LED植物工場で「甘くて栄養価の高いミニトマト」安定生産に成功 東京大学2025年8月25日
東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らの研究グループは、LED光だけで高品質ミニトマトの長期・安定生産に世界で初めて成功。果実と葉に均等に光が届く設計により、温室(土耕)栽培を上回る栄養価と甘さを実現した。多段式ラックと精密な環境制御による省スペース・高効率な次世代栽培技術は、都市農業・宇宙農業への応用も期待される。
図1:LED植物工場におけるS字多段式ミニトマト栽培の実際の様子
同研究グループは、一般的なミニトマト品種(CF千果;タキイ種苗株式会社)を用いて、人工光型植物工場(LED植物工場)における高品質栽培の手法として、従来型のI字栽培と新開発のS字多段式栽培を比較検証した。
I字栽培は茎を垂直に伸ばして1本のワイヤに誘引するシンプルな方式で、S字栽培は茎を水平に曲げながらS字状に多段の棚に誘引し、各層の側面にLEDを設置する方法(図1, 2)。同研究では、LED植物工場におけるトマト栽培が、果実品質の面で温室栽培を大きく上回ることを明らかにした(表1)。
I字栽培・S字栽培ともに、糖度は約15%、ビタミンC含量は約7%、リコピン含量は約7%高く、いずれも温室栽培を超える水準を示し(表1)、「LEDではトマトはうまく育たない」とされてきた従来の常識を覆す成果となった。
図3:トマトの異なる栽培条件における光合成および生育パラメータ
さらに、S字栽培では光を株全体に均等に当てることが可能となり、葉位間における光合成量のばらつきが大幅に改善(図3)した。これにより、果実の糖度が向上するとともに酸度が適度に抑えられ、糖酸比(甘味と酸味のバランス)がI字栽培よりも有意に高くなり、"よりおいしい"トマトの生産が実現(図4)。加えて、株を水平に展開することで、播種から初収穫までの期間も約2週間短縮されるという利点も得られた(図4)。
同研究では1株から最大23段果房の収穫に成功し、長期間にわたる安定生産が可能であることも実証された。
以上の結果から、LED植物工場におけるトマト栽培において、2つの実用的な選択肢が確立された。つまり、①I字栽培は設備改造が少なく導入が容易で高糖度・高リコピントマトの栽培に適する方法である一方、②S字栽培は同様に導入しやすく、高糖度・高リコピンに加え、糖酸バランスが向上し、早期収穫も可能な高付加価値型の栽培法であること(図1, 4, 表1)。
同成果は、都市部の限られた空間での食料自給や、将来的な宇宙農業における果菜類の安定供給の実現に向け、大きな一歩となる。
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