背筋凍る「TPPの真実」-鈴木教授の『悪夢の食卓』2016年8月25日
鈴木宣弘東大教授の最新著書『悪夢の食卓-TPP批准・農協解体がもたらす未来』に読者から「背筋が凍る思いだ」「政府は嘘とごまかしで政策を遂行していくのか、信じたくない」といった声が著者に寄せられているという。20日に東京・駿河台の明治大学で開催された「TPPを批准させない! 全国共同行動キックオフ集会」の会場でも関連図書のひとつとして販売されたが集会終了時には売り切れとなるほど好評だ。
本書は第1章「TPPの真実-隠された11の嘘」、第2章「食料生産への真の影響が知りたい」、第3章「苦悩する食料生産現場」、第4章「高まる健康リスク」、第5章「『3だけ主義』から『三方よし』へ」、で構成されている。
「TPPの真実」ではアトランタ合意とその後の政府説明などについて、歯切れ良く明快に"TPPの嘘"が指摘されている。これまでも著者は全国で講演を行って政府の交渉の裏側を舌鋒鋭く批判しており、それをまとめた。しかし、これでもかと国民を欺き手繰る政府の手口は本当に恐ろしい。
JA関係者にとっては日本のTPP交渉参加と農協改革の背景を本書で改めて認識しておきたい。TPP推進者や規制改革会議に連なる人々は「今だけ、金だけ、自分だけ」の3だけ追求至上主義者であり、彼らにとっては地域の農業と生活を守り、それがゆえにTPPに反対しているJAなどの協同組合は潰してしまって市場を奪いたいのが本音。
農協改革の謳い文句は農産物の販売力強化による農家所得の向上であり、そのために単協の自由度を高めるであるが、実際にはその裏側に「JAの結集力を削いでTPP反対などを封じ込める。JAが持つ広範なビジネスを奪う、という目的が透けてみえる」と著者は衝く。しかし、何より競争や自由貿易が経済的利益を最大化するなどという「経済学」が成立はせず、食料確保と国民生活を危うくするだけだと著者は強調する。
英国の協同組合つぶしが農業の疲弊を招いた指摘などもある。世界の動きも視野に農協改革の狙いを理解する必要性や、さらに協同組合関係者はもちろん、広く市民が協同組合の重要性とそれを分断しようとする狙いを知るためにも多くの人に本書を手をとってほしい。
(写真)『悪夢の食卓-TPP批准・農協解体がもたらす未来-』
鈴木宣弘・東京大学大学院教授
発行:(株)KADOKAWA
定価:本体1300円(税別)
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