JA全中会長候補が所信説明2015年6月25日
JA全中の役員推薦会議(廣瀬久信議長)は6月23日に全中会長候補者の所信説明会を開いた。
所信説明会では奥野長衛・三重県農協中央会会長、中家徹・和歌山県農協中央会会長の順に所信説明をした。
会長選は全中代議員による投票が7月2日まで行われ、同日に開票し役員推薦会議で得票数の多い候補を「推薦者」として決定する。7月17日の役員推薦会議で会長以外の役員候補者を決定し31日の理事会で総会提出議案を決める。新会長は8月11日の臨時総会で選任される。
【所信説明の概要】
○奥野長衛氏
JAグループにどんな課題があるのかを考えるとまずは米の問題だ。27年産がもうそろそろ、お盆前から収穫が始まる。そのときに26年産の低い水準のままの価格で27年産米の価格設定ができるのか、非常に難しいタイミングになっていると思う。飼料用米も60万トン計画していたが35万トンということでなかなか思うようにいっていない。民間流通在庫も200万トンを超えていて大変に重たい。これに対して緊急に何らかの手を打つ必要があると考えている。
もうひとつはTPP。TPA法案の審議はもう少し時間がかかると思っていたが、速いスピードで審議が進んでいる。これは大統領府が各議員に向けてTPPの進展の状況の閲覧を許すということをやった。日本では権限をいただいていないが議員に閲覧を許すという結果ではないか。相当、アメリカにとって有利な内容になっているのではないか。だからあれだけのスピードでTPA法案の可決まできたのかと考えていて、これが現実になると大変、畜産農家を含めてますます重い課題になるだろうと思っている。
もうひとつ忘れてはならないのは東日本大震災からの復興、これがまだまだ道半ばだ。これについては協同組合人としてしっかりした支援体制をとっていきたい。
そのようななか、農協法改正法案が国会で審議されているが、最終的には衆議院を通り、参議院を通るのであろうと思っている。そのなかでとくにこの間、声高く言われたのが、農業、農協の改革、農家所得の増大、地域の活性化だ。政府から強く求められている。
しかし、現実の現場にいるとそんなに簡単にいくものではない。今まで精一杯やってきてこの程度、これにまだまだ精一杯やってどういう結果が得られるのか、大変難しいものがある。
自己改革が自分たちの力でできるのだろうかという疑問を持っている。日本の歴史をみると黒船が来ないと自ら変われないという性質を持った民族ではないかと言われているが、今回の政府、規制改革会議から突きつけられたこの問題はJAグループにとっての黒船であると思っている。
これにどう対処していくのか。今のシステムでそれに対応できるのか。そのことに疑問を持った。今のシステムは全中をピラミッドにした地方統制というか、東京を中心にした体制が取られていることは周知のとおりだ。そのなかでいつも表面に出てくるのが全中。まずは全中が外に出てくる。基本的に間違っているのではないかと思っている。 協同組合というのは政治運動でもなければ思想運動でもない。いかに事業を大事にするか、そこに尽きると思う。事業をやってその事業にどれだけ多数の方々に参加していただけるかどうか、それが本当の意味での協同組合の真価だと思う。その考えからいえば、いろいろなことについて事業連が表に出てくるべきと考えている。米の問題についても、農政という重い問題はあるが、やはり全農が頑張っているというところも見ていかなければならない。本当に表に出てきて仕事をするのは事業連だという考えを持っている。そういう事業連の間をきちっと結んでいく、横糸を持って紡いでいく仕事をするのが中央会の仕事だと思っている。
私流の表現でいうと、歌舞伎の舞台で俳優が踊ったり芝居をしたりするが、その介添えとして黒子が付いている。あくまでも黒子、中央会はそういう黒子役だと考えている。各事業連が事業をしやすいように、JAが事業をしやすいように考えていく、それが本来の中央会の仕事ではないか。そういう意味ではっきり申し上げれば、今の全国中央会をピラミッドの頂点にしたJA組織のあり方というのは本当に改めないといけないと思う。いろいろ考えたが、自己改革というような生易しいことではない、これは改新だ。改めて新しくするというぐらいの決意を持ってあたらないとこの体制は変わらないと思っている。そういうことで「大化の改新」ならぬ、「平成の改新」という言葉を使わせていただいた。改新という言葉にはそういう思いがこもっている。トップダウンではなく、この組織は必ずボトムアップをきちんとやらないとこれからの世界に生き残っていけないと確信している。
もうひとつは政治との向き合い方だ。政府といえばわれわれにとっては農水省。JAバンクの場合は財務省、金融庁、厚生連の場合は厚労省が絡むが、おもな相手は農水省で、農水省と対立することではない。農水省ときちんと話をしながらいろいろな政策の実現をはかっていくことがいちばん大事なことではないか。どれだけ話し合いがなされたのか疑問を持っている。このことについては注力していきたい。
政治家との距離だが、われわれを理解し支持してくれた政治家もたくさんいる。しかし、大部分の政治家というのは今の農業の実態をあまり知らない。三重県出身の若い議員たちに話をしてもあまり農業というものに関心がない。それは私どもが地域で自分のところから選んだ議員に対して教育活動をしなければならない。今の農業はこうなっていますよ、そういう理解だけでも持ってくださいというような政治との向かい合い方が大事だと思っている。
政府、政治家との対立ではない。ともに手を携えて日本農業の将来のためにどうしようかという話し合いを大事にしていきたいと考えている。
そういう意味でJAグループに求められている機能はまずはボトムアップだ。各地域で組合員や住民が何を考えているのか、日本全国広いからいろいろな考え方があるが、それも含めて吸い上げるシステムが今はない。これを早急につくりたいと思っている。そのためには徹底した話し合いをする。民主主義の実現というのは大変な時間と費用、手間がかかる。しかし、本当の大衆の声をくみ上げていくという努力がいる。これがいちばん大事だと考えている。
たとえば、准組合員の利用制限の問題が突きつけられた。そのときにわれわれの対応はどうだったのか反省をした。これから大変なことになると騒いだだけで、本当は組合員の事業を利用している准組合員の方が、この事業が便利だから使っているんだ、それに対して政府が制限を加えるとはどういうことなのか、という本当に下の、草の根の声が上がってこないといけない。そういった運営の仕方に切り替えていきたい。根本的にボトムアップ形式に切り替える。そういう意味で「平成の改新」という言葉を使った。私のそういう熱い思いをみなさんの胸に届けたいと思うし、届けられたらありがたいと思う。
○中家徹氏
高校を出てから、農業をやるのであれば農家の組織である農協で勉強をしてはどうかという話をいただき地元の農協で勉強し、その後、新たに協同組合学園を開設するということで、開校と同時に入学した。3年間勉強したが、当時、全中会長だった宮脇朝男氏から協同組合の崇高な理念に基づく農協運動の素晴らしさ、このことを徹底的に教えられた。農協運動の原点は単協にあるということから、地元に帰り今日まで農協運動に携わってきた。
今、JAグループは農協発足以来の大改革が求められていて、まさに重大な危機意識を持ってことにあたらざるを得ないと思っている。
JAグループは3つの危機があり、今回の農協改革はそれに輪をかけたのではないかと思う。
1つは農業・農村の危機、もう1つはJAの組織、事業、経営の危機。3つめが協同組合の危機だ。この3つの危機をいかにして脱していくかがわれわれに課せられた課題だと思う。
1つめはまさにわれわれの自己改革の実践。つまり、農業者の所得増大、需要にあった農業生産の拡大、地域の活性化、このことをどう実践して成し遂げるか。
全国に多種多様な農業、地域実態がある。単協がそれぞれの実態にあったかたちで取り組んでいかなければならない。都市農業もあれば山間地の農業もある。山間地ではライフラインを守るために採算が合わなくてもJAの使命として取り組まれている。しかし、営農、経済事業は自分の単協もそうだがJAにとっては非常に採算が合いづらい、収支が伴わない。したがって農業・農村の危機を打開するためには何といっても重要なのは、中央会・連合会の可能な限りの支援だ。
もう一点は農政。政治の力なくしてなかなか成し得ない。今まで単協が一生懸命に農業振興に関わってきた。しかし、現実はこういうかたちだ。それをいかにもJAが農業振興に力を入れなかったから農業が疲弊したとばかげたことをいう方がいる。決してそうじゃない。必死になって取り組んできたはずだ。しかし、政治やいろいろな問題があってこういうかたちになっているので、もっともっと農業を政治のなかで高めていただきたい。農業は生命産業だ。それに対してもっと高めていただく、そしてそのための提言活動を強化する必要があると思う。
TPP問題がある。あるいは震災復興も道半ば、米価の問題もある。持続可能な農業の実現。そして画一的ではなく、地域の実態に合った農政の提言を一層強めていく必要があると思っている。農政連の組織があるが、これは将来的にはやはりJAグループとは切り離したかたちで行くのが望ましいのではないかと感じている。
2つめの危機に対しては、JAの組織基盤を強化して事業量を確保して経営を安定することだ。JAの健全経営なくして農業振興はない。JAによってはその心配のないところもあるかもしれないが、地元の農協をみるとやはり組織基盤が弱くなっていると認識をしている。組織基盤を強化する方法は二通りあると思う。
一つはいかにして女性や青年の組合員加入促進をするか。総合ポイント制度を入れていかに組合員のメリットを出すか。いわゆる量的な拡大、基盤の強化がまず重要だ。 もう一点は質だ。いかに増やした組合員さんをどうパイプを太めて結集力を高めるか。これが質的な強化だ。そのためには教育文化活動がひとつのツールになると思う。支所なり、事業所を拠点としたさまざまな活動を展開して、やはりおらがJAだと、JAに集う組合員をどう作っていくか、非常に重要なことではないか。量と質の両面から基盤を強化する。そして事業量を確保して経営を安定させることが重要ではないかと思っている。 今回の農協改革のなかで准組合員の事業利用規制の問題があった。准組合員の事業利用は大変な力を持っていると思う。今後とも准組合員については重要な位置づけが必要だと認識している。5年後の見直しという議論もあるが、正組合員はもとより准組合員からもわれわれにとってはなくてはならないどうしても必要な組織、JAであるというかたちにしていくことが、見直しに対峙していくいちばんの方法ではないか。
3つめは協同組合の危機だ。協同組合らしさというものがだんだん薄れていっているのではないか。2012年国際協同組合年で世界的には協同組合が高く評価されているが、残念ながら日本はその逆ではないか。改めて協同組合の重要性なり必要性を訴えていく必要があると思っている。
農協改革の議論のなかでも、いわゆる協同組合の正しいあり方、あるいはJAが果たしている役割を本当に正しく報道されていたかといえば決してそうではない。やはりきちんと正しい報道をしていただいて、そしてそのことをもってきちんとした世論を形成していくということが大事だと思っている。世論というのは非常に大きな力を持っている。もう一度、われわれのやっていることを正しく伝えて、正しく国民のみなさんにご理解をいただくことが必要ではないか。そのためには改めて広報戦略を立て、JAグループあげた統一広報が問われるのではないかと思う。
それとともに協同組合運動者として、協同組合的な発想のできる役職員がだんだん少なくなってくるのではないかという危機感も持っている。改めて組合員に対して、協同組合とは、農協とはこうだ、ということを自信を持って語りかけ理解をさせるために、教育の充実強化が必要ではないか。 社団法人になる全中のあり方は、従来の延長線上ではない。いわゆる解体的に出直すことになる。少なくとも組合員やJAの意思に基づく結集軸として新たな全中をどうつくりあげていくか。そのためには役職員がまず危機感を持つ。そしてそれぞれの意識を変える。JAビルも汗の結晶できたという認識が必要ではないかと思っている。組合員なりJAの声を積み上げて真に求められている全中の役割、機能は何かということを整理し議論を深めてJAグループ全員が共通認識を持つことが重要だ。
もう一点は全国連間の一層の連携強化だ。組合員、JA、そして県段階、全国段階の縦軸と、各連合会、中央会の組織、縦横の血流を良くして総合力を発揮していくことが重要だと思っている。どちらが会長になったとしても組織が結集してJAグループが一枚岩となって山積する課題に立ち向かう、難局を乗り越えていくことが必要だと思っている。
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