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特集:農協改革を乗り越えて -農業協同組合に生きる 明日への挑戦―

2017.11.09 
「地域」をブランドに 自然条件活かし少量多品目産地化【JA信州うえだ(長野県)】(後半)一覧へ

 野菜は通常流通より高い価格で全量買い取っているが、「さすが高冷地長野県の野菜は品質が違う、と評判がよく、昨年の春からスタートしたが、いまは注文に応じきれないほどだ。産地の信頼を維持するため、常に品質のよいものを供給するよう努めている」と坂下組合長は地域ブランド戦略のポイントを指摘する。昨年度は約2300万円の取り引きだった。
 また、今年から量販店とも直接取引を始めており、取引きするスーパーにも「信州上田コーナー」を設け、地域を消費者に印象付けるようにしている。
 こうした少量多品目の生産振興、安定供給のためJAは、きめ細かな生産振興・支援を行なっている。それぞれの地域に適した農業を実現するため管内7地区ごとに「農業振興ビジョン」を策定し、平成22年から「農業支援プラン」事業をスタート。冬の野菜を確保するためのパイプハウスの補助からスタートし、その後、年によって変わる多種多様なメニューを用意している。経費の10分の2以内で援助し、パイプハウスや防雹ネット、リンゴの支柱などで、取り組み開始から昨年度までの累計では1170件、1億200万円の支援を行なった。

「農業支援プラン」を利用し、Uターン就農でリンゴ栽培を始めた生産者(右)とJAの営農指導員(写真)「農業支援プラン」を利用し、Uターン就農でリンゴ栽培を始めた生産者(右)とJAの営農指導員

 

◆担い手はJA農場で

 担い手の育成では、JA出資法人の信州うえだファームがその役目を果たしている。耕作放棄地の再生と新規就農者の育成をつなげた農場で、果樹のほか、水稲、麦、ダイズ、野菜などを合わせて65haを経営する。
 高齢化などで管理できなくなった生産者の果樹園を預かり、新規就農希望者がこれを実習に使い、2年間の研修が終わると、その果樹園を農機なども含めて渡す。新規就農は農地や農機などの初期投資が大変だが、ファームで研修すると、就農の初年度から慣れたほ場で作業でき、一定の収入が得られる仕組みだ。ファームでは、これまで、ブドウ以外も含めて延べ37人の新規就農希望者を受け入れ、うち25人が修了し、20人が独立就農した。
 担い手の育成と荒廃農地防止という一石二鳥の取り組みであり、JAでは事前にアンケートをとって、果樹栽培をやめたいと考えている生産者を掌握するようにしている。また、ワインブドウでの新規就農を目指す研修生に対し、連携する日本ワイン農業研修所(株)(「千曲川ワインアカデミー」)での研修を結びづけ、ワイン用のブドウ栽培だけでなく、醸造の知識や技術も学ぶことができる。こうした取り組みが評価され、同ファームは2017年、「第9回耕作放棄地発生防止・解消活動表彰事業」で農林水産大臣賞を受賞した。

JA出資の信州うえだファームで研修生が管理するブドウ園(写真)JA出資の信州うえだファームで研修生が管理するブドウ園

 

 一方で、農家の人手不足は深刻になっている。このため「アグリサポート事業」に取り組んでいる。リンゴやサクランボ、レタスの収穫など、果樹や野菜の繁忙期に労力面で支援する事業で、非農家の女性や定年退職者などが対象。65~70歳の女性が多いが、登録者100人に対して、生産者からの依頼は120件くらいあり、農家によっては毎年、決まったサポーターがつくなど、農作業支援システムとして定着している。
 野菜、果樹だけでなく、高齢化によって水田の不耕作地も増えており、JAでは集落営農づくりを進め、その前段として、任意組織としてため池や水路、農道などを整備・清掃整備する「みどり(美土里・緑)会」を各地区につくった。
 これを集落営農につなげたい考えだが、坂下組合長は「農業だけでなく、このまま少子高齢化が進むと、地域そのものがもたない。農地の集積はある程度進んでいるが、飛び地が多いなどで、担い手に集積するまではなっていない。担い手がいないと地域は消滅する。こうした問題は、地域で頑張っても限界がある。国の政策の方向次第だ」と指摘。そのうえで10a7500円米の直接支払い支払金の廃止、生産調整の廃止、食料自給率の低下など、自らの思いに逆行する政策に疑問を投げかける。


◆対話力のある職員に

JA信州うえだ産の野菜が人気だ(生産者グループと提携した広島県のスーパー) 一方、JAの営農指導では、現在42人の指導員を配置。昨年、さらに営農相談機能を強化するため、営農部グリーンファーム店に専属のお客様相談係7人を配置した。坂下組合長はJAの営農指導のあり方について、「技術指導だけでなく、経営分析を含めて営農全般を指導できる指導員が必要。融資が必要であれば信用部門からも知恵を借りるなど、農家のふところまで入れる指導員であってほしい」という。
 また、地区ごとに「食と農を通じたコミュニケーション強化プログラム」を実施。これは職員の農業知識や技術を習得するため、地区ごとに農業実習や基礎知識を学ぶプログラムで、昨年は569人の職員が参加した。「農協改革という難しい時期だけに、職員には組織の存続に関わることだという認識を持って、どういう行動をするかが問われる。必要な資格全て挑戦し、営農部門以外の職員も、農業の知識を身につける必要がある。特に組合員とコミュニケーションのとれる職員でなければならない」と、全職員に県中央会の「営農相談員」の資格をとるなど、自己研鑽を促す。
 さらに農を基軸とする組織として、職員には、「地域に住む住民の一人として、消防団やPTA、水利組合などの組織に積極的に関わり、地域に溶け込んで、JAの職員としての人間形成に務めてほしい」と呼びかける。

(写真)JA信州うえだ産の野菜が人気だ(生産者グループと提携した広島県のスーパー)

 

JA信州うえだの概要

●組合員:2万9230人(うち正組合員1万6608人)
●職員数:744人(うち常雇的臨時273人)
●販売品販売高:90.5億円
●購買品供給高:38.7億円
●貯金残高:3337.1億円
●長期共済保有高:9738.8億円
 (平成29年2月末現在)

 

※この記事の前半は、「地域」をブランドに 自然条件活かし少量多品目産地化【JA信州うえだ(長野県)】(前半)をご覧ください。

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