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コラム:地方の眼力

【小松 泰信 (岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

2017.03.15 
道義心無き政治屋に鉄槌を一覧へ

 稲田防衛相は、3月8日の参院予算委員会で、1948年に国会の意思で否定された教育勅語を取り上げ、「核の部分は取り戻すべきだ」と持論を述べた。不思議である。核の部分が問題であるがゆえの国会決議のはず。それを取り戻すとは、国会決議を否定するという、きわめて重い発言である。

◆稲田氏本人へのブーメラン
 
 その核の部分とは「道義国家」、すなわち高い道徳心と倫理観で世界中から頼りにされる国家像を指しているようだ。しかし皮肉なことに、高い道徳心や倫理観からなる「道義心」は、稲田氏ご本人に一番欠落しているものである。
 以前から評価できる人物とは思えなかったが、防衛相になってからの何ともお粗末な姿勢は、そう遠くない時期の更迭を予感させるものだった。そしていよいよカウントダウンがはじまった。
 少なくとも直近14日午後の衆院本会議で、国有地売却問題に揺れる学校法人「森友学園」の訴訟への関与を繰り返し否定してきたこれまでの国会答弁の誤りを認め、謝罪したことは致命傷である。常套句である、「政治家たるもの自らの出処進退はご自分でお決めください」ということになるはず、否、なるべきである。
 もちろん2月8日衆院予算委員会における、南スーダンの現地勢力間の戦闘行為の有無に関する「法的な意味における戦闘行為ではない。国会答弁する場合、憲法九条上の問題になる言葉を使うべきではないから、一般的な意味で武力衝突という言葉を使っている」(東京新聞2月9日)と、実際は「戦闘」状態だが、憲法九条に違反するので「武力衝突」と言いましたと、何ともとんまな種明かし的答弁は力量不足を白日の下にさらした。あの時点で、見識あるセコンドならタオルを投げ入れている。
 
◆辞任・更迭のハードルが下がる

 第二次安倍政権では、辞任・更迭を出さずに身内を守り続けてきたが、ついに辛抱たまらず長靴事件の務台政務官を3月9日に事実上更迭した。更迭を招いた、彼のレベルの低い行為と発言が、これから先の辞任・更迭の基準となるはず。だとすれば、稲田氏の情況は務台氏と比べるまでもなく、その水準をはるかに超えるものである。もちろん、金田法相の大臣失格とも思える無責任極まりない言動、さらに山本農水相の緊張感無き二度の失言なども立派にハードルをクリアーしている。これから、辞任・更迭のドミノ倒しが始まるだろう。

◆バカップルへ贈る言葉

 そして渦中の人、安倍昭恵さんは、3月上旬のある会合で、「私も今までになく注目を集め、戸惑っている」という趣旨の発言をしている。本音だとすれば、その鈍感力に脱帽。嘯(うそぶ)いているとすれば、政治屋の妻の鏡。
 「なぜ注目されているのか分からないと言っているが、本当に分からなかったら大変なことだ。ご自身も説明する必要がある」(日本経済新聞3月9日)という、民進党榛葉氏の発言に異議なしである。公人か私人かの議論がされているが、法的解釈よりも本人の自覚の問題である。好むと好まざるとにかかわらず、権力を有するもののパートナーには、自ずと慎重な言動が求められる。一方では、自分自身がその権力を笠に着て、傍若無人の振る舞いをしないために。他方では、その権力を意識してすり寄る連中の術中にはまらぬために。この感覚が彼女に、そしてその夫にも欠如していることを市井の人々の多くは見抜いている。籠池氏以上に彼女の国会への参考人招致が求められるべきである。
 このバカップルに、少しハイレベルの故事成語、「瓜田(かでん)に履(くつ)を納れず、李下に冠を正さず」を贈る。
 しかしもう手遅れ。腐敗土壌の上に建設されていた「瑞穂の國記念小學院」の認可申請の取り下げは、道義心のかけらも感じられない腐敗土壌の上で権勢を振るっている安倍一狂体制の瓦解の予兆であるからだ。

◆ここにも道義心無き政治屋がいる

 小沢一郎氏の懐刀と称された平野貞夫氏による『野党協力の深層』(誌想社新書、2016年)にこのようなやりとりがある。
平野;こんなことを言っては怒られるかもしれませんが、私はいまの地方選挙や国政選挙を正確に分析すると、自民党は最後の段階にきたと思いますが。
小沢;自民党は普通ならもう終わりだけど、やっぱり事なかれ主義と「仕方ない、仕方ない」の日本人の「仕方ないシンドローム」が健在だから、自民はしぶとい。農協問題を見てもわかるでしょう。あの体たらく。さんざん自民政権からやられても、仕方がないといって従属していく。 
 小沢氏の発言は正鵠を射ている。体たらくぶりを実証しているのが、1月中旬に開催されたJA青年部の研修会における、藤木眞也参院議員のつぎの発言概要である。
「選挙期間中私は、『TPPを反対します』とは絶対に言っていない。これは、党議(拘束)がかかる可能性が高い案件だから、それを破ることはできない。『反対をします』とは言えない、と最初から思ってあいさつをしていた。しかしそこに行き着くまでは精いっぱい努力すると、言った。政策協定を結んだ組織が18あった。すべて確認したが、『反対をして下さい』という政策協定は一つもなかった。紛らわしいのが一つあったが、そこは確認をした」
 間違っていませんねえ、でも怖いですねえ、恐ろしいですねえ、信用できませんねえ、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!
 「地方の眼力」なめんなよ

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