ひこばえと外国産米は主食用供給量に加えられるのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年12月16日
ひこばえ(2番穂)の集荷量では日本一だと自負する米穀業者に案内されて車で圃場や集荷施設を見て回った。圃場と言っても20km四方もあるのだから端から端まで車で40分はかかる。ひこばえの籾摺り真っ最中の乾燥施設には、籾摺りしたばかりのひこばえが入った1トンフレコンが2列にズラリと並んでおり、ざっと40袋ほどある。フレコンから取り出したひこばえの玄米を見せてもらったが、粒もしっかりしており玄米光沢もあり、想像していた品位よりかなり良い。収穫作業を終えた生産者に追肥したのかと問うと「そんな暇はない」との答え。8月に高刈りしたものをそのままにして11月下旬に刈り取ったという。

コメ価格が高騰したこともあって、ひこばえ(2番穂)の収穫作業があちこちで見られるようになった。規模の大きな生産者を回ってみるとほとんどがひこばえを収穫している。中にはひこばえを反4俵も穫っている生産者もおり、貴重な収入源になっている。ただし、ひこばえの収量を上げるために追肥している生産者はほとんどいなかった。
それは訪れた生産者が50haから120haという規模の大きな生産者ばかりで、圃場が分散していることもあって追肥している余裕がないとのことであったが、それでも最低でも反1俵は収穫できるので「今の米価なら採算が合う」(生産者)とのこと。冒頭の生産者の圃場は、ひこばえを収穫した圃場とそのままにしてある圃場があり、収量が見込めない圃場は手を付けていない。水を入れて追肥すれば収量が見込めそうだが、肥料はともかく、水を入れられるようなところは限られている。それでもちゃんと穂をつけるというのだから稲の生命力には驚くしかない。
ひこばえについては農研機構の九州沖縄農業研究センターが再生二期作と言う名称で収量性を上げるための栽培や収穫作業を紹介しているが、長い間ひこばえの収穫を話題にすることはタブーであった。実際に収穫していてもそのことを公にすることはなかった。
その理由は「需要に見合った生産」という錦の御旗の文言を唱え続けてきた生産調整で「増産」はタブーであったからだ。令和の米騒動でこの錦の御旗は降ろされて増産に舵を切ると思われたが、大臣が変わった途端に「需要に見合った生産」という農政復古の大号令がかかり元の木阿弥に戻ってしまった。この「需要に見合った生産」という文言は聞くと一見もっともらしいが、そもそも需要を見通せないから令和のコメ不足が起きたのである。農水省幹部全員が「間違っていました」と謝罪したばかりなのに舌の根の乾かぬ内にまた同じことをやるというのはどういう神経をしているのか?
見通せないのは需要だけではない。供給量も全く分からないというのが事態である。このひこばえさえ供給量にカウントされていない。そもそも生産量を調査していないのだからカウントできるはずがない。調査していないのはひこばえだけでなくもち米も同じである。
もち米は主食用供給量にも加工用供給量にもカウントされているが、その生産量は調査されていない。調査していないのに主食用にカウントしていると統計情報部では明言している。主食用にカウントしていないものの中には外国産米もある。SBSで主食用枠として10万t輸入されているがこの分は主食用にカウントされていない。その理由を農水省に聞くと「SBSで輸入された外国産米はピラフに行くから」との答え。スーパーでカルローズを買った消費者は皆ピラフを作らなくてはならない。ピラフは主食用ではないという農水省が判断しているから冷凍米飯向けに7万tも加工用米が供給され助成金が支給されるという構造になっている。
では、kg341円の関税を払って輸入された外国産米は主食用米の供給量としてカウントされるのか? その答えは「想定していなかったのでカウントしない」とのこと。すでに10万t近くが輸入されているのに供給量にカウントしなければ、的を射た需給見通しが作成できるはずがない。
つまり主食用の需給見通しは、供給面でも需要面でも農水省の恣意的な判断でどうにでも変えられるということである。にもかかわらず、くず米のうち主食用に行く量を確定してみたり、より精緻に実態を把握するという理由で、食糧法を楯に罰則規定がある調査を範囲を広げて行うことにしている。農水省に「そんなに範囲を広げたら益々わからなくなるのではないか」と問うたところ返事が返ってこなかった。
コメに限らず食料の需給見通しを作成するのは行政組織でなくても民間でも大事な作業である。その場合、供給と需要の全体を捉えた見通しでなければ意味がない。恣意的な判断でカウントしたりしなかったりしていてはいつまで経っても信頼される需給見通しは出来ない。
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