JAの活動:第46回農協人文化賞
【第46回農協人文化賞】「不易流行」で農支援 営農経済部門・熊本県・球磨地域農協組合長 福田勝徳氏2025年7月9日
多年にわたり農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第46回農協人文化賞の表彰式が7月4日に開かれた。
各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載する。
営農経済部門・熊本県・球磨地域農協組合長 福田勝徳氏
熊本県の球磨地域農協(JAくま)は、2011年に当時の未合併農協と合併し人吉・球磨地域が一つになった。当組合の2025年3月末(2024事業年度末)の正組合員全体数は6234人、准組合員全体数は8005人と、近年の住宅関連の融資伸長により、正組合員の減少に相まって准組合員比率が増加している。
2003年当時の当農協管内では、異常気象、度重なる台風襲来等の影響により、農畜産物の不作による減収量、収入減、施設の倒壊による新たな施設への再投資など農家組合員の経営を圧迫し、経営難となる農家が増加した。
当時の不良債権に対する当農協貸倒引当金が20億円を超える状況にあり、理事就任後、当時からの自己改革最重要事項として取り組んだのが、負債に苦しむ農家に対し、独自「農家サポートシステム」を構築・運用し、①個々の農家ごとに再建支援策を提示し、再建策に取り組む意欲のある農家家族を支援農家と位置づけ、作物の選定・作付けスケジュール等営農指導の重点強化をはじめ、金融・購買事業情報を生かした再建策に取り組んだ。②多重債務者の救済として、農協以外の債務整理を優先し、当農協だけの負債に絞り込んだ再建策を策定。③負債増加の要因の一つであった購買未収金の取り扱いを改革し、農畜産物の販売精算代金から直接的に購買未収金へ代金充当が出来るよう、独自システム「農産物控除管理システム」を構築し、購買未収金の適正利用と、残高の抑制など農家の経営に対する意識の改革及び農家経営の改善に取り組んだ。結果、当農協の貸倒引当金が2024年度末では約1億円となるなど、当農協の経営改善に大きくつながった。
一方、2020年7月の豪雨により人吉・球磨地域では45人の尊い人命が失われ、被害面積590ha、浸水・氾濫流被害家屋4811戸、被害額106億円の大規模災害となった。当時、迅速な被害調査及び復旧作業により、再建に向けての共済金支払いが短期間のうちに完了することができ、利用者からの大きな感謝の気持ちを受け取った。
農業資材の価格高騰や高止まりが続くなか、当農協として2011年よりプライベートブランド肥料及び低コスト・省力化資材の普及拡大にいち早く取り組むとともに、23年1月に当農協独自による約1・1億円の緊急農業生産対策支援を実施し、組合員・利用者の生産経費支援に取り組んだ。
TAC職員による青色申告代行記帳内容ヒアリング風景
また、当農協では自己改革の一環として位置づけた「TAC」を2016年策定の活動総合3カ年計画に盛り込み、担い手専任渉外課を新設。ベテラン職員を配置し、地域及び担い手の課題に適した部門につなぐという横断的な体制により、中古ハウスの斡旋や補助事業の活用・支援策の提案など担い手のニーズに対応するとともに専任職員を配置した青色申告記帳代行に取り組み、出納帳作成等申告者の申告データ作成作業の軽減に167件が利用中だ。
茶加工場では、2014年9月ドリンク用茶の試験生産の依頼を受け、現在のドリンク向け工場が完成。当初5件(5・5ha、生葉322t)の工場利用から21件(132ha、生葉1570t)へ利用拡大し、生産者の所得向上並びに労働力削減に取り組むとともに、地域ブランドとして「くま茶」を地域団体商標として登録し、地域の活性化及び、茶園の永続・工場安定経営・JA倉庫の有効活用・工場機能の強化を図るため、25年度中に法人化に取り組む。
また、管内の農畜産物の安定販売と多様化する生産者販売ニーズに対応するため、2021年2月にJAくま直販センターをオープン。営農経済事業の強化面では、収益力向上・収支改善を目的に「営農経済事業の成長効率化プログラム」を22年度より導入した。出向く活動を中心に10項目の事業利益改善事項を抽出し、目標年度(2024年度)の改善効果額の9000万円を達成。今後も、いつまでも変わらないものの中に新しい変化を取り入れる「不易流行」の思いで、農業者の所得増大に取り組みます。
【略歴】
ふくだ・かつのり
1956年10月15日生まれ。熊本県立球磨農業高校(農業科)卒業。1995年4月青壮年部須恵支部長、2005年6月球磨地域農協理事、2014年6月同組合長、熊本県農協中央会副会長、熊本県厚生農協副会長、熊本県経済農業協同組合連合会理事、熊本県果実農業協同組合連合会監事、全国共済農業協同組合連合会熊本運営委員、農林中央金庫熊本委員、株式会社熊本アグリシステム取締役、熊本くみあい運輸株式会社取締役。
【推薦の言葉】
農家の所得向上を支援
福田氏は1995年に農協青壮年部須恵支部長に就任後、青壮年部活動を通じて農協運動に参画した。その取り組みが評価され非常勤理事に就任、農家経営の改善に向けた提案や農協の経営改革に尽力し2014年に組合長に就任した。
自己改革の一つとして独自の「農家サポートシステム」を構築、運用し、負債に苦しむ農家ごとの再建支援策を提示し、作物の選定など営農指導の強化や、金融、購買事業情報を生かした再建などに取り組んだ。2020年の豪雨災害では、自ら被災現場に出向き状況の把握に奔走するとともに、JA職員や青壮年部への復旧作業の指示など的確に対応した。
2021年には人吉球磨管内の農畜産物の安定販売のため、JAくま直販センターを開設した。インターネットによるPR販売など販売力強化と生産者の所得向上に取り組んでいる。
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