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【小松泰信・地方の眼力】強欲資本主義からの脅迫状2017年1月11日

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【小松泰信 岡山大学大学院教授】

 山本農相は本紙における年頭あいさつで、農林水産業の成長産業化、「強い農林水産業」と「美しく活力ある農山漁村」の実現に向けて、政府の新たな農業改革方針である「農業競争力強化プログラム」に盛り込んだ改革を確実に実現する、と語っている。

◆農林水産物輸出の勢いに陰り 

 さらに日本農業新聞(1月6日)によれば、農相は農水省職員への年頭訓示において、「オランダは日本の国土の10分の1の広さだが世界第2位の農産物輸出国だと指摘した上で、『オランダを追い越すことを真剣に目指したい』」とも語っている。
 しかし読売新聞(1月4日)は、「農林水産物・食品の輸出額は15年は7451億円と3年連続で過去最高を更新したが、16年は1~10月の累計で前年同期比0.1%減の6023億円にとどまり、急ブレーキがかかっている」ことを伝え、「19年に1兆円」という政府の目標を達成するための課題として、〝輸出先や品目の拡充〟や〝輸出に適したインフラ(基盤)の整備〟などをあげている。とくに前者については興味深い。前述した15年の輸出額(7451億円)を品目別に見ると、トップ3はホタテ(590億円、7.9%)、日本酒などアルコール飲料(390億円、5.2%)、真珠(319億円、4.3%)。大きく括ると、水産物が約4割、菓子など加工食品が約3割。しかし、政府筋が本命と考えている農畜産物は2割弱(牛肉など畜産品約6%、穀物や野菜・果物それぞれ約5%)である。輸出先別では、アジア約74%、北米約16%、欧州約6%、となっている。これらが、〝輸出先や品目の拡充〟を指摘する根拠である。そして「日本の農政は戦後長らく、国内需要を国産品でまかなう『守り』に注力してきた」ことを低迷の理由にあげたうえで、「象徴的なのがコメだ」とする。

◆輸出に多くを期待すべきではない 

 結論から言えば、農畜産物の輸出を鉦や太鼓で推進することには反対である。理由は二つ。
 一つは、強固な食習慣の壁にはね返され、期待ほどの成果を得られないと推察するからである。冷静に、現在のそしてこれまでの自分自身の食生活や食卓の情景を思い出してみよう。食材も味付けも調理方法も急には変わらない、ということに気付くはずである。長い年月を経て、その国の、その地域の、そして家庭の味付けや調理方法などに馴染んだすえに、食卓に定位置を確保することになる。しかしそのことは、それまで食卓に上っていた農畜産物が退場したことを意味している。その生産者や生産国も捲土重来を期すはずである。少しばかり、他国の富裕層から「和食」が評価されたからといって、輸出攻勢をかけたり、わが国の成長戦略の要に据えるのは思い違いである。
 もう一つの理由は、食をめぐる国内情勢である。すでに拙稿(農業協同組合新聞、2016年6月30日)で示したが、2014年度の国民1人・1日当たり総供給熱量2415kcalに食料自給率39%を掛けて算出した自給供給熱量は942 kcalである。この値は、一般成人の女性で約1200kcal、男性で約1500kcalとされる基礎代謝(生きていくために必要な最小のエネルギー代謝量)を下回っている。このことは、わが国が成人の基礎代謝すら自給できていない国であるという、危機的な事実を突きつけている。さらに、フードバンク、フードドライブ、子ども食堂などに象徴される、貧しい食生活を強いられている〝食料弱者〟も増加している。これらの問題に目をむけず、輸出拡大にひた走る政府の姿勢は、無責任極まりないものといっても過言ではない。故に、読売新聞が伝える「日本の『胃袋』は小さくなる。世界に輸出しなければ、やっていけないのは自明の理」という小泉進次郞氏の発言は、極めて一面的な認識しか持ち合わせていない現政権の農業観を象徴している。

◆輸入増への備えを着実に

 このタイトルで展開される新潟日報(1月5日)の社説からは、農業県が輸出に可能性を見出すことよりも、輸入拡大がもたらす悪影響への対応策に苦慮していることがうかがえる。
 「遠からず輸入増加という難局に行き当たる可能性は大きい。備えを怠ってはならない」と警鐘を鳴らし、「このまま耕作放棄地が拡大すれば、自給率を25年度に45%にする政府の目標を達成するのは難しくなる見通しだ」と、改善の兆しが見えない自給率の現状にも危機感を募らせている。
 そのような状況の中で、生活協同組合における、「新潟の食と農を守ろうと、県内の農産物を中心に共同購入し、宅配する動き」に注目している。消費者と生産者の顔が見える関係構築は、両者にとって納得できる品質の農畜産物の取引を拡大させる。それは地域経済に好循環をもたらし、地域を活性化させるはずである。このような観点から、農業を取り巻く課題解決の糸口となることを願って、生産者と消費者の協働による地産地消の拡大に期待を寄せている。

◆強欲資本主義からの脅迫状と『闘うもやし』

 ところが、「保護主義を強めれば、雇用や生産が復活し、自国民の生活が楽になると考えるのは、短絡的だ。自国市場を高関税で守れば、消費者は割高な商品の購入を強いられる。他国が対抗策をとれば、輸出産業も打撃を受ける」(読売新聞1月1日)、「グローバル化を止めようと輸入品に高関税をかければ悪影響は計り知れない。最大の被害者は庶民だ。日用品の価格が大幅に上昇するからだ。世界的な部材の供給網を活用して製品を生産している国内企業も打撃を受ける」(日本経済新聞1月6日)とのこと。社説子には、地産地消などによる輸入増への備えは、保護主義的な悪あがきに映るだろう。
 冷静に見るがいい。自由貿易圏のトップ集団をキープしてきたわが国において、自由貿易から得られた利益は一握りの富裕層を潤わせる一方で、格差を拡大させ、貧しき人々を拡大再生産している。庶民・消費者を最大の被害者にしているのは新自由主義に基づく強欲資本主義である。だとすれば、これらの社説は、庶民・消費者を出汁に使った強欲資本主義からの脅迫状そのもの。その書き手らには理解不能かもしれないが、次の一文を送ることにする。もちろんあのセリフも添えて。
 「怪しいもの、常識外れに安いもの、そんなものには疑いの目を向け、できればそれを拒否してください。でなければ、みなさんもグローバリズムという悪魔の手先になってしまうのです。子供たちのために、未来の人びとのためにお願いします」(飯塚雅俊『闘うもやし』講談社、248頁)
 「地方の眼力」なめんなよ

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