野党には、この農政について、輝かしい成功経験がある。
2009年の総選挙で、民主党が政権を奪ったが、このときの主な勝因は、農政での直接所得補償制度の提案だった。
この農政は、食糧安保を目的にして、食糧自給率を50%に向上することを目指した。そして、それに貢献する老若男女の全ての農家に所得を補償する、というものだった。小規模農家も大規模農家も分けへだてなく、貢献度に応じて補償するものだった。だから、農業者の圧倒的な支持を得た。
◇
この政策は、今でもその輝きを失っていない。この政策を根幹に据えた野党統一農政の、早急な作成に期待したい。
各野党に期待することは、食糧安保の目的を充分に意識した上で、現場での、および国会での協力の、日常的な積み重ねである。それを、次の総選挙での選挙協力の土台にすれば、今の1強政治を打破できるだろう。
不当な農業・農協攻撃を打ち破るには、この道しかない。
(2017.04.03)
(前回 農家の皆さん 今晩は♪)
(前々回 オランダの総選挙で弱者が勝った)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日
-
農水省『全国版畜産クラウド』とデータ連携 ファームノート2024年4月26日
-
土日が多い曜日まわり、歓送迎会需要増で売上堅調 外食産業市場動向調査3月度2024年4月26日
-
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 一時輸入停止措置を解除 農水省2024年4月26日
-
淡路島産新たまねぎ使用「たまねぎバーガー」関西・四国で限定販売 モスバーガー2024年4月26日