2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」【参政党】10年以内に自給率を倍増 神谷宗幣代表(参議院議員)2025年7月9日
「令和の米騒動」を受け、7月20日投開票の参議院選挙では米問題、農政についても注目が集まっている。猛暑の下の選挙戦で、各党は何を訴えるのか。与野党の代表、農政責任者に聞いた。(参政党の神谷代表には食料安保をテーマにインタビューしましたが、その後、参院選日程が決まったことにともない本企画で掲載します。聞き手は(一財)食料安全保障推進財団専務理事 久保田治己氏)
参政党 神谷宗幣代表(参議院議員)
結党は2020年、国会議員は4人ですが、地方議員は140人を超えています。政党として基本の考えをまず聞かせてください。
パフォーマンスだけで国政に議員を出すことはできると思いますが、本当に何十人もの議員を抱える政党になろうと思ったら、必ず地方組織が必要です。地方の方々の声を吸い上げて、それを国会に上げ法律などに反映させていく。このプロセスがないと大きな政党にはなりません。
私はもともと地方議員をやっていました。地方議員は本当に現場をよく知っており、そこを増やしていかないとまともな政治ができないと考えています。
――「日本をあきらめない」と訴えています。その意味は?
失われた30年と言われ、日本の国力がどんどん落ちてきた。グローバリズムが進み、経済の主導権が大きな金融や国際資本に浸食されてしまっていることに我々は危機感を持っています。
その主導権をしっかり取り戻さないといけない。しかし、国民が意気消沈して、そういう大きなものには勝てないという気持ちになってしまっているのではないか。そうではなくやはり諦めないで自分たちの国の未来やビジョンは自分たちで考え子や孫に繋いでいこうという趣旨です。
――今日は食料安全保障がテーマですが、国の安全保障をどう考えますか。
私は国を守る安全保障には3つの段階があると思っています。1つは情報です。情報戦で負けると誘導されてしまう。2つ目が経済戦です。経済を奪われてしまえば、植民地と同じような状況になってしまう。
3つ目が軍事的な安全保障です。今までこの3つ目だけがフォーカスされてきましたが、情報、経済の面からしっかりと安全保障につなげていかなければならないと強く思っています。そこに農業も入ると思いますし、食料安全保障は国防だと考えています。
まず、政治の力でカロリーベースで38%に落ちている食料自給率を倍増させることを訴えています。できるか、できないかではなく、政治の力でやると決めることが大切です。
国民の合意を取り付けて、自給率を倍にする政策をきちんと政権に担わせる。コストをかけてもやると決め、予算をつけていく。農水省もいろいろな計画を立てていますが、全然実現する気がない。なぜなら予算がついていないからです。財務省も巻き込んで農業予算を倍増する。
国防費は倍増しました。私はそのときの国会で防衛予算を倍増するなら、エネルギーや食にも予算を回さないとまったく意味ない、食べるものがなくては戦えない、といいました。国民にしっかり理解していただき、しっかり予算をつけることが先決だと思います。
――農政としては真っ先に取り組むべきことは何でしょうか。
やはり今、不足している米をつくることだと思います。米づくりをやっている方が人数も多いので、きちっとてこ入れをしていかないといけない。お米をつくって食べるというのが日本の国のかたちだと思います。古来からのかたちを崩してしまうと、日本が日本ではなくなってしまう。そのためには新規参入で米をつくってくれる方も育てていかないといけない。ところが、夢と希望がない。
そのために国も農協などと連携し、今までの体制ではもう就農する人がいなくなってしまうので、人材育成の仕組みを、例えば農業大学校に新たに制度をつくり、生産だけではなく経営もきちっとできる人たちを育成し、準公務員の形で所得保障を行うべきだと考えています。もちろん市場原理は働かないといけませんが、最低の所得保障はしますということです。小手先で少し農家にお金を渡してお茶を濁すという段階はもう過ぎたと思っています。
――ただ人材育成には時間がかかり、一方では農家は高齢化でやめてしまう。とにかく当面、水田を維持する対策も重要ではないでしょうか。
もちろんそうです。緊急事態だとして何年間か限定で水田を守る支援をする、その間に抜本的な仕組みもきちんとつくる。場当たり的な延命策ではもう立ち行かないと思っていますから、将来ビジョンを確定したうえで、それまでの間の支援はきちんとするという2段構えが必要です。
ただ、問題なのは予算の使い方の優先順位が、国民の素直なイメージとは違うことです。結局、予算の使い道もグローバリズムが進むなかで利権化し、グローバルな仕組みに対して優先的に予算が配分され、国民の生活に沿っていない。それを自民党が変えないので、我々は新しい政党を作り、おかしい、と言っているということです。
それから今の米価が不当かといえば、これまで安すぎたのではないかと思います。国民は米の価値を軽く見ているのではないか。私も家族と石川県で少し農業をしており、田植えや水管理、稲刈りをしてみると米1kgが300円、400円では安いのではないかと思っていました。一方で例えば低所得者が買えなくなっているのであれば、それは政府が補助し供給をしてあげればいい。
――米の価格は30年前に戻っただけという指摘もあります。ただ、30年前と違うのは、今の米価に耐えられない消費者の所得水準ではないかと思います。
国民所得が下がっているのは非常に問題だと我々はずっと言ってきています。米が高いと言っていますが、実はそれぐらい国民が貧しくなっていることを国民自身が分かっていないということだと思います。
国会で指摘しているのはいまだに日本の経済が世界2位だったころの感覚で国際援助などをしていないか、ということです。それを削らないでお金がないと言っていては国民負担率は上げるばかりです。ないのであれば外に出すものを削ってまず国民の生活を大事にしろと言っていますが、それを政権与党がやってこなかった。
結局、行き過ぎた株主資本主義が国民を貧しくし日本を弱くしている。グローバル化した国際経済の問題を理解する必要があると思っています。
――参院選に向けた農業政策は?
3つの重点政策として、①教育・人づくり、②食と健康・環境保全、③国のまもり、の3本の柱を掲げてきましたが、「食」についてはさらに深堀して以下のとおりHPにも掲げています。
食料自給率100%を目指し、大災害や有事でも国民が飢えない国づくりをめざします。我が国の食料自給率(カロリーベース)は、わずか38%と先進国では最低水準となっている。この状態では有事による海上交通路(シーレーン)封鎖があれば、国民の半数以上が飢餓状態に陥るという試算もある。いかなる場合でも、最低限の食料を確保できるよう、10兆円規模の予算をかけ10年以内に自給率を倍増させ、2050年には100%達成を目指すなどです。
――改めて農協に対する期待や課題をお聞かせください。
やはり農業協同組合ですから、農家の方々を豊かにすることを最優先にしないといけない。しかし、全国組織を持っていながら、農家がこれだけ減って衰退していることに農協の責任もありますね、と私も発言したことがあります。ただ、だからといって、解体すればいいかということではなく、むしろせっかく全国にネットワークがあるわけですから、それをいかに農家のために使うかということを考えなければいけない。
例えば金融にもかなりお金を使っておられますが、それで儲けた分が農家の支援に回っていればいいですが、農協には利益が行くけれども、農家の所得が下がっているということになると本末転倒です。
ですから何を主として何を従とするかを明確に宣言して、政治と同じで結果につなげていくことが大事だと思います。
日本の農業が衰退してきたのは日本の政治が悪かったからだということを我々政治家も踏まえ、これから責任持っていかなければなりませんが、農家が今疲弊しているということについては農協としても振り返るべき点もたくさんあるのではないかと思っています。
ただ、私は農業協同組合を解体しろという話には大反対で絶対に残さないといけないと思っています。民営化すれば国際資本に持っていかれますから、死守しなければいけない。しかし、今までのやり方はどこかで変えなければいけないと思いますが、農協改革だけでできるものではなく、やはり政府のあり方も変えないといけない。それをやろうという人たちで新たな運動を起こしていかなければならないと考えています。
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