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コラム:農協の現場から

【前田憲成 JA兵庫六甲常務理事】

2017.04.04 
産業・地域政策に総合農協活用を一覧へ

 農業改革の名のもと、「官主導の農協改革」は、全農改革の数値目標プログラム発表という新たな段階となった。
 押し付けがましい改革とはいえ、粗暴に表現すれば、「農協とそのグループがもっと農業振興に力をいれろ」「農業生産の拡大による農業所得の増大のためには生産資材の価格低減が必要だ」「安く仕入れる力がないのなら生産購買を止めてしまえ」「販売事業にもっと力を入れろ」というのが、世の中の論調である。

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 農協側に、各論では異論・反論はあっても、政府が「岩盤規制改革」を掲げ、世論をバックに改革をせまるという構図のもとでは、「世間受けする論調」に対しては「何でも反対」という姿勢では、より世論の支持を失いかねない。
 さらには、一般論としてだが、今の総合農協の収益構造は、「農家が農業で稼ぐところに貢献できず(販売事業や生産購買事業)、兼業(今では農業が副業の農家の方が多いが...)で稼いだあがりを信用・共済事業で利用してもらい、そのストックを元手にしてメシを食っている」という構図であるから、組合員農家に対して強い求心力を維持していくには心許ない(このような収支構造が大多数の世論に理解が得られるのかどうかがポイント)。
 また、農協が地域貢献にこだわるのは、「JA綱領」にあるとおり、協同組合の持つ根源的役割であり、「これを大事にする、実践する」ということは良いことだし、間違いないと信じるものだが、組合員や地域住民にとって「空気のようなもの」であり「代替がきく」とすれば、「ありがとう」と言ってはもらえても、「なくてはならないもの」と言ってもらえるだろうか(当然、言ってもらえるよう日々精進することが前提であるが...・)。よく吟味しておく必要がある。

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 やはり、ここ2~5年のうちは、地域農業の担い手構造の変化を踏まえても、「農業生産の拡大による農業所得の増大」そのための「販売力強化と生産資材価格の低減」に成果をだすことが最重要課題と言えよう。
 しかし、その前に、農村における「農業の担い手構造」は、土耕による水稲・園芸農業をはじめ、畜産・酪農・果樹など広範な分野で、高齢化による生産現場からの撤退の波が押し寄せていることを認識しておく必要がある。
 農協事業を運営する前提として、その基盤となる地域の産業・経済、農業が骨粗鬆症のようにボロボロになって来ているのだ。
 その中身は、水田農業では、農業維持型の集落営農組織の継続性にも「黄信号」がともっているし、新規就農者の10年営農継続状況をみるとリタイア組が相当ある。
 さらには、産地として地盤があり後継者が比較的確保できている産地と、そうでない所との「地域間格差」も一層開きつつある。
 また視点を変えると、認定農業者として活躍する大規模家族経営、法人農業者も、いずれは「事業継続・事業承継」で行き詰まることもありえる。
 これらを踏まえると、今まで以上に、農家後継者や他の属性からの農業への参入、企業系法人の参入に加え、産業間の連携、交流人口の拡大、企業誘致などによる雇用の創出を大胆に進めないと、海外農畜産物の外圧に屈する前に、農村・地域社会が持たないところまで来ている。
 地方・地域のグランドデザインを描くところから始めないと大変なことになるのは明らかだが、これは農協や民間活力だけでは如何ともし難く、国や地方行政の政策を総動員しないと解決の糸口は見つからない。

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 農協改革のもう一つの柱である「信用事業の分離・代理店化」は、地方経済や産業構造の変化・衰退を見据え、「農協の行く末」を案じ提案されたものだが、国の政策として「地方をある程度、見捨てていく」つもりの一環ではないのかと勘ぐれる。
 そうではなく、国が、地方・地域の活性化が国益に適うと志向するなら、産業政策・地域政策総動員の中に、もっと総合農協の機能活用を取り入れていくことを提案したい。

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