【農と杜の独り言】第3回 コンテストが園芸博の特色 千葉大学客員教授・賀来宏和氏2025年8月25日
前回の本コラムで紹介した通り、2027年に横浜で開催される「GREEN×EXPO2027」は、実に37年ぶりの国主催の国際園芸博覧会です。本紙の「農政・クローズップ」(令和7年5月30日号)に寄稿させていただいた折に、国際園芸博覧会の一つの特徴として「コンペティション」と称される、出展作品や出展植物についてのコンテスト、いわゆる共進会のような競技会が行われることを述べました。特徴の一つというよりも、これが国際園芸博覧会の本質と言ってもよいかもしれません。
千葉大学大学院園芸学研究科客員教授・賀来宏和氏
(2027年横浜国際園芸博覧会 GREEN×EXPO2027 農&園藝チーフコーディネーター)
「GREEN×EXPO2027」はBIE(博覧会国際事務局)認定の万国博覧会にも位置付けられるものですが、現在開催中の大阪関西万博との大きな違いの一つが、実はこのコンテストの存在です。万国博覧会では、各国のパビリオンの出展の良し悪しを競うコンテストが任意で行われることもありますが、コンテストの実施は万国博覧会の絶対条件ではありません。
一方、万国博覧会は本来、多様な分野の産業製品(もちろん農産品も含まれます)や芸術作品などの出品に褒賞を行う仕組みを持ち、それは1851年の世界で最初の万国博覧会である第1回ロンドン万博から実施されています。この出品物に対するコンテストが大きく充実されたのが1855年の第1回パリ万博です。国会図書館の情報によれば、パリ万博を開催したナポレオン三世は、ボルドーワインを農産部門の目玉としてコンテストを実施し、例えば、フランスを代表するワインの「シャトー・ラフィット・ロートシルト」、「シャトー・マルゴー」、「シャトー・ラトゥール」に金賞が授与されています。
万国博覧会の曙の時期に、最も頻繁に万博を開催したのはパリで、わが国が初めて万博に参加したのも、1867年の第2回パリ万博でした。徳川幕府と薩摩藩がそれぞれに出展するという変則的な形で、最後の将軍である徳川慶喜公の弟にあたる徳川昭武公が渋沢栄一を伴い現地に赴いています。そして明治維新後、政府として最初に参加したのが、1873年のウィーン万博でした。
話は一転、オリンピックに飛びます。近代オリンピックの第1回は、1896年、古代オリンピックゆかりの地、ギリシャのアテネで行われましたが、第2回のオリンピックは、1900年の第5回パリ万博の付属大会として実施されています。万博の運動部門の競技会がオリンピックという訳で、第3回のセントルイスオリンピック(1904年)も、セントルイス万博の付属競技会でした。コンテストという仕組みで、万博とオリンピックとの親和性があったからでしょう。やがてオリンピックは、独自の事業として確立し、万博から離れていくことにはなりますが。
さて、国際園芸博覧会に話を戻しましょう。国際園芸博覧会の仕組みが独立したのは第二次世界大戦後ですが、こと「園芸」の分野では、万博の長い歴史の中で、この競争的展示会が営々として続けられていた訳です。つまり、国際園芸博覧会は、「園芸」という限られた分野ではありますが、万国博覧会の当初の理念である、競争的展示会によって優れた製品や作品、ひいてはその出品者の技術や巧の技を顕彰し、世界に広めようという理念を継承している希少な事業と言えます。
また、国際園芸博覧会の「園芸」が意味するものは、狭義の「花き園芸」にとどまらず、「蔬菜(そさい)」「果樹」「植木」から、広く「農産物」全般に亘り、さらにはそれらの組み合わせの「装飾作品」や「庭園」「都市緑化」に及ぶことは前稿で述べた通りですが、万国博覧会の伝統を引き継いできた国際園芸博覧会の大きな特徴であるコンテストに特に注目していだきたいと思います。
欧州の国際園芸博覧会では、多様な栽培植物の単体はもとより、それらの組み合わせによる装飾作品、庭園作品などに様々な賞が授与されます。国際園芸家協会が掲げるガイドラインに沿って、各々の国際園芸博の競争的展示会のルールとなる部門や出品規程等が作られ、各界を代表する専門家などによって審査団が組織され、最高賞の選定にあたっては国際審査団が構成されます。
1990年の「国際花と緑の博覧会」(通称:「花の万博」)では、わが国で初めて、幅広い植物や、それらを組み合わせた作品などに対するコンテストが行われましたが、その成果を受け、現在、国土交通省の主唱により、全国各地の持ち回りで毎年開催されている「全国都市緑化フェア」にコンテストの仕組みが導入され、現在に至っています。また同様に、「花の万博」を契機として、農林水産省の主唱により、「ジャパンフラワーフェスティバル」も始まりました(「花の万博」20周年の年で休止になったことは大変残念です)。
横浜の国際園芸博覧会は、開催期間が限られる一つの催事ではありますが、私は、この博覧会を契機に、「農」を営み、その技術の向上や、よりよい農作物の生産、地球規模での環境変化に対して喫緊の課題となっている新時代の育種などに日々粉骨砕身されている全国の津々浦々の農業人に光が当たることを期待します。全ての国民がその努力と実践に感謝する風土が培われることにより、誇りをもって農業を目指す次世代が誕生することが横浜国際園芸博覧会の一つの開催意義と考えます。
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