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コラム:米マーケット情報

【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

2017.11.20 
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 東大野球部はしっかりご飯を食べないとキャッチボールもさせてもらえないという。食べて体重を増やせば打球も伸びる。しかし、一般家庭ではなかなか米の消費は伸びない……。その理由はやはり価格ではないか。

◆「ご飯」も練習 東大野球部 

 文京区にある東京大学野球部の一誠寮。ここの食堂に行って見ると大きな張り紙が配膳口に掲げられている。その張り紙には「食事の軸は『ご飯(米)』と具だくさんのみそ汁」と上に書かれており、その下に「相手に負けない太い身体を作る!」と題して1日当たりの「ご飯(米)」必要摂取量が体重別に60kgから90kgまで記されている。
 体重70kgの選手は練習日は「1580g」のご飯が必要摂取量。ご飯一杯の目安は400gである。外食での牛丼のご飯は240g、コンビニのおにぎりは90g程度なので、東大野球部の選手は一回当たり外食店で提供される倍のご飯を食べている計算になる。驚くべきは朝食の後、午前10時におやつの時間があり、その時に部員はなんと1個250gのおにぎりを食べている。このご飯(米)中心の食事を推奨して実践しているのが浜田一志監督である。
 浜田監督のモットーは「勝ちたければ飯を食え」で、練習の優先順位の一番が食事。優先順位一番の食事をこなせないでキャッチボールをしても意味がないと言い切る。東京大学工学部卒だけあって浜田監督の理論は明確で、体重が10kg少ないと打撃の飛距離で10m飛ばない。ゆえに負ける。選手の体重と打撃成績のデータを見せてもらうと、この3年間で体重の増加と並行するように打撃成績がアップしており、そのグラフは見事にパラレルになっている。今年秋のリーグ戦で東大は8本のホームランを打ち、3勝を挙げた。打率ベストテンに2人の東大生が入っている。

 

◆価格上昇で消費が減少

 総務省の家計調査によると2人以上世帯のコメ購入数量推移をみると今年に入って1月から8月まで毎月前年同月を下回っており、ようやく9月になって前年同月を上回った。それに反比例しているのが購入単価で、1月から8月までの購入単価は前年同月に比べ102.2%~107.7%アップしている。つまり購入単価が上がった分購入量が減っていることを意味している。
 最近、これまでパンもご飯もお替り無料だった洋食系外食チェーン店がご飯のお替りだけ有料にした。その代金がなんと257円。これではいかにご飯好きでも躊躇してしまう。家計調査から1人当たりのコメとパンの支出額をみると2016年度はコメが1か月当たり660円80銭であるのに対してパンは890円10銭で、毎年その差が開いている。
 研究機関向けのデータ解析を専門にしているコンサルティング会社は、コメのデータ解析も実に細かく行っており、そのなかにはコメの支出額が最も多い年代は70歳代、最も支出額が多いのが静岡市、などといったデータのほかに2018年の月別需要量予測まで行っているところがあるが、その会社が示しているコメとパンのトレンドを見てもコメ業界にとっては衝撃と言うしかないグラフが示されている。
 大手米卸の社長は、これほどまでにコメの消費量が落ち込んでいるのは米卸がコメという商品の商品開発を怠って来たせいもあると言っている。そうした要因もあるが、最大の課題は価格である。コメの消費量が価格に関係ない、価格弾力性がないなどと言うことはあり得ない。コメは、小麦はもちろんトウモロコシ、大豆等すべての穀物と競合関係にあり、それを無視した消費拡大はあり得ない。これは家庭で食べるご飯のことだけではなく、今伸びている冷凍米飯やパックご飯などコメを原料にしているすべての食品に当てはまる。パックご飯が世に登場し始めた当初、パックご飯1食が100円を切るとゴハン革命が起きると宣言していたメーカーのオーナーがいたが、まさにそれが実現して需要が拡大したのである。それが再び100円を超えるようになったら消費者はパスタやパンにシフトすることになるだろう。
 東京大学野球部の一誠寮で年間食べているコメの量は3.5t。このコメはどうしているかというと東北の全農県本部から無償提供されている。ただし、来年どうなるかはまだ決まっていない。

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