(382)「ファミリー・ビジネス」の生き残り【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年5月3日
ファミリー・ビジネス(family business)と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
もしかしたら、そのイメージは現時点の自分自身が持つ企業に対する印象そのものかもしれません。
一般にファミリー・ビジネスとは特定の親族などが経営に関与するビジネスである。具体的には、創業者やその一族などが当該企業の株式を一定以上所有するか、あるいはその上で実際に経営に関与するような企業である。前者は同族所有、後者は同族経営と言葉を使い分けるが、実のところ線引きは意外と難しい。
「一定」以上や「経営への関与」をどの程度とするかは国や地域、研究者などによるだけでなく、そもそも企業により異なる。研究対象としては非常に面白いが、とりあえず脇に置く。ここでは両者を一括してファミリー・ビジネスあるいは同族企業として話をすすめてみよう(税法上の「同族会社」より広く解釈する)。
最初の問いに戻るが、「ファミリー・ビジネスと聞いて、何を思い浮かべるか」、実はこのあたりは学生と社会人、同じ社会人でも若手、中堅、ヴェテランでは異なるであろう。
例えば、夫婦で営業している街角の○○ショップや、△△商店などを思い浮かべる方が多いかもしれない。もっともな話である。実際、街中で目にするレストランや各種店舗にはファミリー・ビジネスが多い。
しかし、例えば日本では上場企業の恐らくは半分以上、国内の会社数の9割以上が同族経営、つまりファミリー・ビジネスと聞けば印象が変わるはずだ。実は、日本の企業としてはファミリー・ビジネスが主流だと理解することが出来る。
世界で見るとどうか。このコラムでも紹介したことがある米国Fortune誌のGlobal 500を見ると、ここ20年ばかりはWalmartが連続して1位である。2024年1月末時点までの1年間の収益は6,481億ドル(1ドル=150円で97兆円)であり、日本ではよく知られているAmazonの5,140億ドル(同77兆円)をも大きく上回る。
このWalmartは世界最大規模のスーパーマーケットだが、実はWaltonファミリーが大株主のファミリー・ビジネスである。スイスのある大学の資料によると、WaltonファミリーはWalmartの5割弱の株式を保有しているようだ。創業家一族は筆頭株主としての地位を占めているが、社長は創業家のメンバーではない。
現在の社長兼CEOのダグ・マクミロンは高校時代にWalmartの配送センターでアルバイトをし、大学を卒業後Walmartの研修生としてキャリアを開始、トップにまで上り詰めている。彼の人生そのものが現代のアメリカン・ドリームでもある。
その他、海外の有名どころでは投資家として有名なバフェットのバークシャー・ハサウェイ、穀物メジャーのカーギル、コンピュータのデル、高級化粧品のLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)、スニーカーのナイキ、これらは皆、ファミリー・ビジネスと考えることができる。ただ、規模がとてつもなく大きいだけだ。
日本でよく知られた企業としてはトヨタ、ファーストリテイリング、パナソニック、イオンなどの公開企業だけでなく、出光興産、サントリー、竹中工務店などの非公開企業がある。ドラッグストア・チェーンのサンドラッグなども同様である。いずれも最初は創業者がファミリー・ビジネスとして開始し、今でも創業者・家との「一定」の関与があると考えれば、日本のファミリー・ビジネスも奥が深くなかなかのものである。
少し調べるとわかるが、世界の名だたる企業の中でファミリー・ビジネスはかなりのウエイトを占めている。ただ、視点が「公開」「非公開」あるいは「大企業」「中小企業」など別の枠組みで見ることが多いため、ファミリー・ビジネスの印象が異なるのであろう。ゴールデン・ウイークは国内外の良く知られた企業の大株主について、少しじっくりと調べると面白いかもしれない。ネットで探ればそれが手元で簡単に可能な時代である。
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長い時間の流れで見た場合、創業家やオーナーが経営にどう関わるか、同じファミリー・ビジネスの視点から、農家が生き残るためのヒントが見つかるかもしれません。
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