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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2016.01.04 
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 新年、おめでとうございます。
 昨年は、農協運動にとって分かりやすい年でした。農協運動の目的を反TPPの一点に絞り、組合員の全員が心を合わせ、そこへ向かって運動を集中してきました。そして、この運動は労組や生協や医師会の地方組織にまで広がり、共同した運動になりました。地方の経済界もこの運動に加わりました。
 今年はどうか。どうも分かりにくい年になりそうです。地方からは、反TPP運動を継続しよう、という意見が伝わってきます。
 その一方で、東京からは、TPPは大筋合意したのだから、反TPP運動はやめて、TPP対策を充実させる運動に転換しよう、という意見が発信されています。
 今年は、TPPをめぐって地方の意見と東京の意見がねじれ、農協運動の目的が、1つにまとまらずに混乱するおそれがあります。この混乱は、早急に収拾しなければなりません。

 今朝の新聞報道によれば、農協組合長アンケートで、全国の農協組合長の92%が、TPP大筋合意で「国会決議は守られていない」と答えています(日本農業新聞1.4)。
 その一方で、昨年の暮れ、全国の農協の代表者である全中会長が首相と会談しましたが、その時、TPP対策に「お礼を伝えた」そうです(日本農業新聞12.26)。まだ、TPP合意を国会が批准していないのに、です。
 お礼を言われた首相は、全国の農協はTPPを容認した、と考えたでしょう。農協の反TPP運動は終わった、と考えたでしょう。
 このやりとりを知った地方の農業者は、怒っています。10月の全国大会で「国会批准に向け...引き続き運動を展開していく」という特別決議をしたばかりだからです。
 農協運動の主要な目的についての、このねじれは、一刻も早く解消しなければなりません。

 昨年の暮から、東京にいる農協関係者の一部からも、そうした言動が聞こえてきます。国際化は時代の流れだから逆らえない、国際競争は避けられない、TPPは決まったことだ、などという言動です。だから、農協は反TPP運動をやめるべきだ、そうしないと倒閣運動になって、その結果、玉砕することになる、と言って地方の農協の仲間を脅しています。
 これは、農協もTPPを容認せよ、という財界を発信源とした恫喝に怯え、それに屈服しようという主張です。
 この主張に従って、反TPP運動をやめたら、どうなるか。有利なTPP対策の獲得だけに運動の主力を注いだら、どうなるか。現場の農業者の苦悩が解消されるでしょうか。
 地方の現場には、後継者不足、高齢化、農地の荒廃、などなど多くの深刻な問題をかかえています。これらは全てTPP問題に起因しています。だから、地方の農業者は怒っているのです。

 反TPP運動をやめて、有利なTPP対策の獲得運動に転換せよ、と主張するのなら、それで農業者の苦悩が解消される、ということを論証すべきです。それは、目先の苦悩の解消だけでなく、長期にわたる苦悩の解消でなければなりなせん。しかし、論証しようとしません。そして、論証なしの、そうした主張をくりかえし、運動を混乱させています。
 農協は、一部の農協関係者の、こうした主張にまどわされることなく、農協大会で決議したように、反TPPの強力な運動の展開に邁進すべきでしょう。
 それが、新年の最重要な課題でしょう。
 地方と東京の農協運動のねじれを解消することは、全中が当面する最重要な責務ではないでしょうか。その責務を果たせるような組織にすることをこそ、いわゆる自己改革の中心に据えるべきではないでしょうか。
(2016.01.04)

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