TPP交渉、甘利大臣「7月末リミット」を強調2015年6月26日
米国議会の上院で大統領に貿易促進権限を与えるTPA法案が可決したことを受けて、甘利大臣は6月25日、「いよいよ12カ国閣僚会合で大筋合意に向けて大きな前進になっていく」と述べ、米国の来年に向けた大統領選挙の動きなどを念頭に大筋合意は「7月いっぱいがタイムリミットだと捉えている」と強調した。
しかし、米国と協調したアジア太平洋地域での通商ルールづくりの主導権確立のための拙速な合意は認められるものではなく、農産物重要5品目などについて「10年をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」とした国会決議の遵守が重要になる。また、国会決議は交渉状況について国民への十分な情報提供も求めていることを忘れてはならない。
甘利明TPP担当大臣は「TPA法案と関連する自由貿易によって発生する失業の対策であるTAA法案もまもなく可決するだろう。そういう環境が整えば大統領は法案に署名されると思っている。そこまでことが進んでいくと、いよいよTPPの12カ国閣僚会合で大筋合意に向けて大きな前進になっていく」と述べた。
そのうえで、オバマ大統領が法案に署名したら、日米の事務折衝を開始する方針を示し「残された課題を速やかに処理をして12か国閣僚会合、その前の首席交渉官会合に臨めるように環境をつくっていきたい」と述べた。 また、大筋合意については「7月いっぱいがタイムリミットだと捉えている。おそらく多くの国がそういう感覚でいると思う。夏休みに入るぎりぎり前に12か国の合意を図って、最終的に署名に至るという手順をふんでいきたい」との考えを示し、その理由として「選挙を抱えている国もある」として米国の大統領選挙に向けた動きが秋以降は本格化し、議会での承認を得ることが難しくなる見方を示した。
かりに合意に到った場合は、「臨時国会に間に合えば、迅速に対処したほうが議会に対して親切だと思っている」と話し、夏に合意、署名すれば秋の臨時国会にも批准を求める考えを示した。
ただ、国会審議となれば合意内容についての情報公開が一層求められることになる。衆参両院の国会決議でも「交渉により収集した情報については国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること」も遵守すべき7番めの項目に上がっている。
この点について甘利大臣は「秘密保持契約を結んでいる以上は、その基本路線で行くということ。どこの国もおそらく議員が知りたい(関税削減等の)譲許表にはアメリカも含めて(閲覧)させてませんから、結局、日本としては今までも丁寧な説明をかなりしてきた、ギリギリの。それをどこまで丁寧にやって対応できるかというアプローチのほうが適切だ」と述べるにとどめ、情報開示に向けた新たな対応についての考えは話さなかった。 一方でTPP協定については「基本は通商協定。ただ、関税や非関税障壁以外の広範なルールについて新たな質の高いスタンダードをつくろうという試み」だと指摘し、これを米国とアジア太平洋地域で築くことができれば「間接的に安全保障上の安定に資することも期待されている」「だから、締結を、と思っている」と安全保障に貢献すると強調した。
交渉は秘密のまま進めれていることに変わりはなく、国会決議が実現されるかどうかも不透明だ。一方、大詰めの段階に来て、これは安全保障のためにも妥結が必要、と迫る。政治が打ち出す構図に厳しい目を注ぎ続ける必要がある。
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