コラム 詳細

コラム:農協の現場から

【後藤善一 三ケ日町農協組合長】

2017.04.27 
農協の未来(離農とAI・ロボット)一覧へ

 今全国の農協は農水省が行なっている認定農業者へのアンケートなど、農協改革への対応で右往左往しています。私ども農協も例外ではありません。しかし、それらのことは今回の改革の枝葉末節であり、改革の肝は農業者の所得の増大です、それを実現しなければ国は納得しないと思います。そのためにも私ども農協にとって注目すべきことは、これから始まるといわれている外部環境の大きな変化であると考えています。

 農業、農協の未来におけるキーワードは「離農」「AI・ロボット」です、これからかってない規模で離農する人たちが出てくるという現実があります、農家の高齢化が年を経るごとに加速しており、農業就業人口の平均年齢が2017年には70歳に達しようとしています。農業従事者は70歳を迎えると一斉にリタイアをすると言われており、農家が今後激減していくことは確実です。
 しかし、農協のビジネスモデルは多くの零細農家の存在が前提であり、農協にとって事業対象者が減ることは大きな問題です。なぜなら農家はお客さんであり、お客さんが多ければ取扱高は増えます。農家が減れば事業機会も減ります。

  ※  ※  ※

 しかし、大量の離農を歓迎している人たちもいます、規模拡大を望んでいる「やる気と能力のある農家の人たち」です。その人たちにとって今の状況はチャンスです。むしろ高齢化によって農業をやめる人が増えれば、それだけ優れた人のもとに農地が集まり、農業の合理化が進むし、農家数の減少や高齢化は、農業が変革するいい前兆かもしれません。
 規模の拡大や農地の集積が進むと同時に、生産性の向上のため必然的にIoT、ロボット、AI(人工知能)を求めざるを得なくなります。それを第4次産業革命などと言われています。
 ちなみに第一次産業革命をけん引したのは18世紀にイギリスで登場した蒸気機関、2次は電気エネルギー、工場に電力が普及してベルトコンベアーを使った生産性の飛躍が起きました。そして3次はコンピューターによる自動化。日本の製造業が力をつけていった時代です。
 また日本では特にそれらAI、ロボットが生活、仕事に入ってくるスピードが早いのではないかといわれています。米国、ヨーロッパで今何がおこっているかといえば、トランプ大統領の誕生、イギリスのEUからの離脱など、移民に仕事を奪われているという認識からの混乱であり、人工知能、ロボットによりこれ以上仕事が減ることは困るという潜在意識があります。
 しかし日本は人手不足の状況でありスムーズに導入されていくだろうということです、また日本の政府は移民政策にきわめて慎重です。

  ※  ※  ※

 農協が組合員の組織であれば、農業所得増大を目指すなどは当たり前の責務であり、問題なのはこれから農協にそれを成し遂げるだけの力があるかどうかということです。おそらく残った農家はやる気があり優秀で、その人たちを指導することができるのかという問題があります。
 AI(人工知能)によりこれから農業分野に集まる膨大なデータと、そこから導き出される最適解は、農協の指導員が積み重ねてきた旧来の研究し尽くされている知見を上回っていくのは間違いなく、それも可及的に速やかに、圧倒的です、またこれはすべての農協事業にいえます。近い将来、単調で定型的な業務の多い農協事業のかなりの部分を人工知能、ロボットが担っていくことは間違いのない現実です。
 たとえば今信用事業の譲渡という課題がありますが、それにも人工知能を使ったフィンテックが大きく関わっています。日本の金融機関の労働生産性は欧米の半分であり、これから金融事業を金融機関が行なわなくなる、金融店舗はいらなくなるなどともいわれています。これから中途半端な金融機関が金融事業を行なうことは不可能でしょう。
 今私たちのするべきことは農協改革も大事ですが、一度農協という殻を脱ぎ捨て自分たちの使命の確認をし、そして強みを見極め、時代の変化に柔軟に対応していくことではないでしょうか。

一覧はこちら

このページの先頭へ

このページの先頭へ