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「不幸の書簡」とストックホルム症候群【小松泰信・地方の眼力】2025年7月9日

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「日本の石破茂首相閣下 親愛なる首相」で始まる「不幸の書簡」の差出人は、ドナルド・J・トランプ米大統領。

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慇懃無礼な恫喝書簡

 日本経済新聞(7月9日付)に掲載されたこの書簡全文において、注目したのは次の3カ所。
 「不幸なことに私たちの関係は相互主義とはほど遠いものでした。2025年8月1日から、米国に輸出されるすべての日本製品にわずか25%の関税を課します。これはすべての分野別関税とは別です」
 「これらの関税は、米国の持続不可能な貿易赤字を引き起こしている長年の日本の関税政策、非関税政策、貿易障壁を正すために必要であることを理解してください。この赤字はわが国の経済、そして実際、国家安全保障に対する大きな脅威です!」
 「あなたがこれまで閉じていた貿易市場を米国に開放し、関税政策や非関税政策、貿易障壁を撤廃したいのであれば、我々はおそらくこの書簡の調整を考えるでしょう」
 まぁ、予想通りとでもいうべきか、トランプが一方的に送りつけた慇懃無礼な「不幸の書簡」に多くの政治家、官僚そして経済人は右往左往。それを観て、全能感に浸っているはず。他方で、7回も渡米した赤沢亮正経済再生担当相赤っ恥。

名ばかり「聖域」の蹂躙が始まる

 日本経済新聞(7月9日付)の社説は、「高関税を武器に、一方的に要求をのませようとするやり方にあぜんとする。トランプ米大統領は自身の関税政策が世界を混乱に陥れ、米国に対する信頼をおとしめている現実を直視すべきだ」と指弾する。
 そして、「米国の輸入品の多くは米メーカーが使う原材料や部品とされる。輸入品に高関税を課せば、かえって米国自身の製造業を弱める可能性がある。(中略)高関税で輸入価格が上がれば、いちばん苦しむのはトランプ氏の支持層と重なる中低所得者である点も改めて指摘したい」と忠告する。
 その一方で、「かたくなに譲歩を拒めば、かえって国益を損ねうる。トランプ氏が特に強い不満を持つ自動車やコメといった分野で、日本として何を守り、何を譲れるのかを早急に洗い出す必要がある」「どの産業にどのくらいの打撃が及ぶか。詳細に分析し、必要なところに必要な支援を届けるのが基本である」と、関税引き下げを目指した取引(ディール)材料、言い換えれば、産業のトリアージに早急に着手することを求めている。
 「何を譲れ」といっているのか、おおよその見当はつく。農業だよね。図星だろ。
 毎日新聞(7月9日付)も、書簡に「関税や非関税障壁を取り除くなら、見直しを検討する」とあったことを受け、日本政府関係者が「米国の狙いはコメだ。トランプ氏はシンボリックなものを求めている」と明かしていることを伝えている。
 「日本は米国産米の輸入拡大案などを検討したが、参院選での農業票への悪影響を懸念した自民の農林水産族が猛反発。経済官庁幹部によると、日本側は参院選の存在をベッセント氏らに伝え、交渉材料として『封印』してきたが、厳しい現状を前に、その議論が再燃する可能性がある」として、日本政府が「聖域」としてきたコメなどの農産品の市場開放の検討を始めたことを伝えている。

先が見通せない産業に人は集まらない

 日本農業新聞は、この5、6月に農業者を中心とする農政モニター1,018人に対し、参院選(7月20日投開票)に向けた調査を郵送で実施した。回答者719人(回答者率70.6%)。
 同紙(7月8日付)の社説は、「政府介入による米価引き下げが進む中、米政策への不安が募っていることが日本農業新聞の農政モニター調査から浮き彫りになった」と分析する。
 その理由として次の諸点があげられている。
①小泉進次郎農相が政府備蓄米の相次ぐ放出に踏み切った。
②農水省が輸入米の売買同時契約(SBS)輸入を前倒ししたことで、9月にも3万トンが国内市場に出回る見通しとなった。
③①②が新米シーズンに出回ることになり、大幅な価格下落が懸念される。
④しかし、米価下落への備えは十分とは言えない。同紙の試算によれば、農産物の販売収入が基準を下回った際に補填する収入保険の場合、2025年産米の価格が現状より4割下落しても、補填が受けられない可能性がある。
 以上より、「先が見通せない産業に人は集まらない」として、「主食である米の安定供給を確保するためにも、政府は新たな経営安定対策をいち早く示し、農家の不安を解消するべきだ」と提言する。

農業者も日本もストックホルム症候群

 日本農業新聞(6月27日付)で報告された当該調査結果において、注目した回答の概要は次のとおりである。
①石破内閣の農業政策について大別すれば、「評価する」37.0%、「評価しない」54.8%で、低評価と判断される。
②生産資材価格の高騰、人件費の上昇が及ぼす農業経営への影響については、「大きな影響がある」63.0%、「やや影響がある」22.0%、「影響はない」3.8%、「分からない」9.2%。85%のモニターに悪影響が及んでいる。
③現在の農畜産物の価格が「再生産価格」の水準に届いているかについて大別すれば、「届いていない」77.6%、「届いている」13.9%。モニターの8割近くが、次期の生産に必要な利益を得られていない。
④国の農業予算規模については、「大幅に増やすべきだ」が69.7%。大別すると93.8%が「予算増」を求めている。
 以上より、農政モニターの農業経営は、生産資材価格の高騰や人件費の上昇に多大な影響を受けているものの、高騰する生産コストを販売価格に転嫁できず、次期の生産に必要な利益が得られていないという極めて厳しい状況に追い込まれている。これは、わが国のほとんどの農業者に共通している。
 当然、現内閣の農業政策に対する評価は低くなるし、現況を打開するためには農業予算の大幅増が必要となる。
 アンケート結果からは、現政権への不満の数々が読み取れる。ところが、参院選比例区での投票先で最も多いのは「自民党」35.0%。これに「決めていない」30.7%、「立憲民主党」13.5%が続いている。
 なんでこうなるの。被害者が加害者に対して好意や共感を抱く心理的現象をストックホルム症候群と呼ぶ。それから解放されない限り加害され続ける。よくよく考えれば、アメリカに対する日本の関係性も同じ心理的現象のなせる技か。被害者の生存戦略として位置付けられるが、利用され、ゆすられ、たかられ、おどされて、最後は奈落の底に落とされる。早く気付けよ皆の衆。

 「地方の眼力」なめんなよ

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