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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2018.01.29 
第2保守党の媚態一覧へ

 保守主義が横行している。野党幹部の中でも、保守主義者を自称する人が多い。わが党が第2の保守政党になり、自民党に代わって政権を奪うのだという。しかし、保守とは何かと聞かれると、困ってしまうようだ。昔の良いものは残す主義だというが、良いものも捨てる、などという主義が、どこにあるのか。
 では、保守政党を自称する自民党との違いは何か、と聞かれると、リベラルだという。では、リベラルとは何かと聞かれると、困るようだ。自由を尊重する主義だというが、自由をすべて抑圧する、などという主義がどこにあるのか。
 問題は、誰にとっての、どんな自由を尊重するのか、誰にとっての、どんな自由を抑圧するのかだが、それは言わない。そうして、オールフォーオールなどと、訳の分からぬことを口走る。
 これでは、野党がどんな政治を目指しているのか分からない。保守主義者のなかの不満分子が集まって、第2自民党を目指しているとしか思えない。これでは政治は変えられない。
 こうした中で、国会が始まった。労働法制が重要課題だという。与党は保守主義に基づいて提案したのだろうか。そして、多くの野党はリベラル主義に基づいて反対するのだろうか。

 自民党にとって、保守主義の看板は昔からの飾り物ではないか。また、多くの野党にとって、リベラルという看板は、財界に媚態を示し、財界から急進的と批判されないための飾り物ではないのか。
 野党は、こんな飾り物は捨て、本物の旗印を高く掲げて、つまり、本音の基本姿勢を明確に示し、労働法制について、与党と真剣に対峙すべきである。

 保守主義とは、昔からある古き良き文化や社会制度を残すなどという、ふやけたものではない。いまの資本主義を基礎におく社会体制を、全体として墨守する、という主義である。
 野党は、これに反対するというのなら、この根本のところから反対しなければならない。そして、資本主義の本性に根ざす労働の搾取を法的に制限する、という主義でなければならない。このことを明確に示すべきである。
 それができなくて、財界や、いまや財界寄りになってしまった連合労組の庇護に頼ろう、などと考えているのなら、野党の存在理由はない。

 資本主義の生産構造の特徴は、生産手段の私的所有にある。そして、それを基礎にした、資本家による労働者に対する搾取にある。だから、資本主義を守るということは、この生産構造を守ることであり、生産手段の私的所有制を守ることであり、搾取を続けることである。これが保守主義である。
 これに対抗する基本点は、資本主義の土台にある生産構造の変革にある。それは、生産手段の私的所有の制度を取り上げ、この所有権に対して法的な制約を加え、搾取を制限することである。これは、一種の社会主義といっていい。

 所有権とは、絶対的な支配権であるが、この絶対的権利を相対的な権利に変革するのが社会主義である。
 生産手段の所有権を持っている人は、生産の成果を、どのように分配するかの決定権を持つ、つまり、労働者に対してどれほど分配するかの権利は、生産手段の所有権者である資本家にある。資本家による労働者の搾取は、ここに起因している。だから、搾取を制限するには、生産手段の所有権を制限するしかない。

 このことが一番に分かり易いのは、最低賃金制である。これは、一定の労賃以下で労働者を雇用して生産することを法律で禁止する制度である。低賃金労働を強いて、搾取を強めることを法的に阻止する制度である。
 最低賃金制だけではない。野党が労働者の代弁者だ、というのなら、資本家の労働者に対する搾取を強めるあらゆる自由に反対しなければならない。リベラルなどと言ってはいられない筈だ。

 いまの国会での重要議題である労働法制に対する野党の反対は、この視点に立つのだろうか。
 野党は、リベラルなどと、訳の分からぬことを看板にするのではなく、資本のために労働の搾取を強化し、格差を拡大する政治に反対だ、という看板を立てるべきだろう。

 ひとこと大事なことを付け加えよう。
 農業者は単純な労働者ではない。土地や農機などの生産手段を持っているから資本家でもある。しかし、資本に対するまともな収益を得ていないし、労働に対するまともな報酬も得ていない。この2つの収益を合わせた所得が、労働者の賃金と同じ程度にしかならない。だから、労働者の賃金が下がれば、労働市場での激しい競争関係のなかで、それにつれて農業者の所得も下がることになる。だから、農業者は労働者と利害を同じにしている経済的弱者である。
 もうひとこと。農協は協同組合だから、生産手段の所有権は組合員の全員が平等に持っている。だから、お互いに同じだけ搾取しあっている、といってもいい。農協に搾取はない、といっていい。こうした経済組織を基にした搾取のない公正な社会を建設するために、農協の組合員は懸命な努力を日々重ねている。
 こうした組織を中心にして、いまの日本の政治の淀んだ空気を一掃し、協同組合の新しい空気に入れ換えねばならない。
 リベラルなどと言っている野党は、経済的弱者である農業者や労働者と、それぞれの抵抗組織である農協と労組に対して、また、資本家とその組織である財界に対して、どんな立ち位置に立つのか。それを明確に示さねばならない。
(2018.01.29)

(前回 オレファーストの醜い面々

(前々回 自民1強政治への怒りは続く

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