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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

第11回 地域農業の構造をいかに改革するか2017年4月22日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

ー日本型農場制農業の創造を目指す(株)田切農産(長野県飯島町)ー

<農業6次産業化の推進>
今村奈良臣 東京大学名誉教授 直売施設「キッチンガーデンたぎり」を紫芝勉君は設立し、平成22年7月1日にオープンした。小さな直売所であるが、実に小ぎれいな建物で、出荷者は田切農産に農地を貸している人、田切農産の株主(つまり田切地区の集落の皆さん)が自分の自給菜園で作った多彩な野菜、漬物など、また、後で紹介する多彩な農産加工品を作るために連携している製造業者などである。手数料は15%。値段は他の直売所などと比べてみると品質は確かなのに安い。平成26年でみると直売所登録者数228人、うち女性登録者数138人、年間来客者数3万2074人、販売金額2145万円、客単価997円と決して大きくはない直売所だが、地域に根をおろし、地域の心の拠り所、情報交換の場となり順調な展開をいまなおみせている。
 さらに地区内にある酢製造メーカー・内堀醸造株式会社と共同で、信州大学農学部と伊那農業改良普及センターとの協力を得て、多彩なトウガラシの試験栽培を重ね、酢とトウガラシを組み合わせた新しい味わいの調味料「すっぱ辛の素」を完成し好評を博している。トウガラシを選んだのは、栽培が容易で高齢者や女性でも取り組みが可能で、面積拡大が可能であり単価も高く設定できるなどが選定理由である。これを契機に多彩なトウガラシ栽培が地区内外で広まっている。
 さらに田切農産では早くから酒米(信濃、美山錦)を栽培し中島醸造(岐阜県瑞浪市・創業元禄15<1702>年)に依頼、創業者の名前をいただき「小左衛門」の商標を作り、酒販免許を取得して地域で販売、好評を博している。私も頂いて飲んだが実に淡麗(たんれい)美酒であった。
 また、ソバの栽培も大規模にしているが、その主力は東京都世田谷区のソバ組合へ特産のネギとあわせて契約販売している。
 もちろん、環境にやさしい農業を目指し、有機減農薬栽培を推進しており、なかでも絶滅危惧種のチョウ「ミヤマシジミ」の生息地でもあるためその保護活動に力を注ぎ、生息エリアでの生産者とも共同して有機減農薬栽培と畦畔管理の徹底、食草の移植など多彩な活動も行っている。

<荒廃農地を活かすー月誉平を栗の里へー>
 月誉平と呼ばれる田切地区の東部台地にある土地は、第2次大戦前開墾され、戦後、ある時期までは野菜など栽培されてきたが、近年耕作放棄され、獣害もひどくなり何とかしなければと関係者は気をもんでいた。この月誉平の一角は田切地区のお盆の花火を打ち上げる場所でもあり、田切地区住民の心の拠り所でもあった。
 そこで栗の植栽を中心として、その運営を行う一般社団法人「月誉平栗の里」を平成23年5月17日に立ち上げ、荒廃農地がいまでは立派な栗園になっている。
 その要点を摘記すると次のようになる。
(1)農地を守るために地主全員(45人)参加の組織、(2)農地はすべて農地利用集積事業で法人へ集積(4.5ha、77筆)、(3)国土調査並みの測量を行い土地データの明確化、(4)作業は会員並びに会員家族優先(労働契約)、(5)有害獣対策施設を周囲全部に設置、(6)地区営農組合や(株)田切農産と連携し、土地利用や作業受委託を推進、(7)役割分担による6次産業化をすすめ、信州里の菓工房と連携し栗の里づくりの展開。
 以上が一般社団法人「月誉平栗の里」の概要ならびに要点であるが、そのポイントは栗を栽培するだけに終わるのではなく、収穫した栗の売り先、加工先として「信州里の菓工房」(その本社は岐阜にある)を明記するとともにその企業からは300万円の出資(地元は100万円)をしてもらいつつ、6次産業化を推進しようとしていることと、栗が育つまでは(株)田切農産が間作としてソバを植えながら月誉平の管理を行うようになっていることである。要するに地区を基盤にしてこのようなかたちで荒廃農地を法人化を通じ再生し、農業6次産業化の新しい姿を作り上げようとしているのである。この手法を学ぶことを通じて全国各地で悩み抜いている荒廃農地の再生ができないかと提案しておきたい。

<農地はこれから生まれてくる子孫からの預かりものである>
 田切地区ならびに紫芝勉君の活動を通して私は次のような土地観、農地観を持っていることを知ることができた。
 「一番上に田切地区の農家が耕作している農地や田切農産が使っているものとしての農地がある。その下にそれぞれの農家のもの、そして地域の、みんなのものとしての農地や畦畔、水路、堤防などの地域資源がある。だから水路、土手の掃除・維持管理などは地域全員で行う。一番下の基盤は国土としての土地資源である」。
 農地についての「三段重ねの思想」ということになる。耕作している上土は耕作する農民あるいは法人による有効活用の考え方に立ち、耕土を支えているその基盤にある中土ならびに畦畔、水路、農道、堤防などは集落、ムラ、地域で保全・管理されており、それらすべてが乗る底土は、日本国、日本国民のものであるという三段重ねの農地に対する思想である。
 こういう農地観とともに、田切地区の活動の調査を通じて私が学んだことは「農地は先祖から受け継いだというのは当たり前のことで、これから生まれてくる子孫からの預かりものであるということが重要である」ということであった。

<JAならびに市町村に望むこと>
 以上、田切地区の活動ならびに田切農産の紫芝勉君の活動を紹介してきたが、これらの活動の前提条件として、JAや市町村の周到な準備作業があったことを強調しておきたい。
 昭和61年9月に飯島町営農センターを飯島町農林課、農業委員会、飯島町農協(のちに上伊那農協に合併)、農業改良普及所などで設立し、地域農業再生の協議を積み重ねてきたという歴史がある。
 私は、このセンターの設立総会に招かれ講演した。その時に提案したことが「共益の追求を通して、私益と公益の極大化をはかる」と記憶している。それが、田切地区で実っているのではないかと思っている。この中でJAの果たす役割は非常に大きいものだと強調しておきたい。

<人材育成のために農林水産省は全力をあげて支援すべきである>
 紫芝勉君のようなすぐれた人材は、八ケ岳中央農業実践大学校から産み出されたのであるが、この大学校は財政的には非常に大きな苦難の中で教育・研究に努めている。
 こういう次代の日本農業を背負って立つ人材を育成するためにも、多面的な財政支援を教育機関に対して農林水産省は行うべきだと思う。「農業ほど人材を必要とする産業はない」というのが私のかねてよりのモットーである。

<追記>紫芝勉君には、私が代表をつとめるJA-IT研究会で2度にわたり、また「人づくり研究会」では一度これまで講演していただき、出席者に非常な感銘を与えることができた。また、紫芝勉君たち田切地区の活動の私なりの分析・考察は今村奈良臣『私の地方創生論』(農山漁村文化協会刊、2015.3)の第5章で詳細に分析・考察してある。

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