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シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2017.10.07 
第31回 「JAにおける業務用野菜ビジネスへの挑戦」一覧へ

―仲野隆三 JA-IT研究会副代表委員によるJA‐IT研究会2017年度人材養成セミナーにおける第3講の紹介―

 仲野隆三氏はかつてJA富里市の営農指導員を経て営農担当常務をつとめられ、JA富里市を全国有数の多彩な野菜産地に育てあげられ、生産、販売、加工等の多彩な分野ですぐれた戦略、戦術を開発、実践されてきた方である。私も、仲野さんが常務をつとめられていた時代によくJA富里市を訪ね、その指導、教育、実践、戦略・戦術の開発に多くのことを教わった。特に、次代を背負う20~30歳代の青年を集められ、夜の7時、8時から夜半にわたる農民塾を開き、野菜産地としてJA富里市はいかにあるべきか、いかなる視点、着眼点に立って、富里農業をいかに改革し、JAの活動をいかに革新すべきかを熱心に説いていた姿がいまでも瞼に浮かんでくる―そういう人物であり今回も、若い参加者に向けて熱意を込めて講義をされた。その要点を核心について紹介しよう。

 まず、総論として課題を紹介しよう。
 「いま、全国各地の農業生産法人や個別経営体を中心に、加工・業務用野菜の大規模区画圃場での栽培、買取販売や契約販売が拡大中である。JA営農経済部門の職員には、作る前の契約交渉、圃場の管理(=営農指導)、実儒者への安定供給(=販売管理)など、加工・業務用需要に対応した取引の総合マネージメント力が求められている。その基礎知識や取引交渉事例を学び、より現場に強い営農指導担当者を目指そう―これが、ここでの課題であり、以下順を追って展開してみたい。

 1.需要の現場で起きていること
 いま、小売ビジネスは「縮小と拡大」が起き、過去のロールモデルは参考にならない。人口の減少と世帯数の増加(一世帯平均2.47人)、女性の社会進出などライフワークの変化が食の簡便性、利便性に結びつき、中食や外食などの給食主体事業を押し上げ、「食の外部化」が進んでいる。それは次のように具体的な変化を促進している。

 (1)生鮮スーパーの惣菜コーナーの拡大⇒テイクアウト(調理品)
   (注):大手は加工専門に委託発注⇒カット加工会社へ
 (2)コンビニエンスストア、加工食品、惣菜、1万9千店舗(ドミナント)
   (注):受発注管理(POSデータ)、工場発送1時間
 (3)生鮮スーパー「カット野菜メリット」⇒利益率/リスク
   ※系列のカット加工及び惣菜調理委託とコスト削減
   ※気象災害に強い「カット野菜」(ミックス...有利)
(4)外食産業⇒給食主体部門「①営業給食と②集団給食」の拡大
(5)加工原料⇒菓子、ジュース、加工食品類など
  ※原料のほとんどが輸入⇒近年は国産原料契約も進みだした。

2.外食産業の市場規模はどうなっているか(参考資料1を参照
 野菜をめぐるビジネスを考えるに当たって外食産業の市場規模の総体がどのようになっているかを正確に認識しておくことが必要である。特にJAの担当者は勉強してほしい。それを示すと参考資料1のようになる。

3.生鮮野菜の生産と需要・消費の変化

生鮮野菜の需要の形態は、家計消費用から加工・業務用に大きくシフトしてきており、需要形態の変化に対応した産地育成と流通体制の効率化が、いまや待ったなしの課題となってきている。その要点とポイントを示せば大要次の通りである。
(1)野菜1人当購入量
 昭和50年の66.2kgから平成23年に56.9kgへと減少
(2)食の外部化
 昭和50年の28.5%から平成23年に44.7%へと大幅な増加
(3)野菜作付面積
 平成10年の50万9000haから平成23年の43万2000haへの減少
(4)野菜生産量
 平成10年の1370万トンから平成23年の1174万トンへの減少
(5)野菜の加工業務割合
 平成2年の51%から平成23年の56%への増加
(6)野菜の家庭消費割合、平成2年の49%から平成23年の44%への減少
(7)野菜の輸入量
 平成2年の95万トンから平成23年の227万トンへの増加
 (そのうち中国からの輸入量は平成2年の95万トンから平成23年の227万トンへ激増。なお、冷凍野菜を含むと400万トン超となる。)
(出典:農林水産省生産及び消費統計による)

4.加工・業務野菜の生産安定と産地の変化―そのなかでの課題は何か―
 以上のような野菜をめぐる状況と構造の変化の中で、加工・業務用野菜の生産安定と産地づくりをどのようにすべきか。
 とりわけ、農業者の年齢の65歳以上が6割を超え、さらに75歳以上が3割を占めるという状況の中でとりわけ、基幹的従事者も180万人と200万人を切るような事態の中で、平成17年度の野菜作付面積は45万ヘクタール(生産量1248万トン)の減少、野菜指定産地もピーク時の昭和46年の1236産地から998産地へと減少するなかで生産流通安定対策が喫緊の課題となっている。
 その対策としては次の5点が提起されている。
(1)野菜指定産地の要件の見直し。「面積共販率、指定消費地出荷」について。
(高齢化で面積を25haから20ha、さらに12haまで減らす、収入保険は選択制へ。価格安定には影響ない)。
(2)加工・業務用野菜の支援として「新しい野菜産地づくり支援事業」の創設
(3)JA共販と組合員の加工・業務「複線型販売」の取り組み。その内容は共販ロットの分荷調整とリスク分散、全農との連携
(4)経営安定志向としての加工・業務契約取引の拡大。作付前に販売先(価格)を決定する。集落法人や個別経営体のメリットを生かす。
(5)カット企業と農業者の契約取引。そのためにJAの人材育成が必要なる。

(以上、仲野氏の講義の前半部分―序論だが―次回に後半の実践理論を展開する予定である)

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