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【小松泰信・地方の眼力】忘れたコロにやってくるのが天災ならば2018年4月11日

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【小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 4月9日午前1時32分ごろ、島根県西部を震源とする地震が発生。気象庁によると、島根県大田市で震度5強、出雲市などで震度5弱を観測した。さらに2時前にも同地域を震源とする地震が発生。当コラムが住む岡山市も揺れて、不気味な一夜であった。

◆西日本新聞が伝える稲作農家の嘆き

 出張先の福岡で求めた西日本新聞(4月6日)には、災害関連記事が多数掲載されていた。
 まず1面には、"被災水田4割作付け困難 九州豪雨の朝倉土砂撤去遅れる"の大見出しで、昨年7月に起きた九州豪雨のその後を伝えている。
 甚大な被害が出た福岡県朝倉市では、災害復旧事業による土砂撤去が始まらず、今年の米の作付けが困難な水田が、少なくとも約200ha(被災水田の約4割、市全体の水田の5%に相当)に及ぶとのこと。農家やボランティアが自力で土砂を撤去した水田もあるが、一部では水路の復旧が間に合わない恐れもあり、作付けができない水田がさらに増える可能性がある、としている。
 28面の関連記事では、"田植えできぬ春むなし"との見出しで、泥と水たまりに苦闘する同市の稲作農家の現状を紹介している。流木は自力で取り除けても、一面を覆い尽くす土砂はどうにもならない。耕作する水田の大半で今年の田植えを断念。農業共済組合に加入しているため、昨年は作付面積0.1ha当たり7万円ほどの補償金が出たが、今年はそれもない。国の災害復旧事業を申請したあとは、ひたすら工事の開始を待つのみ。「ここはもうだめ。来年に向けて準備を進めるしかない」と、田んぼの泥の上にできた水たまりを見つめながらつぶやいたそうだ。

 

◆行政対応の検証と新たな取り組み

 22面には、九州豪雨に関連して、福岡県が初動や被災者の生活再建支援などの対応について、評価できる点や反省すべき点の検証結果をまとめたことを紹介している。例えば、避難者対策においては、避難所の暑さ対策としてエアコンを早急に設置するなど、ニーズに沿ったきめ細かい対応ができたことを評価する一方、避難者への情報提供の方法などに課題がある、としている。また、堤防の決壊などで周辺に甚大な被害が及んだことに関連して、「朝倉地区に水位計が少なく、水位情報が不足していた」ことから、国、県、関係市町村でつくる「大規模氾濫減災協議会」において、「水位周知河川の拡大などを検討する」ことを紹介している。
 また同面では、国土交通省九州地方整備局が5日、九州豪雨の被災地の復旧復興を推進する「豪雨復興出張所」の開所式を朝倉市で行ったことを伝えている。ここには16人が常駐し、国直轄の砂防事業や、権限代行制度に基づいて、市内を流れる河川の本格的な復旧工事を県に代わって実施することになっている。

 

◆新燃岳爆発的噴火被害の実態と農家の苦悩

 29面には、"降灰、風評悩む地元"の見出しで、霧島連山・新燃岳の爆発的噴火による被害実態を取り上げている。噴火の終息は今だ見えず、麓の宮崎、鹿児島両県では、農作物の降灰被害や畜産への影響が広がり、温泉街では宿泊キャンセルが相次いでいるとのこと。
 子牛生産が盛んな宮崎県高原町では、2011年の爆発的噴火の際、住民の避難勧告後に急きょ牛を移送させた経緯がある。「おなかに子がいる牛もおり、急な移動のストレスで事故が起きてはいけない。早めに避難させたい」(火口から約6㎞の地区で65頭を飼育する和牛繁殖農家)といった意向などから、今回は大規模噴火の前に、隣接する同県小林市に先行避難させる計画。
 「40年栽培しているが、こんなに廃棄したのは初めて」と嘆くのは、降灰に悩むシイタケ農家(鹿児島県霧島市)。最初に噴火があった3月6日はシイタケ収穫の最盛期で、火山灰がついたシイタケは商品にできず400kgほど処分したそうだ。
 ホウレンソウやキャベツなど収穫期を迎えた露地野菜も灰をかぶり、両県の農家や集荷場では、洗浄作業に追われている。「労力がかかり大変だ。このままでは出荷が遅れ、廃棄野菜が出そうだ」と、不安は隠せない。
 飼料となる牧草が刈り取り期に入り、畜産農家からは「牛の発育に影響がなければいいが」と、ここでも心配の声があがる。

 

◆奔走するJA、安堵する農家

 ちなみに日本農業新聞(6日)は、宮崎県JAこばやしが、降灰農産物の販路確保に奔走するとともに、独自の支援策を打ち出していることを紹介している。降灰の影響から取引業者から取引停止を受け、行き場を失ったホウレンソウが出たことでJAは、洗浄後のサンプルを業者に届け、品質に問題がないことを粘り強く伝えた。その努力の甲斐あって、全量の販路が確保され、2017年度産の総出荷量は当初計画量1200トンにまで達する見込み。「噴火の影響なく出荷できて本当に助かった。JAに感謝したい」とは、ホウレンソウ農家の言葉。もちろん、油断できない状況は続いている。
 また同JAは3月10日、降灰被害の対策として単独で5000万円の支援を決定している。坂下組合長は「JAは赤字を出してでも、農家を支援する。噴火で先が見えないが営農を諦めないでほしい」と、訴えている。

 

◆伝え続けて風化を防ぐ

 この西日本新聞(27面)には、2016年4月の熊本地震で熊本県西原村の自宅を失ったことにめげず、インターネットメディア「阿蘇西原新聞」を立ち上げ、被災した地域の情報を発信し続けている川野まみさんが紹介されている。
 「伝える人になる」という彼女の決意を支えているのは、自身で発信しなければ情報が埋もれるという地震直後に経験した危機感と、「風化させまい」という使命感。ジャーナリストに招かれ東京のイベントで熊本の現状を報告すると、参加者から「新聞やテレビで見ないからもう大丈夫と思っていた」との言葉を聞き、情報発信の必要性を再認識したそうだ。

 

◆忘れたトコロにやってくるのが人災

 天災を防ぐことは極めて困難である。しかし天災が及ぼす災禍をできるだけ少なくすることや、それからの復旧、復興をできるだけ短期間で行うことは可能である。それを忘れ、怠ったことで起こる災禍を人災と呼ぶ。西日本新聞を手に取る機会があったからこそ、九州豪雨のその後と新燃岳爆発的噴火の今を知ることができた。
 人災は忘れたトコロにやってくる。忘れさせないことが肝要。耳目にトを立てぬよう、現場からの多様かつ持続的な情報発信とネットワークによる情報共有が求められる。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

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小松泰信・岡山大学大学院教授のコラム【地方の眼力】

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