暴落に対処するコメ先物市場活用の二つの事例【熊野孝文・米マーケット情報】2025年12月9日
大手卸の社長が新潟市で行った講演で「このままでは暴落する」と発言したことがメディアなどに大きく取り上げられている。すでに市中で取引される7年産米のスポット価格は高値時に比べ1俵5000円がらみ、銘柄によってはそれ以上値下がりしており、下値が見えない状況になっている。
先行きの価格が見えない中でコメ先物市場を活用して暴落に対処、かつ将来のコメ確保のために価格を決定し、その価格を生産者に示せるようにしている大手卸とパックご飯メーカーの二つの事例を紹介したい。

パックご飯メーカーは、自社が使用する原料米の価格安定に先物市場を活用できないか検討した結果、試験的に実際に先物市場で売買することにした。
始めは単純に自社が仕入れるコメに比べ先物市場の価格が安かったことから買いヘッジとして今年の3月18日に堂島取引所のコメ指数の6月限と8月限を2万6000円で買ってみた。
その後、急激に値上がりしたことから7月末に一旦2万9000円で売り戻した。この時点で1俵3000円の利益が生じ、買いヘッジの役割りが果たせることがわかった。次に売りヘッジを実践してみることにした。
これは、このパックご飯メーカーは、生産者との契約栽培を本格的に行う計画で、そのために収量性の高いハイブリッド種や直播に向く品種の種子を無償で生産者に提供して生産されたコメを全量買い取るとという事業を推進することにしている。
生産者からの買い取り価格は面積単位で10a当たり25万円を想定している。ハイブリッド品種が10a当たり10俵以上の収量があればその分1俵当たりの単価が安くなる。その場合、その契約価格より現物市場の取引価格が安くなり、結果的に契約価格が高くなる可能性があるためそれを回避するため先物市場を活用することにした。
具体的には10月23日に堂島取コメ先物の6月限と8月限に3万6460円で売り建てた。追加で8年産米の最初の受け渡し限月になる10月限を3万円ちょうどで売り建てた。12月5日現在の堂島取の引け値は6月限がストップ安の3万0220円になっており、この時点で売り玉を買い戻して手仕舞えば1俵当たり6240円の利益を確保できる(3万6460円―3万0220円)、同じように8月限では6960円、10月限は1730円の利益が確保できることになり、それらを買い戻すことによって現物の価格が値下がりしても差損を埋めることが出来る。
つまり売りヘッジにより価格変動のリスクを回避できることが指数取引であっても可能であることが実際に先物市場で売買することによって明らかになっている。
大手卸の事例は、先物市場でのヘッジという使い方ではなく、生産法人と先渡し取引を行う際に先物市場の価格を活用したという事例。具体的には今年5月1日に新潟県の生産法人と「令和7年産の先物を指標にした契約に関する覚書」を締結した。覚書には①種類②産地銘柄③引取り時点での荷姿④等級間格差⑤引取り時期等を明記した。
価格の設定は5月1日現在で取引された10月限の価格と10月になったときの最終決済価格の平均価格を現物の受け渡し価格にすることにした。5月1日時点での10月限の価格は2万5500円でその後値上がりを続け、最終決済価格は4万0570円にまで跳ねたが、この平均価格である3万3040円で新潟コシヒカリを受け渡しした。
この先物市場の価格を活用した取引のメリットは、生産者が自ら先物市場で売りヘッジすると証拠金が必要になり、納会までの期間に大きな価格変動があると追加の証拠金が必要になる場合もあるなど負担が生じることもある。その点、事前に受け渡し価格を先物市場で決まる価格で行うことだけを契約で交わしておけば、生産者にとっては作付け時点で収穫後の売り先と価格が決まっているため安心だ。
この大手卸は、生産者が次年度の事業計画を立てやすいように先物市場を活用した値決めをしたいとし、8年産では生産法人向けに横展開を図る計画で広く告知する予定。
このようにコメ先物指数取引であってもリスクヘッジ手段や値決めの手段として活用できるのであり、指数は使い勝手が悪いもしくは指数ではヘッジ会計が認められないと言うのであれば、当業者は堂島取引所にはもちろん所轄の農林水産省に対しても自分たちが使い勝手が良いように当限の最終決済が差金決済だけではなく、現物での受け渡しで決済できるように商品設計の変更を申し入れすればよい。
何よりもコメ先物取引市場はコメの産業インフラを整備するために必要なものであると同時に生産者や流通業者、実需者といった当業者のために必要な市場なのだから自らの手で使いやすい市場に変えるしかない。傍観者のように批判ばかりしていても何も変わらないのである。
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